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肌が変われば、心まで変わる——海外で出会った「拭き取り習慣」から生まれたMiR

株式会社MiRは、代表・熊谷真理氏が「拭き取り」という一つの習慣を通じて、自身の肌と心に変化を感じた経験から立ち上げたスキンケアブランドだ。

海外生活で肌荒れと自己肯定感の低下に苦しんだ日々。そこから抜け出すきっかけとなったのが、ヨーロッパで日常的に取り入れられている「拭き取り」というスキンケア習慣だった。その原体験をもとに、2年半の開発期間を経て自社製品へと結晶させた。

本記事では、金融・化粧品業界を経て渡米・渡独し、さまざまな角度から美容を学び、ブランドを立ち上げた熊谷氏の歩みと、MiRが目指すこれからを追う。

目次

海外生活で見つけた、たった一つの習慣

熊谷氏がスキンケアの世界に本気で向き合うようになったのは、夫の海外赴任に伴う長い海外生活がきっかけだった。2016年から2024年まで、アメリカとドイツで暮らした約8年半である。

アメリカ滞在中、熊谷氏はインスタグラマーとして10万人規模のアカウントを育てた。しかし、その華やかな発信の裏側で、本人は激しい肌荒れに悩み、自己肯定感を大きく下げていたという。

「メンタルとしては本当にどん底だった」

当時を、そう振り返る。

転機はドイツへ移ってから訪れた。ヨーロッパで広く取り入れられている、ミセラーウォーターという拭き取りタイプの洗顔に出会い、毎日のケアとして続けていく中で、肌状態が少しずつ整い、自分の肌に自信を持てるようになっていった。

「肌が変わると、本当に心が変わって、外に出て行こうという気持ちになった」

この実感こそが、後のブランドの原点になる。

金融、化粧品、そして海外での学び

熊谷氏のキャリアは多彩だ。

新卒で入った金融業界では営業として働き、与えられた目標に対して「どうすれば達成できるか」を考え、試行錯誤を重ねる習慣が身についた。負けず嫌いな性格も相まって、目標を達成するまで簡単には諦めない。その姿勢は、現在のブランド経営にもつながっている。その後、化粧品会社の宣伝部へ転職し、広告タイアップや新しい販路の開拓に携わる。

出産直後に夫の海外赴任が決まり、渡米。アメリカでは美容ライターやメイクレッスンなどの活動を続けながら、エステティシャン、カラー、メイクアップ、栄養学といった分野で複数の資格・修了証を取得した。

「見た目のところだけքではなく、インナーケアまで深く学びたかった」

続くドイツ・ミュンヘンでは、学んだ知識を実践へと移した。各種団体で美容講師を務め、日本人会で記事を執筆し、現地サロンではエステティシャンとしても活動した。

アメリカで「学び」、ドイツで「形にする」。

そうして積み上げてきた経験と知識が、帰国後の起業へとまっすぐにつながっていった。

発信の軸を変えて掴んだ、本当のファン

インスタグラムでの発信も、熊谷氏の歩みを象徴している。

かつてはメイクや美容の知識をわかりやすく届ける発信を続け、多くのフォロワーを獲得した。その経験や、当時から応援してくれているフォロワーとのつながりは、今も熊谷氏にとって大切な財産になっている。

ドイツ移住を機に、ヨーロッパ在住の日本人に向けた新しいアカウントを立ち上げた。そこでは美容情報に加えて、自身の考えや日々の出来事、製品づくりへの思いなど、よりパーソナルな部分も伝えるようになった。すると、フォロワーとの距離がさらに近くなり、一人ひとりとの深いつながりを感じるようになったという。

「本を出しても、製品を出しても、皆さんが応援してくださって、実際に手に取ってくださる」

これまで積み重ねてきた発信と、そこから生まれた人とのつながり。そのすべてが、現在のMiRを支える大切な土台になっている。

拭き取りの摩擦感に配慮した、こだわりのテクスチャー

株式会社MiRが手がけるのは、拭き取りタイプのスキンケア製品だ。最初の商品「MiR アクアクレンジングセラム」の開発には、約2年半を費やした。

日本では拭き取り洗顔になじみが薄く、「コットンで拭くと摩擦が気になる」という印象を持つ人も少なくない。

そこで熊谷氏が特にこだわったのが、肌とコットンの間でクッションの役割を果たす、とろみのあるテクスチャーだった。

「拭き取りなのに摩擦感が気になりにくい」「化粧水や美容液を使った後のようにうるおいを感じる」

ユーザーからは、そんな声も届いている。

美容液成分94.8%を配合し、汚れを落としながら肌のうるおいを守ることにもこだわった。朝は洗顔として、夜はメイク落としや洗顔として使え、洗い流しも不要。忙しい毎日の中で、スキンケアにかける時間や工程を減らしながら、肌をいたわることを目指した製品だ。

