排水管の高圧洗浄と水回りトラブルの緊急駆けつけを手がける株式会社Spotlightの代表・松本隼和氏。清掃業界で15年以上にわたり現場と管理の両面を経験したのち、2019年に同社を設立した。「業界への不信感を変えたい」という思いから、YouTubeをはじめとするSNSで作業の裏側や料金を透明に公開し続けてきた。コロナ禍の資金難と人材の苦労を乗り越えた創業者が語る、経営哲学と業界変革への展望。
清掃業界一筋のキャリアから、自らの会社へ
愛知県岡崎市出身の松本隼和氏は、社会に出て地元の清掃会社にアルバイトとして入社し、その後正社員となった。最初の5年間は現場作業に従事し、その後は営業と管理職を兼任しながら約10年以上を過ごした。会社からセミナーへの参加機会を得る中で、自分の将来を見つめ直すようになっていった。
「サラリーマンのままではなかなか自由にできない。30歳前後なら失敗してもやり直しが効く、一度挑戦しようと思いました」。そこで独立を決断し、名古屋の知人が経営する清掃会社に参画。水回り部門の立ち上げを任され、ゆくゆくは会社ごとの承継も視野に入れながら約2年間働いた。しかし方向性のずれを感じて退職し、2019年11月に株式会社Spotlightを設立した。
業界への不信感を変えたい——SNS発信という選択
Spotlightが担うのは、住宅設備や建物の排水管高圧洗浄・清掃と、水回りトラブルへの緊急対応だ。前職ではBtoB(企業間取引)が中心だったが、独立してBtoC(個人向け)の仕事を受けるようになって初めて、松本氏はある現実と向き合うことになった。水回り業界には「ぼったくられるのでは」という根強い不信感が広く存在していたのだ。
「業界のイメージがすごく悪い。詐欺に遭うんじゃないかという声がとても多くて、そこを変えたかった」。そこで松本氏はYouTube・TikTok・Instagramに現場の作業状況を投稿し、料金も明朗に公開することを始めた。消費者が安心して問い合わせられる環境をつくること——それが発信の根底にある思いだ。小規模な会社ながら、SNSを通じた認知と信頼の積み上げが同社の強みとなっている。
二つの苦境——資金難と人材の壁を乗り越えて
創業直後、新型コロナウイルスの感染拡大が直撃した。売上の見通しが立たない中での資金繰りは、「このままだとまずい」という切迫感を伴うものだった。数ヶ月先の売上が見えない状況が続き、精神的にも厳しい時期だったと振り返る。
もう一つの壁は人材だった。創業時は社員2名と共にスタートしたが、やがて2人とも退職。営業・請求管理・現場作業のすべてが松本氏一人に戻ってきた。「会社を潰そうかとまで考えました」。それでも踏みとどまれたのは、「自分一人の分だけなら何とかなる」という実感があったからだ。
この経験から得た教訓は、経営の軸になっている。「まず一人で基盤をつくる。拡大は、最悪その人がいなくなっても自分一人で回せる状態を作ってからでないといけない。地道にコツコツと積み上げていくことが大事だと改めて思いました」。早さより堅実さを選ぶ、松本氏の哲学の核がここにある。
女性スタッフ採用からFC展開へ——業界変革の次の一手
現在は体制の強化を進めながら、3年以内の目標として女性スタッフの採用を掲げる。「女性の一人暮らしのお客様のお宅に伺うことも多い。現場に女性スタッフがいるだけで、お客様の安心感は大きく変わってくる」。顧客視点での採用がサービス品質の向上につながると考えている。
その先に描くのはフランチャイズ(FC)による全国展開だ。一度は縮小したSNS発信を改めて活かしながら、同じ思いを持つ事業者と共に業界全体を変えていきたいという。「業界を良くしていきたいという考えに賛同してくれる人たちと一緒に、全国へ広げていきたい」。
一緒に働く仲間については、「仕事を通じてお客様によりよくなってもらいたい、業界を良くしていきたいという気持ちを持って、前向きに取り組める方と働きたい」と語る。共通の使命感を持つ人材との出会いを求めている。
会社概要
- 会社名:株式会社Spotlight
- 代表者:松本隼和
- 事業内容:排水管高圧洗浄・清掃、水回りトラブル緊急駆けつけサービス
- 創業:2019年11月
編集後記
水回りトラブル業者への不信感は、多くの消費者が一度は抱く問題だ。松本氏はその不信に正面から向き合い、作業の裏側を自ら発信することで地道に信頼を積み上げてきた。コロナ禍の苦難も人材の壁も、一つずつ乗り越えてきた言葉には誠実さが宿る。業界の「当たり前」を変えようとするその姿勢が、やがて全国へと広がっていく日を期待したい。
