株式会社日本技研は、総合建設業のなかでも改修工事を専門とする建設会社だ。受注の約9割をスーパーゼネコンが占め、既存の建物を止めずに手を入れる高難度の工事を数多く手がけてきた。5代目としてこの会社を率いる大野将史氏に、現場で培ってきた信頼のかたち、時代に合わせた変化への向き合い方、そして人を軸にしたこれからの展望を聞いた。
改修工事という専門領域
日本技研が手がけるのは、新築ではなく既存の建物に手を入れる改修工事だ。受注のおよそ9割はスーパーゼネコンからで、残りは設備を担うサブコンからの依頼が占める。ゼネコンが建てた建物を丸ごとメンテナンスし、経年の工事や不具合が生じたときの対応まで請け負う。
「会社が長いので、それが実績になっている」と大野氏は語る。長く続けてきたこと自体が信頼となり、その信頼がまた次の仕事を呼ぶ。派手さはないが、積み重ねが積み重ねを生む構造こそが、同社の強さの源泉になっている。
止められない現場で、工夫を重ねる
改修工事の難しさは、建物が「使われている」ことにある。大野氏が印象深い仕事として挙げたのは、営業中の商業施設での工事だ。
「下は昼間お客さんが使う。その中で天井を更新しなければいけない」。足場を工夫し、夜間に作業を進め、昼間は一般の来店客が普段どおり使えるようにする。既存施設のエスカレーターを丸ごと撤去するような、通常ではあまり想像できない工事も手がけてきた。
大切にしているのは、最初から無理だと諦めないことだ。「これができるんじゃないか、ああやればできるんじゃないか、といろいろ検討しながらやる」。難しいと思われた工事をやり遂げ、客から「よくやってもらった」という言葉をもらう。担当者や下請けと打ち合わせを重ねるなかで、より良い案が次々と出てくる。その過程そのものが、会社と人の成長につながっているという。
アナログからの脱却という壁
5代目として20年以上会社を率いてきた大野氏が、代表就任後に最も苦労したのは、昔ながらのやり方を現代に合わせて変えていくことだった。アナログな仕組みをデジタルに置き換え、システムを更新する。移り変わりの速いこの業界では、避けて通れない作業だ。
難しさは技術そのものよりも、人にあった。「社員はみんな人なので、できる人・できない人、ついてこられる人・こられない人がいる」。年配の社員も少なくないなか、システムが変わることのメリットを一人ひとりに説明しながら、全員で足並みをそろえていく。少人数だからこそ、ここは根気のいるところだと大野氏は振り返る。
信頼と約束を、経営の土台に
大野氏が経営で一貫して大切にしているのは、信頼だ。そしてその信頼は、現場の細やかなコミュニケーションから生まれると考えている。
「現場は人と人とのつながり。コミュニケーションによって、進め方も工事のやりやすさも、お客さんの評価も全然違う」。細かいことでもすべて話しながら進める。その積み重ねが、現場の質を左右する。
そのうえで、絶対に守りたいこととして挙げたのが「約束」だ。「この業界は特に約束が重要。決まり事から成り立っているので、そこは必ず守る」。信頼を口先ではなく、約束の履行という行動で示し続けることが、同社の経営の背骨になっている。
人を育て、規模を倍に
いま同社が抱える最大の課題は、人だ。「工事の話はいっぱいあるのに、人がいなくて対応しきれていない」。だからこそ、採用とその先の教育に力を入れていきたいと語る。理想は即戦力だが、簡単には集まらない。若手や未経験者を受け入れて育てながら、派遣社員の力も借り、少しずつ体制を厚くしていく方針だ。
一緒に働く仲間には、推進力を持って自らプロジェクトを進められる人であってほしい。そして社員には、「真面目に実直に工事を終わらせ、経験を積んで、大きなプロジェクトも自分で進められるようになってほしい」と期待を寄せる。
展望は明確だ。現在10億円前後の年商を、「倍の20億円くらいできる会社の規模にしていきたい」。新しい事業に手を広げるのではなく、いまの領域を深めながら、人を育てて対応できる工事を増やしていく。地に足のついた成長を、大野氏は思い描いている。
最後に、経営者や求職者へのメッセージを尋ねると、大野氏はこう答えた。「うちは内装も外装も全部やっている。鍵1個の修理からやるので、建築の何でも屋さんだと思ってもらえるといい」。
会社概要
- 会社名:株式会社日本技研
- 代表者:大野将史
- 事業内容:総合建設業(改修工事を専門とする)
- 従業員数:19名
編集後記
派手な言葉で自社を飾ることはなく、大野氏は終始、現場と人の話に立ち返った。止められない建物のなかで知恵を絞り、約束を守り、信頼を積み上げる。その地道さこそが半世紀続く会社の芯なのだと、取材を通して感じた。人手不足という切実な課題を抱えながらも、育てて増やすという王道を選ぶ姿勢に、この会社の誠実さがにじんでいた。
