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ITで「働く人の奴隷解放」を目指す——OBFall上遠野社長の挑戦

群馬県出身の上遠野氏は、大学で教育学を学んだ後にIT企業へ転身し、OBFall株式会社を創業した。「25日に給料をもらって27日にカードで全部飛んでしまう」というサラリーマン時代の経験が、社名の由来となった「奴隷解放宣言」という哲学に昇華した。受託開発とセキュリティ診断で中小企業を支えながら、全従業員の年収1,000万円超を掲げる上遠野社長の思想と事業戦略に迫る。


目次

教育者の卵がITへ——「奴隷みたいな働き方」が起業の原点

群馬県生まれの上遠野氏は、大学で教育学を学び小中高の教員免許を取得した。学校の先生を目指していたが、2020年卒業のタイミングで学校現場へのプログラミング教育必修化という転換点を迎え、方向を変えた。「プログラミングを学んでから、それを子どもたちに教えられるようなスキルを身につけてからの方が価値が高い」と判断し、新卒でIT企業に就職した。

ところが社会に出て気づいたのは、学校現場の課題よりも深い社会課題の存在だった。「25日に給料をもらって27日にカードで全部給料が飛んでしまう」という自身の経験と、通勤電車で見かける「顔があまり生き生きとしていないサラリーマン」の姿が重なった。「自分自身の人生を生きているというよりは、会社のために時間を使って、言葉を選ばずに言うと奴隷みたいな働き方をしているな」という問題意識が、起業への直接の動機となった。

社名「OBFall」の由来もこの原体験に根ざしている。「奴隷解放宣言に由来してる部分もある」と上遠野氏は語る。まずはITエンジニアが市場価値に見合った給料を受け取り「自分自身の人生が生きていける」ようにすることから始め、いずれは働く人すべてが豊かになれるITサービスを作るという構想を持って会社を立ち上げた。

セキュリティを武器に——「作るだけでなく守る」差別化戦略

現在の主力事業は、スマートフォンアプリ・Webシステム・ECサイトなどの受託開発だ。中小企業のスケールアップを支えるITシステムを幅広く手がけているが、他社との差別化点は「守る」という視点にある。

OBFallにはホワイトハッカーが在籍しており、自社で開発したシステムにはセキュリティ診断がオプションとして無料で付帯する。さらに、独自開発の既存システムやWebサービス・ECサイトに対しても「健康診断のように」セキュリティの脆弱性を診断するサービスを展開している。「他社にセキュリティ診断を頼むと2〜300万かかってしまうところを、うちがシステムを作ることでオプションとして無料でつけられる」という付加価値だ。

価格面の柔軟性も選ばれる理由の一つだ。開発費を「最悪0円でも受けますよ」という対応ができ、その分は月額保守費用のサブスクリプションとして回収するモデルを取っている。「最初にかかる数百万〜数千万の開発費をゼロにすることで、その分の資金を営業やマーケに投資してスタートダッシュや事業拡大に当ててほしい」という中小企業応援の姿勢が反映されている。さらに元エンジニアである上遠野氏自身が商談に立つことで、「その場で技術的な話ができ、作れるか作れないかの判断やある程度の予算感をその場でお出しできる」というスピーディーさも、信頼を得るポイントだ。

エンジニアから「営業人」へ——半年前の転換と一からの出発

起業後しばらくの間、上遠野氏は社内でエンジニアとして稼働しながら経営を担ってきた。「社内のエンジニアの生活を上げていきたいということが一番だったので、スケールさせるより社内が安定できる会社を目指していた」ため、営業活動にほとんど力を入れていなかったという。

転換点となったのはAIの普及だ。「AIも普及してきて今後が怪しい」という危機感から、自らエンジニアを離れて営業に転じる決断をした。これが取材時点から約半年前のことだ。それまでの仕事相手は「基本的にパソコン」であり、人との対話も営業スキルも人脈もゼロから構築しなければならなかった。「そこを一から作るというところはすごく苦労した」と率直に振り返る。

お金より「人」——不義理をしないという一本の軸

事業が成長した今も、上遠野氏の根幹にある考え方はシンプルだ。「結局はお金より人だと思っている。その人との繋がり、不義理をしないということが一番大事にしていること」と語る。

この姿勢は顧客に向けるものに限らない。社内のメンバーや業務委託で関わる人々に対しても同様で、「お金より人」という価値観が組織全体のカルチャーを支えている。

「モテるエンジニア」を求む——採用とチームの次なる形

現在もエンジニアの採用は随時行っている。技術力はもちろんだが、採用の決め手として重視するのは「コミュニケーション能力」だ。「エンジニアは一般的にちょっと癖が強いというか、かわってる方が多い」とした上で、社内では「モテるエンジニア」という言葉を採用基準として使っているという。「そういった方とはすごくうちの色に合う」と上遠野氏は話す。

組織面では現在、「私対全員みたいな体制」が続いているといい、マネジメント層の育成と組織化が次のフェーズへの急務だと認識している。

全従業員年収1,000万円超へ——5期目から描く展望

中長期の目標として上遠野氏が掲げるのは、「全従業員が年収1,000万円を超える会社」だ。「奴隷解放宣言」を社名に込めた創業の志を、まず自社から体現しようとする姿勢が伝わる。

そのために受託開発で積み上げたキャッシュを元手に、自社サービスの展開を加速させる計画だ。サブスクリプション型の収益モデルでスケールを目指す。さらに6月から5期目を迎えた節目に始まった新たな取り組みが、「営業・マーケが非常に強い会社と、一つのサービスをレベニューシェアで展開していく」という協業モデルだ。「うちは裏方の立場で作り、それを営業・マーケの会社が売ってスケールする。そういった取り組みを今後も増やしていきたい」と上遠野氏は語る。

法人の経営者・担当者へは「AIが普及してシステムが手軽に作れる時代が来ても、セキュリティをAIに任せきりにすると責任の所在や思わぬ事故が起きかねない。攻めの投資とあわせて守りの投資もしてほしい」とメッセージを送る。求職者へは「働く人の奴隷解放宣言をテーマにしている会社なので、同業の中で一番になるように待遇を心がけている。退職金制度・社宅制度・給与水準も比較的高く設定している。楽しく自分の人生をより豊かにしたいという方に、すごくおすすめな企業になっている」と呼びかける。


会社概要

  • 会社名:OBFall株式会社
  • 代表者:上遠野博紀
  • 事業内容:受託システム開発(スマートフォンアプリ・Webシステム・ECサイト)、セキュリティ脆弱性診断

編集後記

教員を志した青年が、社会の理不尽を目の当たりにしてIT経営者へと転身した。上遠野氏の言葉には、経営者としての気負いより「人を大切にする」という素朴な軸が一貫していた。「奴隷解放宣言」という力強い言葉の裏に、働く人への真摯な眼差しを感じた取材だった。

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