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経験を、若手へ手渡す——IBMとともに歩む、続くソフトウェア会社のかたち

キョーラクシステムクリエート株式会社は、1998年にキョーラクグループのシステム部門が分社独立して生まれた、業務システムの受託開発を手がけるソフトウェア企業である。日本IBMで25年間営業を務めた高瀬充博氏が代表を務める。稼働の平準化、クラウドやAIエージェントの活用、そして若手の育成——技術と人を次の世代へ着実に手渡していこうとする、その静かな経営哲学に迫った。

目次

IBMで培った25年、そしてグループの一員として

高瀬氏のキャリアは1986年、新卒で入社した日本IBMから始まる。以来25年間、一貫して営業畑を歩んだ。その後、現在のキョーラクシステムクリエートへ。「IBMなので、それだけに専念してきた」と、IT営業ひとすじの歩みを振り返る。

同社は独立系のベンチャーではない。もともとキョーラクグループのシステム部門が、1998年4月に分社独立して誕生した、グループの一員である。グループ外の企業へシステム開発を提供する外販事業は、IBMからの誘いによって始まったものだった。長くIBMの開発パートナーとして歩んできた背景が、今日の事業の骨格を形づくっている。

お客様の「待ったなし」に応える受託開発

同社の主力は、顧客の要望に合わせた業務システムの受託開発だ。「販売管理、生産管理、経理、給与と、全般にわたってお客様の要望に合わせて開発していく」。特定の業種に絞り込まず、幅広い業務領域に対応する。

一方で、対象としない領域もある。「官公庁や金融機関、それに土日営業をされる外食・小売は、どうしても外れてしまう」。中小のソフトウェア会社として、無理に手を広げないという線引きがある。ただしIBMからの要請があれば、大手保険会社のユーザー支援など、その限りではない案件も引き受けてきた。

「山谷」をならす——ストック型への転換

受託開発の宿命ともいえるのが、稼働率の「山谷」だ。高瀬氏はこれを最大の経営課題と位置づける。「世間では山が多ければいいと見られがちですが、そうではない。いかに山谷をなくして平準化するかが、我々の最大の課題です」。

山のピークで「待ってください」とは言えない。「お客様は待ったなし。ビジネスチャンスを逃すだけならまだしも、ユーザーそのものを失いかねない。そこが中小ソフトウェア会社の一番しんどいところです」。

この課題への答えとして進めているのが、フロー型からストック型へのビジネス転換だ。保守を中心としたストック型の売上は、まだ全体の4〜5割に届いていない。そこで、IBMが推奨するIBM i のクラウドサービスへ顧客を誘導し、安定した収益基盤を築こうとしている。取り組みは昨年頃から始まり、今期後半から来期にかけては、既存ユーザーの移行も見込む。「毎年、安定したビジネスを続けていけるように」。

AIエージェントとモダナイゼーションが拓く3〜5年

もう一つの柱が、AIエージェントの活用だ。IBM製品を主力に開発してきた同社は、IBMのAIエージェントを2026年9月から10月にかけて本格的に社内導入した。年内を習得期間とし、来年以降は一部の顧客とともに、実際の開発現場での検証を進める考えだ。

狙いは、開発の生産性と品質の向上にある。「レガシーな開発が中心のお客様を、いかに新しい技術を取り込んだモダナイゼーションへ導いていくか。ここ3年、5年の課題です」。IBM i のクラウド活用とAIエージェント。この二つで市場を維持し、広げていくことが、同社の中期ロードマップの軸となっている。

若手を育てる、珍しい会社であること

中小ソフトウェア会社の普遍的な課題を、高瀬氏はためらいなく挙げる。「採用です」。もっとも、「規模から考えれば、うちは採用できている方だと思う」とも言う。むしろ重視するのは、その先の育成だ。

「この世界は経験がものを言う。若手を増やしても、一朝一夕に経験を積めるわけではない」。同社が主力とする開発分野は、経験者の多くがすでに定年を迎え、フリーで活躍する世代が中心だという。「若手や20代の中途を採用して育てようとしている会社は、珍しい方だと思います」。ベテランが持つ知識やノウハウを、20〜30代へどう受け渡していくか。長期のビジョンは、この技術承継に重ねられている。ここでもAIエージェントは、生産性と品質を底上げする手段として期待される。ただし人員はビジネスとのバランスの上に成り立つ、と高瀬氏は冷静だ。

次の世代へ委ねる

将来の立ち位置を問うと、高瀬氏の答えは謙虚だった。「そこは次の世代が考えること。私たちが『こうせい、ああせい』という時代ではない」。自らの役割は、3〜5年の道筋——IBM i のクラウドとAIエージェントで市場を維持し広げること——をつけるところまで、と見定めている。

それでも、最後まで揺るがない一点がある。人の育成だ。「スキル的な面は私には言えない。でも、人物的にお客様に受け入れてもらえる人間を育てていくしかない。それは事実です」。技術も、人も、次の世代へ。その静かな覚悟が、言葉の端々ににじんでいた。

会社概要

  • 会社名:キョーラクシステムクリエート株式会社
  • 代表者:代表取締役 高瀬充博
  • 設立:1998年4月
  • 従業員数:約47名
  • 事業内容:業務システムの受託開発(販売管理・生産管理・経理・給与など全般)、IBM製品を軸としたシステム構築・クラウドサービスの提供
  • グループ:キョーラクグループ

編集後記

25年をIBMの営業として過ごし、グループ会社の代表へ。高瀬氏の語り口は終始おだやかで、自らの功を誇るところがない。「次の世代が考えること」と繰り返しながら、人を育てることだけは譲らない。派手な成長物語ではなく、山谷をならし、経験を若手へ手渡していく——その地道な営みにこそ、中小ソフトウェア会社が長く続く理由が宿っているのだと感じた。

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