土地の仕入れから建物の企画・建築、賃貸管理までを一気通貫で手がける株式会社EMAコンサルティング。代表取締役の桒原英二氏は、不動産仲介の現場で数字を積み上げてきた実務家でありながら、経営の軸に据えるのは「倫理観」だと言い切る。中間マージンを省いた独自のビジネスモデルで富裕層の資産形成を支え、「100年続く会社」を見据える経営者の思考をたどる。
数字を積み上げてきた実務家の歩み
桒原氏の社会人としての出発点は、1999年に入社した大型機器の販売会社だった。その後、戸建て建売の会社を経て不動産業界へ足を踏み入れ、収益不動産の仲介で経験を重ねていく。渋谷で一棟収益専門の仲介会社の立ち上げにも携わり、その後は上場企業への在籍も経験した。
転機となったのは、現在のビジネスモデルの原型である「土地からの企画」を学んだ会社での日々だ。入社から半年で営業部長を任されるが、本人はその打診を二度断っていたという。
「私は他人と比べて仕事をしてきたわけじゃなくて、自分自身を見ながら、周りを見ずに仕事をしてきた。置かれた立場で全力でやる、というところしか意識してこなかったんです」
教えることは自分の時間を削り、ノウハウを差し出すことでもある——そう悩んだ末に役割を引き受けた。その積み重ねの先に、2019年、EMAコンサルティングの創業がある。
中間マージンを省く、独自のビジネスモデル
事業の核を、桒原氏はシンプルに語る。土地を仲介し、そこに自社で建物を建て、賃料計算をして収益の合う物件を顧客に紹介する。建築が完了するまで一年ほど旗振り役を担い、その後の賃貸管理までを引き受ける。
一般的なデベロッパーは、土地の仕入れと建築をワンセットで行い、広告費や人件費を含めた原価に大きな利益を乗せて販売する。だからこそ土地建物の価格は高くなり、利回りは低くなる。
「私どもは、その無駄な中間マージンを発生させない。結果として土地建物の価格は安く、逆に利回りは高く保有していただける。ここに非常に多くの引き合いをいただいています」
顧客の9割以上は融資を組んで購入する層であり、金融機関が融資できるかどうかが大きな要点になる。創業当時に比べて融資のハードルは年々上がっており、結果として顧客の属性も引き上がっている。桒原氏は現在、多くの富裕層を顧客として抱えている。
選ばれ続ける理由は「信用信頼」
創業当初は、同様の事業を手がける会社もあったという。だが今、その姿はあまり見かけないと桒原氏は言う。土地や建築基準法の知識、プランを組み立てる力、融資まわりの理解——これらを備えていなければトラブルが増え、続けることが難しいからだ。
同社の信頼を支えるのは、実績の一貫性である。施工店を厳しく見極めた上で進めるため、設定した賃料が当初から下振れしたことは一度もなく、むしろ上振れしている。工期の遅延も過去に一度、二か月程度あったのみだ。
「決めた収支計画、決めた期間で、しっかりと完成させる。そこを安心いただいて選んでいただいているのだと思います」
リピート率は高い水準にあるが、桒原氏はあえて新規顧客の開拓に軸足を移している。既存の信頼に安住せず、会社の発展のために間口を広げる——その判断もまた、実務家らしい冷静さの表れだ。
経営の軸は「倫理観」
代表になってから最も大変だったことを問われると、桒原氏は「極端な失敗はない」と答える。楽に仕事をしてきたことがなく、与えられた役目を全力でこなしてきたからだ。とはいえ、人を雇い、方向性を決め、決断を重ねる経営者の仕事は、部長職までとは質が異なる。
「経営者としてしなければいけない成長のポテンシャルみたいなところ。一生懸命頑張っているとしか言えないですね」
そんな桒原氏が経営で最も重視するのが「倫理観」だ。会社の倫理観、社会の倫理観がある一方で、その根には自分自身の道徳観があると語る。
「その道徳観から倫理観を、私は会社として作っていく。だから会社としては、倫理観が非常に重要だと思っています」
求める人材像も、この価値観と地続きだ。個性を生かせる会社でありたいと願いつつ、桒原氏が強いと考えるのは「人に流されず、自分自身で一歩一歩進んでいける人」。会社全体を見ながら、自らの足で歩める人材を求めている。
100年企業への設計図
桒原氏が社員に常々語るのは「100年後も残っている会社を作りたい」という言葉だ。7期目を迎えた今も、まだ土台や基礎を築いている段階だと捉えている。
「正直、経営をやって一番思うのは、三年後はなんとなく見えるけれど、五年後は見えない。このご時世の速さで言うと」
その上で描く三年後の構想は明確だ。企画コンサル、賃貸管理、仕入れといった各部門を、いずれかの部署から分社化させていく。そして十年後にはホールディングス体制へ——それぞれの事業を任せた社長を立て、自身は新たな事業に挑む。そんな未来を思い描いている。
読者や顧客へのメッセージとして、桒原氏は自社物件の購入を勧めることは一切ないと強調する。不動産投資・建築企画は「投資」という言葉を持ちながら、その本質は「事業」だからだ。
「経営者の目線でしっかり運営できる方と、一緒に進んでいきたい。不動産投資は一回で終わらず、二棟目、三棟目と続いていく。私自身、十五年以上お付き合いのあるお客様もいます。末永く付き合える関係を、営業のみんなにも築いてほしいんです」
会社概要
- 会社名:株式会社EMAコンサルティング
- 代表者:代表取締役 桒原英二
- 事業内容:土地の仲介・仕入れからの建築企画、収益不動産の提案、賃貸管理
- 創業:2019年
編集後記
「他人と比べず、自分自身を見て全力を尽くす」。桒原氏の言葉には、数字の世界を実力で渡ってきた人の静かな自負がにじむ。一方で経営の軸に据えるのは倫理観と道徳観だ。中間マージンを省く合理性と、顧客と十五年付き合う誠実さ。相反しそうな二つが一人の中で無理なく同居している。100年企業という遠い目標を、地に足のついた分社化の設計図として語れるところに、この経営者の芯の強さを感じた。
