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痛みの向こうにある「治す」を、街の施術へ——医療機器に向き合い続ける長谷川純子の挑戦

歯科医院の片隅で始めた顎関節の治療が、いつしか「ここなら何とかなるかもしれない」と人が集まる場所になった。株式会社hodegeo代表・長谷川純子が営むのは、医療機器を使った施術の店だ。本気で辛い人が、藁にもすがる思いで訪れる。痛みを伴う施術なのに、口コミ評価は4.97。なぜ人は、痛いはずの場所にリピートするのか。創業の原点から、機械の自社開発、そして「セラピストの未来」へと広がる構想までを聞いた。

目次

歯科医院の片隅から始まった「治す」店

長谷川は生まれも育ちも東京。創業の原点は、歯科医院の中にあった。

もともと顎関節の治療を、ある医療機器を使って行っていた。「痛みは取れるんですけど、いまいち気持ちがよくなくて」。理由を探るうちに、顎に不調を抱える人は決まって首や肩がひどく凝っていることに気づく。使っていた機械は医療器具で、頭痛や肩こりにも効く。そこで顎だけでなく肩にも施術を加えてみたところ、効果が「飛躍的に長持ちする」ようになった。

自身も偏頭痛持ちで、頭を触ると痛みがすっと抜ける感覚を知っていた。希望する人には頭も施術するようになる。ところが歯科のユニットは平らに倒れない。うつ伏せもできず、足元には機械があって動けない。「これだけみんなが喜ぶなら、店にしようか」。それが始まりだった。

2012年、原宿に店を構える。個人事業として数年営んだのち、2018年に法人化した。サービスの核は今も当時と変わらない。変わったのは、基礎化粧品、ボディ用とヘッド用のジェル、そして施術に使う機械までを、すべて自社オリジナルで作るようになったことだ。

痛いのに、口コミはほぼ「5」だけ

訪れるのは「本気でつらい」人が多い。痛くて眠れない人、頭痛、小顔にしたい人、リフトアップ、痩身、そして薄毛——悩みの幅は広い。「私はもう治療だと思ってやっているので。お客様というより、患者様のような気持ち」と長谷川は言う。医療行為とは言えないため「治す」とは謳えないが、姿勢はそこにある。

店のブランド名「ヘイレン」は、ドイツ語で「治す・癒す」を意味する語に由来する。「エステだけど治す、という意味で付けました」。

強みは何か。長谷川は何度も似た機器を探したという。「色々調べると、似たようなものはあるんです。でも触り方が全く違う。触れているだけのところと、うちは違う。同じことをやっているところは、多分ない」。体に触れるプローブの部分もオリジナルだ。

施術には痛みが伴う。「悪いところは激痛です」。それでも続けるうちに痛みは引いていく。初回で抜ける人もいる。痛みに耐えた先の効果が、人を惹きつける。ホットペッパーの口コミは4.97、177件。「ほとんど5しか入っていない」。激痛なのに、この評価。長谷川自身が一番、施術の手応えを感じている。「やっていて本当に楽しい。喜んでもらえるので」。

セラピストが、結婚や出産で「ゼロ」に戻る業界へ

経営の苦労を聞くと、答えは即座だった。「ずっとスタッフ問題です」。大型店ではない。社員2名にパート1名という体制では、一人抜けるだけで負荷が大きい。集客には困ってこなかった——ホットペッパー掲載と、5年ほど前に表参道へ移って始めたYouTubeの美容系コラボ程度。SNSもほとんどやっていない。それでも、人の問題だけは別だった。

かつては仕事を手放せなかった。「自分がやった方が早い。でも、それだと育たない」。最近になって、ようやく「ちゃんと任せよう」と思えるようになったと振り返る。

その先で長谷川が見据えるのは、業界そのものの構造的な問題だ。セラピストやエステティシャンは資格が要らない分、若くして働き始め、何年もキャリアを積む。ところが結婚や出産で一度辞めざるを得なくなる。「子どもが生まれて『四時までしか働けません』となると、店側としては雇いにくい。混むのは夕方以降だし、急な休みのたびに予約客全員に電話して断ることになる」。

