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「わくわく」を原点に、地域に次世代教育を届ける学びの場をつくる

上尾市で次世代型の学習スタジオとフリースクールを運営するWakury Academia合同会社。代表の鈴木由希さんは、英語教室の講師として都市と地方の教育格差を肌で感じ、「本当に必要な教育を、より多くの子どもたちに届けたい」との思いで起業した。英語・プログラミング・探究学習にVRを組み合わせ、学びと遊びの境目のない場を一人でつくり上げてきた鈴木さんに、その原点と描く未来を聞いた。

目次

母をきっかけに、英語と子どもをつなぐ道へ

鈴木さんのキャリアは、ショーウィンドウやインテリア関係の企業に勤めることから始まった。その後、長く携わることになったのが英語教室の運営だ。もともと子どもと関わることが好きで、英語も身近な存在だったという。

「母がフィリピンの出身だったんです。バイリンガルで育ったわけではないのですが、母をきっかけに、英語を仕事として子どもと関わっていきたいという思いがありました」

英語を教えるところから始めながら、鈴木さんの中では次第に「子どもたちにもっと寄り添いたい」という気持ちが強くなっていった。

都市と地方の教育格差に感じた問題意識

英語教室の講師として、鈴木さんは都心の駅前と、住宅街のある地域の両方で教える経験を積んだ。そこで見えてきたのが、環境による教育の格差だった。

「都会から少し離れると、いま必要とされている英語やプログラミング、探究学習といったものを意識している親御さんが少ない。しかも、そうした学びは月謝が高い。教える立場でありながら、内心これは高すぎると感じていました」

自身の息子が小学校に入ったとき、その思いはさらに強くなる。都市部ではテクノロジーが当たり前になっている一方で、学校のスタイルは数十年前とほとんど変わっていないように見えた。「誰もやる人がいない、特に地方では見当たらない。それなら自分でやろう」——そう決意したことが、起業のきっかけとなった。

VRで学びを変える、一箇所に集約した学習スタジオ

現在の事業は、大きく二つの柱で構成されている。午前10時から午後1時半までは、学校に行けない子どもや悩みを抱える子どもたちを受け入れるフリースクールとして。午後3時半以降は、学習スタジオとして英語、タイピング、プログラミング、Robloxに特化したゲームクリエイター、VRを使った探究学習など多彩なクラスを展開する。

強みは、次世代教育に特化したクラスをすべて一箇所で受けられること、そして定額で受けやすい価格に抑えていることだ。

「学習塾でVRを導入しているのは、全国でうちが初めてです。英語もプログラミングも探究学習も、種類ごとに教室が分かれていることが多いですが、うちはそれが全部集結している。それでいて、より多くの人が受けられる価格で提供しています」

社名の「Wakury(ワクリー)」は鈴木さんの造語で、「わくわく」を原点としている。ゲームもプログラミングもタイピングも探究学習もVRも、すべてが「わくわく」から始まり、学びと遊びの境目がない——そんな場を提供したいという思いが込められている。

一人で挑む起業と、AIを味方にした業務効率化

初めての起業で、鈴木さんが直面したのは「信用」の難しさだった。

「取引する相手をどこまで信用していいのか。人として付き合っていきたいと思っていても、契約した内容がこちらの期待と違うこともある。やっていることが複雑で、いろいろな要素を組み合わせているので、一緒に組んでくれる会社を見つけるのが大変でした」

自分の頭の中にある構想を言葉にし、ビジュアルにしてくれるパートナーの存在も課題だという。従業員は鈴木さん一人。その中で作業を効率化するため、AIを積極的に活用している。

「一人でも行えるのが今の時代だと思うんです。業務を助けてくれるものが世の中にたくさん出ている。自分の知らない部分でも、もっと業務効率化を図れればと日々思っています」

失敗を恐れない環境を、大人が用意する

経営、そして子どもたちと向き合ううえで鈴木さんが最も大切にしているのは、「失敗を恐れない環境」を与えることだ。

「仕事でも、チャレンジするときにびくびくしていたら何もできない。その環境を与えてあげられるのは大人の役目です。失敗してもいい、挑戦することが大事なんだよと、子どもたちに一番感じてほしい」

探究学習やプログラミングは、自分で考えることを何度も求められる。だからこそ鈴木さんは、いろいろなクラスを組み合わせ、200種類ほどあるVRコンテンツも活用しながら、多様な角度から学びに触れる機会を用意する。「たくさんの引き出しを子どもたちに感じてもらい、視野を広く持てる子が増えていったら」との願いからだ。

「〇〇といえばワクリー」——地域に根付く未来へ

3年後、5年後に向けて、鈴木さんが描くのは地域に当たり前に根付いた存在になることだ。

「探究学習といえばワクリー、プログラミングといえばワクリー、と言ってもらえる場所にしたい。地元に根付いた場所にしていきたいんです」

地域の自治会や市の各部署とも連携を進め、VR活用の幅を広げている。さらに、民間への移行が進む部活動運営への参入も、年末に向けて動き出した。将来的には、スポンサーを付けた大きな自主開催イベントを行うことも大きな目標に掲げる。

働く仲間についても、鈴木さんは明確なイメージを持っている。「自分のやりたいこと、やろうとしていることを理解しながら、志をともにしてグイグイ進んでくれる方と働きたい」。そして企業と組むなら、何よりも子どもたちのことを一番に考えてくれる相手でありたいという。

最後に、鈴木さんはこう語った。「これからの未来、子どもたちが安心して過ごせて、学べる環境を提供できるのは大人の役目です。近い環境にいる大人の方がいたら、そうした場所に子どもを置いてあげてほしいと思います」

会社概要

  • 会社名:Wakury Academia合同会社
  • 代表者:鈴木由希
  • 所在地:埼玉県上尾市
  • 設立:2025年6月
  • 事業内容:次世代型学習スタジオ(英語・プログラミング・タイピング・ゲームクリエイター・VR探究学習等)およびフリースクールの運営、VR活用の地域・企業連携、Robloxクリエイター業務

編集後記

講師として感じ続けた教育格差への違和感を、鈴木さんは「ないなら自分でつくる」という行動へと変えた。母への思いから始まった英語との関わりが、いまでは地域の子どもたちが「わくわく」しながら学べる場へと広がっている。一人で複雑な事業を束ね、AIを味方につけながら前へ進む姿には、地方の教育を静かに、しかし確かに変えていく力強さがある。地域に根付く「当たり前の場所」を目指す挑戦の続きを、これからも見つめていきたい。

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