見た目へのこだわりも徹底している。

「可愛くないと気分が上がらない」という声にも応え、毎日手に取るたびに気分が上がるような、上質感のあるパッケージを目指した。理想のものを求め、半年以上かけてボトルを探したという。

肌への使い心地だけでなく、手に取った瞬間の気持ちまで含めてスキンケアを考える。その姿勢が、細部にまで表れている。

B2Cから広がる販路、そして海外へ

販売はAmazonでのB2Cから始まった。

その後、楽天市場へ出店し、さらにエステサロンや温浴施設、サウナ、ジム、ギフトショップなど、B2Bでの取り扱いも広がり始めている。

マレーシア・シンガポール・ベトナムに販路を持つ企業とのつながりも生まれ、アジアを中心とした海外展開への一歩も踏み出した。

営業は熊谷氏自身が足を運ぶことが多いが、これまで美容の仕事を通じて築いてきた関係から紹介を受けることも少なくない。数年来の付き合いのある企業からの声掛けをきっかけに、2026年8月には札幌三越でブランド初となる百貨店POPUPも実現した。

立ち上げ間もないブランドにとって簡単ではない販路への挑戦を、人との縁が支えている。

一方で、課題も明確だ。

「MiR アクアクレンジングセラム」は、メイク落とし・洗顔・ブースター(導入)とマルチに使えるがゆえに、どの価値を最も強く伝えるべきかという難しさがある。

当初はクレンジングとしての用途を中心に打ち出していたが、メイクの濃さなどによって使用感の評価が分かれることもあった。そこで「忙しい朝に、拭き取るだけで洗顔が完了する」という朝洗顔の訴求を強めると、商品の特徴がより伝わりやすくなり、レビューにも変化が表れたという。

商品そのものを作って終わりではない。

誰の、どんな場面で役に立てるのか。顧客の声を聞きながら、ブランドとしての答えを探し続けている。

応援される会社であり続けるために

代表就任後の苦労を尋ねると、熊谷氏はWebまわりやECの運用を挙げた。

Amazonや楽天の運用、広告の打ち方、自社ECの立ち上げ——。いずれも未経験からのスタートで、苦手意識と向き合う日々が続く。

いずれは、こうした領域や事務を任せられる仲間を迎えたいとも考えている。ただし、条件は一つ。

「ブランドを本当に愛してくれること」

これから強化していきたいのは、一つひとつの実績の積み上げだ。

B2Bで成功事例を重ね、継続的に商品を扱ってもらえる取引先を増やしていく。

また、拭き取るだけでケアが完結する手軽さは、日常のスキンケアだけにとどまらない。入院中など水を使った洗顔が難しい場面や災害時の備え、さらにサウナ・温浴施設、スポーツジム、ヨガなど、さまざまなシーンとの相性にも可能性を見ている。

そして、3〜5年後の目標として熊谷氏が掲げるのが、アメリカ・ヨーロッパへの進出だ。

自身が長く暮らし、美容を学び、そしてブランドの原点となる「拭き取り」の文化に出会った海外へ、自分が作った製品を届ける。

それは熊谷氏にとって「いつか必ず叶えたい夢」だという。

商品数や売上の成長はもちろん大切だ。しかし、それ以上に守り続けたいものがある。

それは、応援してくれる人がいる環境と、お客様との近い距離だ。

「これから先も、『こう改良してほしい』というお客様の声を直接聞けるような窓口を持ち続けたい」。一人ひとりの声を聞き、それを次の製品やブランドづくりに反映していく。

肌が変わることで、気持ちが変わる。気持ちが変わることで、その人の毎日が少し前向きになる。

自身が海外生活の中で体験したその変化を、今度はMiRを通して誰かに届けていく。

熊谷氏の視線は、すでにその先を見据えている。

会社概要

  • 会社名:株式会社MiR
  • 代表者:熊谷真理
  • 事業内容:スキンケア製品の企画・開発・販売
  • 創業:2025年1月
株式会社MiR 代表 熊谷真理

編集後記

海外での肌荒れと自己肯定感の低下という「どん底」から、一つの習慣をきっかけに前を向いた——その原体験を、飾らずまっすぐに製品へ落とし込んでいることが、熊谷氏の強さだと感じた。数の大きさよりも関係の深さを選び、応援してくれる人との距離を何より大切にする姿勢は、ものが溢れる時代のブランドのあり方として示唆に富む。一人の会社が、多くの人の支えで前へ進んでいく。そして、かつて自身を救った美容の力を、今度は製品を通じて誰かに届けようとしている。その温度が伝わる取材だった。

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