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「楽しい」「明るい」を選ぶ基準に――住宅の現場で培った目で、暮らしを彩る

株式会社dhdは、家具・雑貨・衣類をオンラインで届けるショップを運営している。代表の小野寺利津子氏は、20年以上を住宅・建築の現場で過ごしたのち起業。流行や売れ筋を追うのではなく、「自分が楽しいか」「着て明るくなれるか」を選定の軸に据える。本記事では、コロナ禍で芽生えた思い、個性を求める顧客への向き合い方、そして住宅の経験を還元する「くくりつけ家具」という次の一手まで、その歩みと展望を伺った。

目次

住宅・建築の現場で培った20年

小野寺氏のキャリアは、18歳で建築系の学校に進んだところから始まる。以来20年以上にわたり、住宅系の仕事に携わってきた。神奈川県横浜市の出身だ。

起業を決めた背景には、大きく三つの思いが重なっていたという。一つは、もともとインテリアが好きだったこと。就職の時点で、建築とインテリア、どちらの道に進むか迷った経験がずっと残っていた。二つ目は、区切りだ。「40年ほど働けると考えたとき、20年働いたらちょうど半分。やってみたいという気持ちがありました」。

そして三つ目、決定打となったのがコロナだった。住宅への要望が、この時期に大きく変わったのだと小野寺氏は振り返る。

「住宅って、それまでは仕事をして帰ってくる場所だったんです。でもコロナを機に、すごく“いる場所”に変わった。だったら、その場所をもっと面白く、いい場所に、楽しくしたい。そう思うきっかけになりました」

「楽しい」「明るい」を選ぶ基準に

現在は、家具・雑貨・衣類をオンライン中心に販売している。顧客の顔が直接見えるわけではないが、集まってくるのは「流行っているもの」より「個性的なもの」を求める人が多いと感じている。

商品を選ぶとき、小野寺氏が大切にしているのはただ一つ、自分自身の感覚だ。

「こっちの方が流行るな、今の傾向に合うな、というのは正直あまりこだわっていません。それより、自分が楽しいかどうか。洋服なら、着ていて明るくなれるかどうか。そっちを大事にしています」

数字や傾向ではなく、手に取った人の気持ちが少し軽くなること。その基準が、ショップ全体のやわらかな世界観を形づくっている。

すべてが新しい挑戦、そして空気感の合う人と

まったく異なる業種からの出発は、平坦ではなかった。周囲からは「なんで建築系じゃないの」と何度も問われたという。

「建築の人間が独立するなら、工務店を建ててみましょう、といった道が普通だと思われていた。それが“なんでシャツを売ってるの”と。だから僕にとっては本当に全部が新しいことで、正直、全部苦労しました。今も苦労の真っ最中です」

それでも、一から切り拓く手応えを楽しんでいる。もし今後一緒に働く人が増えるとしたら、経験や職種は問わないと小野寺氏は言い切る。重視するのは、ただ一点。

「うまく言えないんですけど、その人が漂わせている“空気感”がいい方。そういう人が一人いるだけで、僕のまわりの空気もよくなるんです。それは会社員のころから変わりません」

くくりつけ家具で、住宅の現場へ還る

今後3〜5年で伸ばしたいのは、家具だ。着手しやすいものから始めた現状から、より本格的に踏み込みたいという。狙うのは「くくりつけの家具」――住宅に据え付けられる造作家具である。

「住宅の打ち合わせをずっとしてきたので、“こういうものがあるといいのに”という思いがずっとありました。たとえば造作洗面。カウンター、金具、水栓、ボウルと、いろんなところから取り寄せて組み立てるんです。ボウルの排水の径に合わせてカウンターに穴を開けたり、細かい作業が多い。ああいうものを一式で販売できたら、より喜んでいただけるんじゃないかと」

長期的には、建て売り住宅を手がける会社との協業も視野に入れる。古くから付き合いのある会社もあり、「初めから作り付けの家具がある建て売り」という構想も温めている。

その足元では、20年以上の経験を現場でも生かしている。平日は東京で自社の仕事にあたり、土日は栃木県の工務店を訪ねて、コンサルティングに近い手伝いを続けているという。住宅系の会社を支える動きは、これからも広げていきたい考えだ。

最後に、この記事を読む経営者へのメッセージを尋ねると、小野寺氏はこう語った。

「今はいろんなことに柔軟に対応したいと思っていて、自分が考えていないことも可能性としてあるだろうなと。経営者としてはまだ新人なので、僕のやろうとしていることに興味を持って、“この方向で一緒にやってみないか”と言ってくださる方がいたら、とりあえず何でも挑戦したい。ぜひご連絡いただきたいです」

会社概要

  • 会社名:株式会社dhd
  • 代表者:小野寺利津子
  • 事業内容:家具・雑貨・衣類のオンライン販売

編集後記

「自分が楽しいか」を軸に据える潔さと、20年以上を過ごした住宅の現場への確かな眼差し。その二つが同居しているところに、小野寺氏の面白さがある。流行を追わず、暮らしのなかで人の気持ちを少し明るくするものを届けたい――その姿勢は、モノがあふれる時代にあってむしろ新鮮に映る。住宅の経験を還元する「くくりつけ家具」の構想が形になったとき、この会社はもう一段、独自の存在になるはずだ。

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