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飲食を、胸を張れるビジネスに——「必ず売上は上げられる」と言い切る経営者が挑む、長く続く店づくり

「飲食店で働いている」と言うだけで、どこか下に見られる。株式会社エスマイル代表の宍戸慎一郎氏が、若い頃に感じ続けた悔しさだ。飲食を一つのビジネスとして確立し、働く人が胸を張れる産業に変えたい——その思いから、宍戸氏は実店舗の経営と飲食店専門のコンサルティングを両輪で手がけている。「必ず売上は上げられる」と言い切る自信の裏には、大手外食企業の現場で培った20年以上の積み重ねがある。落ち着いた語り口の奥にある、静かな野心を追った。

目次

大手外食企業の現場で芽生えた「大きな事業」への憧れ

宍戸氏のキャリアは、専門学校を卒業後、新卒2期生として大手外食企業に飛び込んだところから始まる。入社当時はまだ小さな会社で、そこから全国的な飲食チェーンへと成長していく過程を、現場で手伝った。巨大な飲食店を一つひとつ立ち上げていく——そのダイナミズムが、後の宍戸氏の原点になっている。

7〜8年ほど勤めた後に独立。飲食店専門の経営コンサルタントとして、以来20年ほどのキャリアを重ねてきた。

当時仕えた師匠から受けた影響は大きい。「いつかは大きな事業をやってみたい」という思いはずっと抱き続けていたという。しかしコンサルタントの仕事は、どこまでいっても自分一人で動く「ピンの仕事」。「どうしても限界があって、大きなことができないというジレンマがありました」と宍戸氏は振り返る。

実店舗とコンサルティング、両輪で挑む

そのジレンマへの答えが、実店舗を自ら持ちながらコンサルティングを行うという現在のスタイルだ。手がけるのは、ラー油を利かせた蕎麦を出すお店。20年前、都内のある名店で食べたこの一杯に衝撃を受け、「いつか自分でやりたい」と温め続けてきた構想を、ついに形にした。店舗は駒沢にあり、駒沢大学駅からすぐの立地だ。

コンサルティングの顧客は居酒屋業態が多い。焼肉店など、お酒を扱う商売が中心だ。集客は、宍戸氏自身が綴るブログ記事を通じた流入と、コンサル先からの紹介が柱になっている。

強みを尋ねると、言葉に迷いはない。「飲食のコンサルに入ると、実は何も手を打てていないお店が多いんです。だから私が携われば、売上は必ず上がる」。何かを変えれば数字は必ず動く、売上さえ上げられれば次の対策が打てる——その確信が、宍戸氏の仕事の土台にある。都内の飲食店が高い家賃と人件費に苦しみ、物価上昇に価格が追いつかない現実の中で、この「必ず数字を動かす」という姿勢は、経営者にとって心強い伴走者となっている。

飲食は「教育産業」——自分の分身を育てる難しさ

これまでの道のりについて、宍戸氏は「苦労と思ったことはあまりない」と穏やかに語る。それでも、初めて直面した難しさがあるという。それが「人を育てること」だ。

「飲食店は教育産業だと思っているんです」。経験者を採用して任せるという考え方もあるが、会社ごとに社風もやり方も違う以上、結局はゼロから、時にはマイナスから教えるしかない。そこを理解していれば会社は大きくしていける、というのが宍戸氏の信念だ。「そうしないと、経営者が経営しない経営体になってしまう。教育をちゃんとすることが一番大事なんです」。

地道に、ゼロから自分の「分身」をつくっていく。言いたくないことも言わなければならない。誰もサポートしてくれない環境で、実店舗を持ちながらそれをやり切る——「これは初めて経験する、すごく大変なことですね」と、宍戸氏は率直に明かす。

だからこそ、共に働く人に求めるのは実直さだ。「人の人生を抱えるような仕事ですから、口八丁手八丁の人ではない。真面目で勉強熱心な方がいい」。飲食は一見、勢いや相性でやる商売のように見られがちだが、宍戸氏の考えは正反対だ。「本当は、積み上げていく商売なんです」。

すべてはスピードから

経営判断の軸を一つ挙げるなら、と問うと、即座に「スピード」という答えが返ってきた。

「何事も、判断が早くないと意味がない。それが正しいか間違っているかは、正直分かりません。ただ、止まっている時間のほうがもったいないんです」。この価値観は、顧客と向き合うときにも一貫している。スピード感を持って動いてもらえれば結果は出る——だからこそ「止まっている間もお金はかかっているんですよ」と、宍戸氏は繰り返し伝える。

判断の速さと、行動の速さ。派手さはないが、この徹底が数字を動かす原動力になっている。

直営で広げ、5年で売上5億円へ

今後は、コンサルタントと店舗スタッフの双方を増やしていく構想だ。店舗は単なる収益源ではなく、「研修の場」「道場」として位置づけている。多店舗化のためには、言葉だけでは学べないマネジメントを実体験してもらう場が要る。まずは東京および関東近郊で店舗を広げていく考えだ。

展開はフランチャイズではなく、直営にこだわる。「うまくいったことをすぐフランチャイズにするのは、とても危険。ある程度のところまでは直営でやってもらいたい」。かつて在籍した大手外食企業も全店直営だった、という原体験がその判断を支えている。

数値目標は明確だ。宍戸氏はコンサルの現場で「5年で5億円規模を目指しましょう」と提唱している。ならば自社も、創業から5年で売上5億円を——いや、それ以上を達成しなければならない。「今はそこだけを目指してやっています」。新規事業には目を向けず、今の事業をしっかり根づかせることに集中する。

最後に、業界でどんな存在になりたいかを尋ねた。しばし考え、宍戸氏はこう答えた。「ちゃんと売上を上げられる人。それも、長く続けられる人になりたい」。飲食は設備投資産業で、一瞬では回収できない。瞬間的に売上を上げられる人は多いが、10年、20年と売り続けられることが本当の力だ。「それをやっていける、皆さんに教えられる中心人物になりたい。それが私の願いです」。

会社概要

  • 会社名:株式会社エスマイル
  • 代表者:宍戸慎一郎
  • 従業員:代表1名
  • 事業内容:飲食店(蕎麦店)の経営、飲食店専門の経営コンサルティング
株式会社エスマイル 代表 宍戸慎一郎

編集後記

「必ず売上は上げられる」と言い切る自信と、「教育産業だ」「積み上げる商売だ」と語る誠実さ。宍戸氏の言葉には、飲食業界を長く歩いてきた人だけが持つ、地に足のついた温度があった。飲食で働くことが胸を張れるものであってほしい——その思いは、給料も社会的地位も一般企業と肩を並べられる産業をつくる、という具体的な志につながっている。派手な演出とは無縁の、しかし芯の通った経営者である。スピードを信条に、直営で一歩ずつ「分身」を育てるその挑戦が、5年後にどんな景色を描くのか、静かに応援したくなった。

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