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出版不況の時代に「本の価値」を再定義する——ブックマーケティングで経営者の集客を変える、仲山洋平の挑戦

「本を出せば終わり」という業界慣習に違和感を抱き続けた編集者が、2020年に会社を立ち上げた。株式会社フォーウェイ代表・仲山洋平氏は、200冊超の企業出版を手がけた実績をもとに、出版を集客・マーケティング戦略の核に据える「ブックマーケティング」を展開する。なぜ出版不況と言われる今、本による集客が効くのか。事業の成り立ちと、信頼を核に据えた経営哲学を聞いた。

目次

ゼネコンから出版業界へ——「未経験でいい」という一文が転機に

仲山洋平氏は神奈川県横浜市の戸塚出身。大学卒業後、清水建設に事務系総合職として入社し、名古屋支社での現場事務や営業企画を経験した。3年目で転職を考え始めたとき、ある大手出版社グループの編集会社が「未経験者可」で編集者を募集しているのを目にした。

「編集者は基本的に経験者採用か、編集プロダクションから上がっていくもの。未経験でいいと言われることはまずない」。もともと出版への関心があった仲山氏は迷わず応募し、入社が決まった。

そこから7年間、企業出版の編集者として経営者・企業の事業目的のために作る本を200冊以上手がけた。途中で昇進し、東京の編集責任者に就いた。「その領域で言えば、当時おそらく日本で一番数をこなした人間になっていた」と、控えめに振り返る。

「答えを持ち歩きたい」——創業の原点と、共存共栄という軸

前職で仲山氏が感じていたのは、ある種のもどかしさだった。書籍制作を通じてクライアントの経営者と長期にわたって向き合うなか、「出版した本をもっと売上につなげたい」「動画も考えているが相談できるか」と、出版以外の相談が次々と寄せられた。しかし当時の会社の枠組みは「もう一冊出しましょう」というパッケージのみ。相談に応えられない状況が続いた。

「こんなに相談を受けているのに答えられないのはつまらない。クライアントのためになる引き出しを増やして、ソリューションを提供できる会社にしたかった」

2020年3月に個人事業として独立し、同年9月に株式会社フォーウェイを設立。取締役の江崎氏は前職の同僚で、創業当初から共に会社を動かしてきたパートナーだ。

会社として大切にしている考え方を問うと、仲山氏は「共存共栄」という言葉を挙げた。クライアントの発展を全力で支援するのは当然として、外注先やパートナーにも適正な報酬を払うことにこだわってきた。「まずい部分をどこかに押し付けて仕事を取りやすくする構造は作ろうと思えば作れる。でも関わる全員が損をしない形にするためには、自分たちのサービスの付加価値を上げ続けるしかない」。その信念が、サービスの質と人材の質を同時に高める好循環を生んでいる。

B2Bの発想で「穴のないサービス」を——選ばれる理由と顧客層

フォーウェイのサービスの核は「ブックマーケティング」だ。書籍を制作して出版社から世に出すだけでなく、書店への積極的な販売働きかけ、ウェブ広告との連動、PR、noteなどのコンテンツ拡散支援まで一気通貫で担う。

「既存の出版社は本業がB2Cなので、企業案件に向き合うサービス文化が基本的にない。比較検討されると、出版社名と実績の話で終わってしまう。一方でうちはゼロからB2Bのマインドで設計しているので、まともに提案してくれるのは御社だけとなる」

クライアント層は主に二つ。一つは投資用不動産に特化した不動産会社群だ。書店流通の本を著者として出すことで信頼性が高まり、成約した物件数件分でコストが回収できる収益構造が、この業界での出版マーケティングを有効にしている。もう一つは、相続コンサルティング、M&A仲介、専門コンサルティングなどの無形サービス業。専門ノウハウを言語化した本は「読んでこの人に頼みたい」という共感を生みやすく、高い成約単価と出版コストのバランスが取りやすいという。

「ポジショニングの旗印を先に立てたい経営者に響くサービスです」

迷走と再起——「ど真ん中は出版だ」という確信

創業から約3年は苦しい時代が続いた。当初は「コンテンツ全般に対応できます」というスタンスで動画制作やSNS運用など幅広く提案し、複数の営業社員を正社員で採用してテレアポ中心の新規開拓を試みた。しかし結果はついてこなかった。

「いろいろできますという会社がプッシュで飛び込んできても、何を頼む会社なのかが伝わらない。それは当然のことでした」

営業メンバーが一人また一人と去り、最終的に仲山氏と江崎氏の2名に戻ったタイミングで転換点が訪れた。2人でマーケティングを学び直し、改めて自分たちの強みを問い直した。「競合の大手と比べても普通に勝てているのは、やっぱり出版の文脈だ。ど真ん中は本だ、という結論になった」

自社の出版レーベル「パノラボ」が本格稼働し、クライアントの具体的な成功事例が生まれたことも追い風となった。「B2Bの商談では事例がすべて。実績が語れるようになって初めて、セールスが一気にやりやすくなった」。そこからブックマーケティング会社として一点集中でブランディングし直し、現在の形に至る。

やりきる力のある人と、出版の価値を再定義したい

現在のチームは仲山氏・江崎氏の正社員2名に業務委託やパートナーを合わせた体制で動く。制作のデリバリーは業務委託体制で柔軟にスケールさせながら、今後の採用強化はセールス職を中心に考えている。

採用にあたって仲山氏が最も重視するのが「グリッド」——やりきる力だという。「オーナー社長相手に一件一件提案していく営業は、そう簡単に決まらない。逃げない、めげない、諦めないで、何があってもどうにかする力が一番大事です」

前職で部下の担当案件を突然引き継ぎ、クライアントの信頼をゼロから回復していった経験が、その言葉の背景にある。「この人間は逃げないと伝わることが、信頼の出発点だった」と仲山氏は言う。業務委託メンバーに過大な負荷が集中しない体制を意識的に作っているとも語った。「自分がした苦労を若い人にさせる必要はない」。

今後のビジョンとして、仲山氏は「企業出版のリーディングカンパニーとして、出版を集客の選択肢として経営者が当たり前に選ぶ世界をつくりたい」と語る。本の権威性・信頼性という価値を、出版不況の時代に改めて再定義することに挑んでいる会社だ。

会社概要

  • 会社名:株式会社フォーウェイ
  • 代表者:仲山洋平
  • 事業内容:ブックマーケティング支援(書籍企画・制作・流通、書店営業支援、ウェブ広告・PR連動、コンテンツ拡散支援)
  • 創業:2020年9月

編集後記

仲山氏の話の随所に、「損をさせる人を作らない」という意志が滲んでいた。クライアント、外注先、パートナー、そして社員にとって、誰かが割を食う構造を作らないために、事業の設計段階から考え続けてきた人だ。「共存共栄」という言葉を使う経営者は多いが、それを仕組みとして実装している会社は少ない。ブックマーケティングという看板の裏に、誠実な商売人の哲学が宿っていた。

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