株式会社Bagus代表・内田大介氏は、パチンコホール、そして飲食チェーンと、事業会社の現場で20年以上人事に携わってきた。人事部長として、経営企画室長として、社長の右腕として組織をつくり続けた経験を武器に、3年前に独立。いまは全国約20社の経営者に伴走する。組織を持たず、あえて一人で——その一貫した哲学の奥にある、経営者への向き合い方を聞いた。
事業会社で「手を動かしてきた」人事のキャリア
内田氏の原点は、2002年に新卒で入社したパチンコホール経営の会社にある。最初の4〜5年は営業現場で店長として店舗運営を担ったが、会社が成長フェーズに入り人事部を立ち上げる際に声がかかり、そこから人事のキャリアが始まった。
この会社には16年在籍し、そのうち12〜13年は人事マネージャーとして採用(新卒採用を含む)、教育研修、評価制度と、人事部門全般を統括した。30代半ばからヘッドハンティングの声がかかるようになり、同業の会社へ人事責任者として転じる。二代目オーナーの右腕として、人事総務部長兼経営企画室長を4年務めた。
「新社長の右腕としてずっと動けたので、経営の部分をかなり学べた4年間でした」
コロナ禍という難局も経験しながら組織づくりと評価制度整備を進め、社長を無事にその座へ担ぎ上げた。その節目で「やりきった」という手応えと、組織を変えていく成功体験が、独立への思いを強くしていった。
「もっといろんな会社を支援したい」——独立という選択
独立を決めた後、内田氏はもう一社を経験する。40店舗規模の飲食チェーンに人事総務部長としてジョインし、2年間従事。「だいぶ筋肉もついたな」という自信を得て、3年前に起業した。
現在は約20社と伴走支援を続ける。人事領域一筋20年以上のキャリアを土台に、人事評価制度の構築をメインに据えつつ、採用支援、さらにはその先の経営コンサルティングや顧問という形でクライアントに関わり続けるケースが多い。
「事業会社出身のコンサル」という強み
内田氏が自らの強みとして挙げるのは、コンサルティング会社から上がってきたのではなく、事業会社で人事部長・経営企画室長として「自分で手を動かせる」経験を積んできたことだ。
「その部分を、クライアントの社長からすごく高く評価していただけている感じがします」
加えて、サラリーマン時代にずっと会社のナンバー2を担ってきたため、社長と対等に経営の話ができる。人事という切り口を超えて経営そのものに踏み込めることが、リファラルで仕事が広がり続ける理由になっている。営業手法は基本的にすべて紹介。長く付き合うクライアントや、パートナーの経営者同士の紹介で輪が広がっていく。
組織を持たず、パートナーで広げる
支援先が20社に達し、一人で回すにはギリギリの状況になりつつある。それでも内田氏は組織を持つつもりがない。マネジメントの負荷を負わず、身軽であり続けるための選択だ。
代わりに力を入れるのが、パートナーとの連携によるクロスセルである。評価制度、採用、労務など、それぞれ得意領域を持つ一人コンサルタントたちとネットワークを組み、クライアントの課題に応じてチームを編成する。
「結果として、1社のお客様に対して3社4社で支援していることが多いんです」
案件ごとに最適なメンバーが集まるため、支援チームは毎回異なる。自分一人の経験値でカバーしきれない領域を、信頼できるパートナーで補い合う仕組みだ。
「このクライアントが好きか」を判断軸に
経営における判断で内田氏が大切にしているのは、極めて感覚的なものだ。
「支援する側として仕事が欲しいというよりも、本気でこのクライアントが好きだな、この会社が好きだなという感覚をすごく大切にしています」
その感覚を持てない相手であれば、契約を終了させることもある。相性という手触りを何より重んじる姿勢が、長く続く伴走関係を支えている。
「手離れのいい仕組み」で地方の中小企業に届ける
今後3〜5年を見据えたとき、一人で到達できる売上は1億円ほどが視界に入る。ただし労働集約のままではそこに届かない。だからこそパートナーと組み、マネタイズできる仕組み、手離れのいいビジネスモデルをつくっていきたいと語る。
その先に見据えるのは、人事機能を持たない中小企業への貢献だ。内田氏のクライアントには地方の企業が多く、支援エリアは北は宮城・仙台から西は鳥取まで全国に広がる。地方はリモート中心だが、なるべく足を運ぶようにしているため、スケジュールは全国を飛び回る忙しさになる。
「人事機能がない会社は、地方にまだまだ多い。僕が外部の人事機能として入ることで、いろんな中小企業が活躍できるようにしていきたい」
自ら手を動かしてきた人事のプロが、外から組織に息を吹き込む。その静かな志が、全国の経営者を支えている。
会社概要
- 会社名:株式会社Bagus
- 代表者:内田大介
- 事業内容:人事評価制度の構築を中心とした人事コンサルティング、採用支援、経営コンサルティング・顧問
編集後記
20年以上を事業会社の人事現場で過ごし、社長の右腕として組織を作り続けてきた内田氏。その経験を携えて独立した今も、「組織を持たない」という一貫した哲学を貫きながら、パートナーとの協働で支援の幅を広げている。「本気で好きだと思えるか」を判断軸に据える姿勢からは、仕事を数ではなく関係の質で捉える誠実さがにじむ。人事機能を持たない地方の中小企業にとって、外から経営に伴走してくれるこうした存在の価値は、これから一層高まっていくだろう。
