理論とスピリチュアリティを組み合わせ、一人ひとりに合わせたオーダーメイドのセッションを届けるAya Ghosh Transformation。代表のゴーシュ彩氏は、東大卒業後に国内外でキャリアを積み、現在はスイスを拠点にヨーロッパ・アメリカ・日本の経営者を支援している。競争の激しいコーチングの世界で、なぜ同氏は経営者たちから選ばれ続けるのか。その背景にある哲学と歩みを聞いた。
コロナ禍の孤独から始まったコーチングの道
ゴーシュ彩氏がコーチングの世界に入ったきっかけは、コロナ禍だった。外国人としてスイスで一人暮らしをしていた同氏は、隔離政策によって家族以外の誰にも会えない生活を強いられた。
「本当に誰も会う人がいない感じで、強制的に一人ぼっち生活を送ることになりました。仕事もそんなにうまくいっているわけではなかったので、いろんなものが順調でないなと気づくきっかけになったんです。」
何かをしなければ、現状は変わらない——そう考えた同氏は、趣味の旅行にも行けず浮いた費用を使って、かねてから良いと感じていたカリフォルニアのコーチング組織のオンライン講座を受講する。最初は「自分が変われればいい」という思いだった。ところが学んでみると面白く、気づけばそれが仕事になっていた。
複数の手法を組み合わせる、オーダーメイドのセッション
顧客には経営者が多く、その中にはコーチングやヒーリング、風水などの資格を自ら持つ人も少なくない。男女の比率はほぼ半々だ。プロの目を持つ顧客から選ばれる理由を、同氏はこう分析する。
「お客様自身もそういう資格を学ぶ過程でセッションを受けることが多いので、経験値が豊かな方に選ばれている。玄人の目から見て、何か上手いなと思ってもらえるところがあるんだと思います。」
強みは、コーチングだけでなく気功、瞑想、スピリチュアルヒーリングなど複数の引き出しを持ち、それらを組み合わせて用いる点にある。「一つの手法だけを使う方よりは、結果が出るのが早いと思います。」
手法は相手の人柄に合わせて変える。スピリチュアルな世界に抵抗がある人にはコーチングを前面に、逆に関心の高い人にはスピリチュアルな要素を存分に織り交ぜる。徹底したオーダーメイド型だからこそ、単価は高くても支持が集まっている。
副業から本業へ、握りしめすぎた手を緩める
事業の歩みは常に順風満帆ではなかった。副業として始めたコーチングが本業になったとき、思わぬ壁にぶつかった。
「心構えはあるつもりでしたが、実際は予想よりも事業を強く握りしめてしまって。テニスのラケットも、ずっと強く握るより柔らかく持っていざという時に力を入れたほうがうまく打てますよね。『やらなきゃ』と思いすぎてしまったんです。」
そのエネルギーは、かえって顧客を呼び込むことにはつながらない。人間関係の上に成り立つ仕事ゆえ、信頼を築くには時間もかかる。自信と力の抜き方——それが本業化の過程で得た学びだった。
「住まいと心」から広がる、新たな協業の可能性
販路は紹介と口コミが中心だ。人生相談にも近い信頼ベースの仕事だからこそ、身近な人からの推薦が最も仕事につながりやすい。一方で、口コミベースでは拡大のスピードに限界があることも同氏の課題意識だ。
そこで同氏が始めたのが「住まいと心のカウンセリング」という新サービスである。引越しやリフォーム、物件の売買といったタイミングで、場所を整えるだけでなく、家と自分との関係や、その家を基盤にどんな人生を歩みたいかを見つめ直す。
「新しい家に古いエネルギーを持ち込まないで、本当に新しい人生のスタートになったらいいよね、という考えです。」
これまでコーチングに関心のなかった層にも届くテーマであり、不動産関係の企業との協業を通じた拡大を構想している。
書籍、リトリート、スクールへ——理論派として業界の信頼を築く
今後3〜5年の展望として、同氏は書籍の出版と週末のリトリート開催を掲げる。さらに、個人セッションでは金額的に手が届かない層に向けて、スクールやオンラインサロンといった一対多の形も届けたいと語る。
他者の意思決定プロセスを支援する同氏に、自身の意思決定のルールを聞いてみると、やはり意思決定には明確な軸があるとのこと。重要な決断は必ず一晩寝てから、毎朝の瞑想を経て下す。判断基準は「自分にとっても相手にとっても、自由で自分らしくいられる方向かどうか」だ。
そして業界における自らの立ち位置について、同氏の像ははっきりしている。
「スピリチュアルやコーチングの業界は、いかがわしいと見られることもあります。でも私が人よりも強いのは、マクロの視点から見た理論的な枠組みを持ってやっていること。なんとなくやっているのではなく、いろいろ試した結果、これが一番効果が高いと確信したことをやっているんです。」
「この人はよく考えて体系立ててやっているよね」——そう思ってもらえる存在になること。それが、ガチの理論派を自認する同氏の目指す姿だ。
会社概要
- 会社名:Aya Ghosh Transformation
- 代表者:Aya Ghosh
- 事業内容:コーチング・ヒーリング等を組み合わせたオーダーメイド型セッション、「住まいと心のカウンセリング」
- 事業歴:6年(6期目)
- 拠点:スイス
- ホームページ:https://www.ayatransformation.com/
編集後記
スピリチュアルという言葉にまとわりつく曖昧さを、ゴーシュ彩氏は理論という背骨で貫いていた。コロナ禍の孤独を出発点に、東大やスイスでのキャリアで培った知性を融合させ、経営者たちの人生に伴走する。手法を相手に合わせて変えながらも、「自由で自分らしく」という軸だけは決して手放さない。その一貫した姿勢こそが、プロたちから選ばれ続ける理由なのだろう。