予約制ではない別の店に移れても、給料は一からやり直し。看護師のように資格でつぶしが効く職種とは違う。「同じような仕事をしてきたのに、キャリアがゼロになる。なんか、夢がないよなって」。きれい事では成り立たない現実を認めながら、長谷川はこの問題を解きたいと考えている。

1.8キロの機械が、働き方を変える

解決の鍵を、長谷川は「客単価」と「機械」に見出した。

雰囲気や内装で単価を上げる道もある。だがそれは金がかかる。「それよりも技術を上げて、本当の意味で客単価を上げたい。そうすれば、夕方までしか働けない人がいてくれてもいい、となる」。

機械の自社開発には、もう一つ切実な理由があった。医療機器は法改正が激しく、これまで使えたものが突然販売できなくなる。長年コラボしてきたメーカーは、すでに長谷川たちが使える形の機械を作っていない。「このままだと、うちの店からも機械がなくなってしまう。だったら作るしかない」。作るなら、他社にも使ってもらえる。そう考え、機械の販売事業に踏み出した。

開発した機械は1.8キロと軽い。「他社で一番軽くて5キロ、重いものだと55キロ」。軽量化で出張施術が可能になり、常連客の自宅へ持ち運べるようになった。直接予約のやり取りができるため、子育て中のパートスタッフでも「子どもの都合でキャンセルする場合があります」と最初に伝えて働ける。店舗での「てんやわんや」が消える。外出が難しい高齢者やパニック・外出困難の客にも届く。

機械の普及は、業界全体の離職防止にもつながると長谷川は見る。「腰や手が痛くて辞める人がいっぱいいる。それも防げる」。本当に効果のある機械が広がれば、効果のないサービスにお金を払い続ける後ろめたさからも、施術者は解放される。

三年後、五年後——「頭打ち」のない会社へ

中長期の展望を尋ねると、長谷川はエステ以外の事業の拡大を挙げた。機械の外販、自身が持つ特許構造のピアスホルダーの販売、そしてフランチャイズだ。

その根底にあるのも、やはり働き手への眼差しだった。「社員はセラピストでもある。一日八時間で施術できる人数は決まっている。だから給料には絶対に頭打ちがある」。実働だけに頼らず、機械販売やフランチャイズといった仕組みで会社を大きくし、その天井を取り払いたい。

フランチャイズは現在1店舗のみ。「テスト的なので、どうやっていくか試行錯誤中」だという。機械と「やり方」をセットで全国に広げる構想だ。

長谷川は最後に、自身の意識の変化も口にした。「私が『これでいいや』と思うと、社員の給料がそこで決まってしまう。だから、そう思われない方がいいんだなって」。

求職者へのメッセージは明快だ。「施術して誰かを楽にしてあげたい、それが好きだという人に来てほしい。資格が要らない分、誰でもできる。だからこそ、楽しいと思える人がいい」。加えて、SNSの発信に強い人を求めている。

機械の導入を検討する法人へは、こう呼びかける。「美容院でも整体でも鍼灸でも使える。どの会社も効果を謳うけれど、本当に効くかどうか、ぜひ体験して確かめてほしい。導入できれば、離職率は確実に下げられると思っています」。

会社概要

  • 会社名:株式会社hodegeo
  • 代表者:長谷川純子
  • 事業内容:医療機器を用いたフェイシャル・ボディ施術(顎関節・肩こり・頭痛・小顔・リフトアップ・薄毛・痩身等)、オリジナル基礎化粧品・ジェル・施術機器の開発および販売、フランチャイズ展開
  • 創業:2012年 原宿に店舗開業/2018年 法人化
  • 所在地:東京・表参道
  • 販売実績・評価:ホットペッパー口コミ評価 4.97/177件

編集後記

取材を通して印象に残ったのは、長谷川の言葉が常に「目の前の患者」と「働く仲間」に向いていたことだ。痛みを伴う施術を「楽しい」と言い切る手応えと、結婚や出産でキャリアを失うセラピストへの憤りが、同じ熱量で語られる。機械の自社開発という事業判断さえ、その延長線上にあった。会社を大きくすることが、そのまま誰かを楽にし、誰かの天井を外すことになる——その両立を本気で信じている人の話だった。

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