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「就活の教科書」で、迷える就活生の立ち戻れる場所をつくる──株式会社Synergy Career・岡本恵典の挑戦

就活生向けウェブメディア「就活の教科書」を運営する株式会社Synergy Career。代表の岡本恵典氏は、化学の研究室から新卒でITベンチャー、そしてフリーランスを経て、自身の就活での苦い原体験をきっかけにこの事業へ辿り着いた。情報があふれる時代に「みんなが立ち戻れるサイト」を目指し、大学生とともに8年間メディアを育ててきた同社の歩みと、AIを軸にした今後の展望を聞いた。

目次

化学の研究室から、就活生を支えるメディアへ

岡本氏のキャリアは、意外にも就活や人材とは遠いところから始まっている。和歌山県出身、大阪府立大学の理系に進み、大学院では化学・薬学系の研究に打ち込んだ。スポイトを手に合成実験を重ねる日々だったという。

新卒で選んだのは、社員100人弱のITベンチャー企業。だが在籍は1年で、早くにフリーランスとして独立する。そこからいくつもの事業に挑戦するなかで、最も大きく育てたのがウェブメディアだった。SEOを軸にしたメディア運営を主軸に、集客代行や広告業を手がけていく。

「もともとはマーケティングの会社でした。それが今は、マーケティングでもあるし人材事業の会社にもなった、という感じですね」。この二つの顔が重なるところに、同社の現在地がある。

「何のゲームだったのか分からず終わった」──原体験が生んだメディア

2018年、岡本氏は就活ジャンルのウェブメディア「就活の教科書」を立ち上げる。その原点にあったのは、自身が就活で味わった強い違和感だった。

「一生懸命やったんですけど、終わった後も何のゲームだったのかよく分からずに終わってしまって。自己分析ってどうするべきだったのか、企業選びはどうすべきだったのか、企業は僕たちをどう見て評価していたのか。結構、謎のまま終わっちゃったんですよね」

人生を左右する重要な場を、雰囲気のままやり過ごしていいのか。その課題感が出発点になった。自己分析の目的ややり方、就活の全体像や意味をメディアにまとめれば、就活生は意味を理解したうえで自信を持って動ける。結果として自分に合う会社が見つかり、納得感を持って働き始められるはずだ──そんな思いがジャンル選びを後押しした。

戦略的な計算もあった。もともと得意とするSEOやウェブメディアのスキルが活きること。就活を経験した大学生をインターンとして集めれば、記事を書くライターも確保できること。そして当時、この領域に本気で力を入れる競合がまだ多くなかったこと。理念と強み、そして事業としての勝ち筋が一本に重なっていた。

立ち上げ当初は、やはり苦労もあった。「作ったばかりでアクセスも出ないですし、参加してくれている大学生のインターン生も『これ本当に伸びるのかな』という状態で」。それでも過去に別のサイトを育てた経験から、岡本氏には「8割方いける」という肌感覚があった。「最後の2割は正直やってみないと分からない。だからこそ、みんなには自信を持って言い聞かせるようにしていました」。

大学生とともに歩んだ8年が、いちばんの強み

現在、メディアそのものでの収益化はほとんど行っていない。メディアで集客した就活生を、自社の人材紹介へとつなぐことで事業が成り立つ。「割合で言えば、メディア単体の収益はほぼゼロ。でも、集客から紹介まで含めて一つの事業なんです」。

同社の強みは、その集客の土台を大学生とともに8年間つくり続けてきたことにある。社内には常に大学生がいて、彼らがどんなことに悩み、困っているかを肌で感じている。だからサポートも、少し年上の兄や姉のような近い距離感で行える。「他社さんだと、30歳前後の方が昔の就活の考え方で教えてくれることもある。私たちは、より近い立場で話せるのが強みです」。

