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一本気に、生涯現役。ウエイトトレーニングは「すべての運動の根源」

日本全国の強豪校を回り、部活動にウエイトトレーニングを持ち込んできた指導者がいる。株式会社ターゲット仁-jin 代表取締役の宮本直哉さんだ。レスリング、ボディビル、パワーリフティング、総合格闘技――競技の第一線を渡り歩き、闘病を経てなお現役の選手であり続ける。「これしかできない」と言い切る不器用さを、誰にも負けない強みへと変えてきた。自ら人体実験を重ねる指導者の哲学を聞いた。

目次

マットの上から始まった競技人生

宮本さんのキャリアは、競技とともにある。高校時代はアマチュアレスリングでインターハイ・国体に出場、中国地区大会でも頂点に立った。その後は自衛隊を経て、社会人になってからボディビルを始め、コンテストで山口県チャンピオンに輝く。さらにパワーリフティングへと進み、日本代表としてアジアの舞台にも立った。

「20代から30代までの10年は、主にパワーリフティングでした」。ベンチプレス、スクワット、デッドリフトの合計を競うこの競技は、一般には地味に映る。だが宮本さんは、その基礎スキルこそがあらゆるトレーニングの土台だと語る。格闘技ブームが訪れると、もともとのバックボーンであるレスリングを生かし、総合格闘技へ再挑戦。関節技と締め技を軸とする組み技系の全日本大会(コンバットレスリング)で全国制覇を果たした。

一度は体調を崩し、アスリートとしての道を諦めかけた時期もある。トレーナー業を続けるうちに体が回復し、二十数年ぶりにパワーリフティングへ復帰。近年はシニア年代のカテゴリーでアジアの大会を制し、アジア記録も打ち立てた。「若い頃、闘病でどうしても諦めきれなかった。今は、その忘れ物を取りに行っている感覚です」。

「正しい筋トレ」を広めたくて

トレーナーとしての歩みは長い。20代半ばからスポーツチームの指導に入り、北海道から九州まで全国の強豪校を回った。野球部やサッカー部の練習時間に筋力トレーニングを教える――今でこそ当たり前になったが、宮本さんが始めた頃は違った。「営業に行っても『うちは器具はいらない』と言われる。指導をする会社だと説明しても、話が通じない時代だったんです」。

会社を立ち上げた原点には、強い問題意識があった。ウエイトトレーニングは「体が硬くなる」「スピードが落ちる」「子どもには良くない」と誤解されがちだ。「それは全部違う、と自分が発信していきたかった」。依頼が増えるほど一人では手が回らなくなり、後継者を育てながら事業として続けられる形をつくる必要にも迫られた。個人事業からスタートし、およそ10年前にパーソナルジムを構えたのは、そうした思いの延長線上にある。

結果として、その決断が会社を救う。外部でのチーム指導はコロナ禍でほぼ全滅した。「ジムを持っていなかったら、たぶん潰れていました」。かつては車中泊で全国を営業に回り、成果を出しては次の紹介につなげてきた。当時指導した選手の中には、現在プロ野球の世界で活躍している選手もいる。地道な積み重ねが、いまの土台になっている。

現役だからこそ、深まる指導

宮本さんの強みは、指導者でありながら現役の選手であり続けている点にある。「自分が現役だからこそ、探求心がある。どうすれば楽に、効率よく重い物を上げられるか。それがそのまま指導の引き出しになっていく」。

年齢を重ねれば、筋肉量だけで押し切ることはできない。だからこそ、少ない力で最大の効果を出す「技術」を突き詰める。「もう達人の領域を目指すしかない。追求していくと、いろんな動きが実は全部つながっていると気づくんです」。バーベルの挙げ方が上達すれば、スポーツ全般が上手くなる――それは自身の身体で証明し続けている実感でもある。

チーム指導の現場では、技術以上に「動機づけ」を重んじる。強豪校であっても、選手がトレーニングに前向きとは限らない。「本当に大事なのは、どうすれば本人が興味を持って、自分から取り組んでくれるか。そこに一番、頭を使います」。

ブレない、という生き方

判断に迷ったとき、何を軸にするのか。宮本さんの答えは明快だった。「頑固で一本気なんです。一度こうと決めたら譲らない。不器用の極まりだけど、それを逆に強みにしようと思っている」。

器用にあれこれ手を広げるのではなく、一つのことをしつこくやり続ける。「誰にも負けないところまで追求すれば、絶対に負けない。それだけなんです」。情報が溢れる時代にあっても、まず自分の直感で「これは本当か」と問い直す。鵜呑みにしない構えが、独自の発信を支えている。

かつてはフランチャイズ展開の野望もあった。だが人を連れて回るなかで、自分の信念を共有できる人材の稀少さを痛感する。「結局、自分が納得して指導できて、幸せに続けられればそれでいい、と思うようになりました」。

SNSと集客、そして現在地

いま最大の課題は集客だ。立地の条件もあり、新規の来店は簡単ではない。力を入れているのはSNS、とりわけInstagramでの発信である。「子どもの頃からの筋トレを推奨するトレーナーは、あまりいない。世間の常識は、いつか変わる。それを『未常識』と呼んで発信しています」。

短い教育動画が反響を呼び、再生数が大きく伸びた投稿も出てきた。閲覧が増えたいまこそ、本当に伝えたいメッセージを届けるチャンスだと捉えている。撮影も編集も基本は自身で手がける。ホットペッパービューティーへの掲載や、宣伝動画の制作といった新たな投資にも踏み出した。

店舗は2つ。本気で競技や大会を目指す人、より穏やかに取り組みたい人にはもう一方の店舗で対応するなど、目的に応じて役割を分けている。「30分の予定でも、次の予約がなければ2時間でも付き合ってしまう。納得するまでやりたいんです」。良くも悪くも職人肌の指導が、体験に来た人の高い入会率を支えている。

すべての運動の根源へ

3〜5年先を見据えたとき、宮本さんのビジョンは一貫している。ウエイトトレーニングを、より広く世の中に伝えることだ。「私が発信しているのは、ウエイトトレーニングはすべての運動の根源だ、ということ。正しく歩く、立つ、座る――日常の動作からジャンプやスポーツまで、その根底にあるスキルなんです」。

本人はこれを「ネオトレーニング」と呼ぶ。新しさを打ち出す言葉に見えて、その真意は逆だ。「本質をもう一度見直そう、という考え方です」。重い重量を挙げるときの軸の取り方、重心を保つ感覚――それを身体に癖づけることが、速い動きやしなやかな身のこなしにつながっていく。「スクワットでしゃがんで立つ動作の延長に、ジャンプがある。減速主体のトレーニングで軸を覚え、少しずつスピードを上げていけばいい」。

自らの身体で検証し続けるからこそ、語りには熱がこもる。生涯現役を貫きながら、正しいトレーニングの価値を伝えていく。その探求に、終わりはない。

会社概要

  • 会社名:株式会社ターゲット仁-jin
  • 代表者:代表取締役 宮本 直哉
  • 事業内容:パーソナルトレーニング、スポーツチーム・選手へのウエイトトレーニング指導
  • 従業員:6名(業務委託含む)

編集後記

競技者としての実績を語り出せば止まらない一方で、指導の話になると「技術より動機づけ」と現場の機微を説く。その落差にこそ、この人の面白さがある。諦めきれなかった若き日の忘れ物を取りに、いまも自らマットとバーベルに向かう。不器用さを武器に変えた一本気な生き方は、何かを極めたいと願うすべての人の背中を押す。

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