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「関わる人に感謝と笑顔の輪を広げる」——社員ファーストで挑む、就労支援B型の経営

未経験から福祉事業の代表となり、開所直前の資金ショートを乗り越えて黒字化へ。株式会社リングスの橋本涼代表は、岡山県倉敷市で就労継続支援B型事業所を運営する。「社員ファースト」を掲げ、働く人とその家族の人生に投資する経営とはどんなものか。異業種連携で利用者の未来の選択肢を広げようとする、その歩みを聞いた。

目次

畳表の製造現場から、福祉事業の代表へ

橋本代表のキャリアは、決して一直線ではない。専門学校を卒業後、新卒で大手アパレルメーカーの販売員として4〜5年勤め、結婚を機に広告営業へ。その後、グループの畳表(たたみおもて)製造会社に入り、7〜8年にわたって製造現場を担ってきた。

転機は2年前に訪れる。畳の事業が厳しい時期を迎えるなか、グループの代表から「関連会社として福祉の会社を立ててほしい」と声がかかった。

「僕、福祉経験もなければ経営者としての経験もない。いきなり機械オペレーターから福祉会社の代表ですよ。『何の社長ですか』『B型』って言われて、B型って血液型以外に知らなかったくらいです」

そう笑う橋本代表だが、就任後は必死に知識を吸収してきた。

「B型」が持つ、もう一つの選択肢

就労継続支援には、雇用契約を結び最低賃金以上を保証するA型と、雇用契約を結ばずに事業所が定めた工賃で働くB型がある。B型は通所日数や年齢、利用年数の縛りが基本的になく、より柔軟に働ける仕組みだ。

リングスが力を入れるのが、この柔軟性を活かした二つの就労形態である。一つは事業所内で内職などを行う「施設内就労」。もう一つが、グループの畳表製造工場に出て、原料補充や在庫の運搬、検品といった実際の仕事に近い作業を担う「施設外就労」だ。

「施設外就労は賃金も2倍以上あります。将来は一般企業に就職したい、という目標がある方向けの訓練の場です。内職を1〜2年やっても、現場の空気感や体力はどうしても身につかない。だから選択肢を用意してあげたいんです」

現在、事業所には20名の利用者が登録し、週5日通う人もいれば、自分のペースで数日だけ通う人もいる。異業種との連携を増やすことで、利用者の将来の選択肢を必然的に広げられる——橋本代表はそう考えている。

開所2カ月前、法人残高4万6千円からの再起

「困ったことは、基本ずっと困っています」と橋本代表は振り返る。なかでも壮絶だったのが、創業初期の資金ショートだ。

経営の勉強をしないまま代表になり、資本金600万円でスタート。しかし内装費などにリスクを考えず投じた結果、開所2カ月前に資本金を使い果たし、確保していた事業所も失った。

「開所2カ月前に、法人残高が4万6千円ですよ。融資の目処も立っていないのに、もう人も雇っているし、利用者さんの募集も始めている。頭が真っ白になりました」

そこから初めての銀行融資に挑み、別の物件を見つけて最低限の内装で開所にこぎ着ける。だが倉敷は事業所が飽和状態で、当初は利用者も集まらない。融資の運転資金も尽き、一時は自身のお金を役員借入として会社に入れてしのいだ。

1期目は大きな赤字を計上したが、2期目には黒字へと転換。まもなく2期目の決算を迎える今、その数字は当初の想定を上回るまでになった。

お客様より、まず社員と家族を豊かに

リングスの経営理念は「関わる人に感謝と笑顔の輪を広げる」。橋本代表はこれを「社員ファースト」という言葉で言い換える。

「お客様が大事なのは当然。でも、そのお客様にサービスを提供する社員や、自分を支えてくれる家族という一番近い存在を、まず豊かにしないと。社員が経済的にも社会的にも時間的にも恵まれて心身ともに豊かになれば、僕が指示しなくても自然といいサービスになるんです」

だからこそ、還元は「して当たり前」だと言う。給与だけでなく、一人ひとりの生き方やあり方を大切にする。幹部社員の夢に耳を傾け、子育て中のパート従業員には落ち着いた後のキャリアアップを一緒に描く。

「その人の人生設計に、会社として投資できればなと。お金だけじゃなく、その人の夢もちゃんと形にして実現させてあげたいんです」

こうした理念に共感する人が自然と集まるのか、無料の求人媒体でも2週間で数十名の応募が集まることもあるという。

一拠点を深める、これからの3〜5年

中期の展望は明確だ。同じB型事業所を数多く増やすのではなく、まず一拠点を大きくし、抱えられる利用者の人数を増やす。そのうえで、住む場所を提供するグループホームなど関連事業へと広げていく構想を描く。

「遠くて自分で通えないという方に、同じ会社で住む場所を提供できれば、リングスのグループホームに住んで、同じリングスのB型に通うモデルもできる」

年明けには新たな管理者が加わる予定で、3期目からグループホームの運営を本格的に動かしていく考えだ。

一方で、橋本代表は自らの課題にも正直だ。

「一番の課題は、僕の経営能力です。福祉事業である限り、どうしても国の補助金に依存している。報酬改定や予算削減があっても社員の雇用と利用者さんの生活を守れるよう、複数の事業の軸を立てて経営基盤を整えないといけない」

そのうえで、こう言い切った。

「会社の器は僕で決まると思っています。社員はもう100点満点、言うことない。だから僕自身がやるしかない。歩みを止めるわけにはいかないんです」

編集後記

未経験からの船出、開所直前の資金ショート——語り口は軽やかでも、その内実は経営の厳しさそのものだった。それでも橋本代表の言葉に一貫していたのは、「社員ファースト」という揺るがぬ軸だ。働く人とその家族、そして利用者の人生にまで想いを馳せる姿勢は、福祉という営みの本質を静かに照らしている。会社の器は自分で決まる——その覚悟が、次の一歩を確かなものにしていくのだろう。

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