蓄積された情報量も大きな武器だ。これまでに書いた記事は2,000本を超える。とりわけ企業情報の調査には力を入れており、待遇のわりに難易度が低い隠れた優良企業や、B2B企業のように見落とされやすい優良企業まで、幅広く紹介できるという。

新卒紹介を中心に据えつつ、複数の他社エージェントとも提携しているのも特徴だ。「他社さんだと自社の求人しかないので、就活生のニーズを少し寄せなければいけない場面もある。私たちは寄せる必要がない、というのが強みだと思っています」。地方で就職したい学生や、条件が限られる学生でも、提携先の広さでニーズに応えられる。

「筋がいいか」で決める──ハックより基本を貫く

日々の判断で岡本氏が拠りどころにしているのは、「筋がいいかどうか」という感覚だ。

「流れとして自然というか、いろんなものと同じ方向を向いている施策は、いい施策だなと思うんです。逆に、大きな流れに逆行する施策はやらない」

例えば、検索エンジンの隙を突く“ハック”のような手法。一時的に成果が出ても、アルゴリズムの更新で淘汰されていく。「Googleが完全に逆行して潰しにかかっているような施策には、やっぱり乗らないですね」。理由は信念であると同時に、実利でもある。「結局、面倒くさくなることが多い。社員にもお客さんにも読者にも不和が起きて、その後ずっと言い訳し続けなきゃいけない。それが気持ち悪いし、積み上がらないんです」。

だからこそ、迷ったときは基本的な打ち手を選ぶ。一方で、まだ誰も気づいていない筋の良い一手には迷わず飛びつく。「それはハックではなくチャンスなので。大喜びで飛びつきますよ」。流れがスムーズで、周囲と噛み合っている──その「三方良し」の感覚が、意思決定の軸になっている。

属人性を解き、AIで次の事業へ

組織面での課題として岡本氏が挙げるのは「属人性」だ。特定の一人に売上や業務が集中している状態を、少しずつ整えていきたいという。

その手段として活用しているのがAIだ。社内ではClaude Codeを使い、ノウハウを一箇所にまとめ、データを全員が見渡せる状態に整えている。狙いは、単に「誰でもできる」ようにすることではない。「他人でもできる仕事はAI化・一般化して、その人にしかできない仕事をもっと大きくする。属人性を減らしながら、同時に高めていくイメージです」。

今後3〜5年の方針でも、AIは中心にある。メディア運営、LINE、社内の組織づくりまで、社員全員がClaude Codeを使いこなしながら業務を進めているという。「AIを使って求職者に役立つ情報を発信したり、集客したりする。それが次の大きな方針で、きっと新しい事業にもつながっていく」。売上も着実に伸ばしていく考えだ。

メディア運営でも、AIを使った改善を日々重ねている。「ただ情報をまとめるだけの昔ながらのメディアは、もう存在価値がない。検索すればAIが答えを出してくれますから。そこでは満足できない読者のニーズを、私たちが基礎からつくっていく」。

そんな同社が求めるのは、AIを積極的に活用したい仲間だ。「マーケティングやウェブ系、人材系の方はウェルカムです。ぜひ一緒に働きたいですね」。原体験から生まれた「就活の教科書」は、AIという新しい力を得て、次の章へと向かおうとしている。

会社概要

  • 会社名:株式会社Synergy Career
  • 代表者:岡本 恵典
  • 事業内容:就活生向けウェブメディア「就活の教科書」の運営、新卒を中心とした人材紹介事業
  • 従業員数:10名(業務委託含む)
株式会社Synergy Career 代表 岡本 恵典

編集後記

「何のゲームだったのか分からず終わった」という就活の原体験を、そのまま事業の芯に据えた岡本氏。派手なハックを退け、流れに逆らわない「筋の良さ」を貫く姿勢からは、地に足のついた誠実さがにじむ。情報過多の時代に「みんなが立ち戻れる場所」を掲げる同社の歩みは、就活生だけでなく、働くことに迷うすべての人にとって静かな道標になりうると感じた。

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