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正直であること、当たり前を当たり前に——三足のわらじで貫くものづくり

会社員として製造業の現場に立ちながら、自ら興した合同会社彼岸花を経営し、さらに個人事業も手がける。三つの立場を並行させる小山晃さんが大切にするのは、「良いことも良くないことも、包み隠さず伝える」という一点だ。設計エンジニアとしての技術と、独学で磨いたWebデザイン。二つの軸を持つ小山さんに、経営への向き合い方と、これからの展望を聞いた。

目次

工業高校から設計の道へ

兵庫県出身の小山さんのキャリアは、工業高校を卒業後、地元企業の設計・開発部門に身を置いたことから始まる。ここで設計に携わり、5年間を過ごした。その後、高砂の企業へ転職し、およそ6年。現在は製造業の企業に勤め、電車の部品など金属加工の領域で設計職に就いている。

「たまたま金属との距離が近かった」と振り返るように、金属加工はキャリアを通じて小山さんの軸となってきた。現場で培った設計の技術は、後に自ら立ち上げる事業の土台にもなっていく。

「やってみよう」から始まった会社経営

会社員を続けながら、小山さんは合同会社彼岸花を立ち上げた。取材時点で3年目を迎え、ちょうどこの月が決算にあたるという。

立ち上げの動機は、驚くほどシンプルだ。「経営をしたことがなかったので、してみよう、と。それだけです」。もともと強い野心があったわけではなく、「やったことのないことをやってみたい」という好奇心が、そのまま行動につながった。

初年度はデザインスクールに通う最中で、まだ基礎も固まっていなかったため、あえてデザインの仕事は取りに行かなかった。「基礎を身につけてから責任を持って受注したかった」という判断だ。卒業を待って2年目からデザイン案件に動き出し、初年度はこれまで築いた人脈を通じた依頼に応えていた。

製造とデザイン、二つの軸

彼岸花の事業は大きく二つ。一つは設計エンジニアとしての知見を活かし、製造できる協力先へ外注しながら「ものづくりをまるっと」引き受ける製造業。もう一つが、Webデザインだ。

顧客は特定の業界に偏らない。農業に携わる人、製造業の工場、医療系まで、「本当に多種多様」だという。信頼関係を軸に受注を広げており、交流会での出会いやリファラル(紹介)を通じて仕事が生まれる。ただし新規の割合が高く、初対面から始まる仕事も少なくない。

デザインでは「極力見やすく、シンプルに」を心がける。余白の使い方をさらに磨き、多くの人に受け入れられる表現を目指したいと語る。

「当たり前を当たり前に」——正直さという強み

他社と比べて選ばれる理由を尋ねると、小山さんは「当たり前を当たり前にすること」と答えた。良いことも良くないことも、納期の調整も、すべて正直に伝える。「包み隠さず言っているだけ」だが、それを誠実さと受け取ってもらえているのではないか、と自らの肌感覚を語る。

経営の苦労を問うても、その姿勢は一貫している。仕事が取れないと悩む経営者は多いが、小山さんは「取れる時は取れるし、決まる時はすぐ決まる。タイミングなんだ」と俯瞰して構える。決まらない時にどれだけ時間をかけても決まらない——だからこそ、動くところは動きながら、楽観的に待つ。困ったという感情がない、というのが正直な答えだという。

一人で、どこまで——課題とこれから

彼岸花は現在、小山さん一人で運営している。当面は増員の予定もなく、「一人でどこまでいけるか」を試す構えだ。

課題として挙げるのは、リピートの少なさ。「オール新規」に近い状態が続いており、継続的な取引を少しずつでも増やしていきたいという。一方で、エンジニア職の領域では複数の契約が継続しており、そこを着実に伸ばす手応えもある。Webとエンジニアリングのどちらもスケールさせたい、というのが率直な思いだ。

3〜5年後の目標は、まず「今の会社員としての年収を超えること」。ただし、事業が伸びても会社員を辞めて一本化する考えはないという。管理職として「自分がいなくても回る職場」を整えることで、管理業務を仕組み化し、勤務時間外に事業へ取り組める余力を確保している。「一本化する必要性がどこにあるか、という話です」と、その独自の時間術を明かす。

さらに小山さんは、材料にこだわらないものづくりを個人事業として別に展開している。サラリーマン、法人経営者、個人事業主——三つの立場を並行させる働き方だ。

読者へのメッセージとして、小山さんはこう語る。「形のないものを作り出してみたい、という方がいれば協力できる部分がある」。グッズのような新しいものづくりから、「古すぎてどこも作れない」部品の図面起こしまで。彼岸花に頼めることは幅広い。設計だけで終わらず、協力工場を使って製作までつなげられる。古い部品や図面のない現物から、再製作できる形に落とし込める。製造とWebデザインの両面から、商品化まで伴走できる。正直さという強みを軸に、ものづくりで困っている経営者の力になりたいと結んだ。

会社概要

  • 会社名:合同会社彼岸花
  • 代表者:小山晃(代表社員)
  • 事業内容:製造業(設計・金属加工を中心とした受託ものづくり)、Webデザイン

編集後記

「苦労はない」と言い切る小山さんの言葉には、強がりではない静かな自負がにじんでいた。仕事の巡り合わせをタイミングと捉えて構え、正直さを何より大切にする。三つの立場を軽やかに並走させるその姿は、これからの働き方の一つの形を示しているように感じられた。ものづくりの現場で培った誠実さが、業界を越えて人をつなげていくのだろう。

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