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地球サイズのもてなしで世界の食通を迎える、京都で和食・寿司一筋47年の流儀

京都で寿司レストラン「京・寿司 おおきに」を営む株式会社ムラタエンタープライズ。代表の村田勉氏は、飲食店に生まれ育ち、調理とマネジメントの二刀流で歩んできた生粋の料理人だ。「日本人であろうが海外の方であろうが、隔たりはない」と言い切り、遠来のお客様にこそ日本人以上のもてなしを尽くす。SNSや広告に頼らず、料理とホスピタリティそのもので「あそこはすごい」と語り継がれることを追い求める——そんな一人の店主の哲学に迫った。

目次

飲食に生まれ、飲食一筋で歩んだ半生

村田氏のキャリアは、そのまま飲食業の歴史でもある。1979年(昭和54年)に大学を卒業して以来、身を置いてきたのは飲食業界のみ。マネジメントと調理という二つの職能を、いわば二刀流で磨き続けてきた。

その原点は生まれにある。実の父が飲食店を営み、村田氏は5人きょうだいの末っ子として飲食の世界に生まれ育った。後継者候補という立場ではなかったが、それでも進路に迷いはなかったという。「大学を卒業する時も、金融も車業界も一切考えず、ひたすら飲食を考えました」。大学に通いながら夜間の調理師学校にも通い、頭のなかは飲食業界一色だったと振り返る。

45歳での独立、そして二度の大波

勤め人としてのキャリアの最後は、雇われ経営者という立場だった。しかしその立場では、意にそぐわぬ指示にもノーと言えない。自らのセオリーとぶつかる場面が生まれたことをきっかけに、村田氏は45歳で独立を決断する。「20世紀の間に自分の店を持とう」という思いも背中を押した。こうして2000年、自身の店を構えた。

独立から店を守り抜くなかで、大きく立ちはだかったのが二つの社会的事象だ。一つは2008年のリーマンショック。上場企業の接待利用が数多くあった店にとって打撃は大きく、売上は3割減にまで落ち込んだ。もう一つは、今も影響が続く新型コロナだ。「あとは小さい山はいくつもあるけれど、言い出したらキリがない」。二つの大波を越え、店はいまも続いている。

「料理」であって「餌」ではない——飲食店の定義

村田氏には、飲食レストランとは何かという明確な定義がある。おいしく、楽しく、リラックスでき、明日の活力になる。そして何より「ここへ来てよかった、また来ようね」と思ってもらえること。それこそが飲食店の本質だと語る。

「ただ腹を満たすだけなら、それは料理ではなく餌です」。厳しい言葉の裏にあるのは、一皿一皿への矜持だ。大将のおしゃべり、スタッフのもてなし——そうした体験のすべてが「また来たい」につながる。その積み重ねが、村田氏の目指すところである。

海外の常連客が証明する、隔たりなきホスピタリティ

客層は日本人が9割、海外からの客が1割ほど。近年は海外客が少しずつ増えているというが、村田氏はインバウンドを狙った戦略を特別に掲げているわけではない。「日本人だろうが海外の方だろうが、もてなしに隔たりはない。むしろ遠方から飛行機で来てくださるお客様には、日本人以上のもてなしをしている自負があります」。

その姿勢を裏づけるのが、海外からのリピーターの存在だ。全国どこにでも名店がある日本で、わざわざ同じ店に二度三度とお客様がいる。「それが何よりのエビデンスでしょう」。来店前にアレルギーやベジタリアンの有無、子ども連れかどうかまで確認し、相手の期待を良い意味で超える。予約一件ごとに礼を尽くす姿勢が、国境を越えた信頼を生んでいる。

「報・連・相」を貫く経営、そして次代への継承

判断に迷ったとき、村田氏はまず月次で訪れる顧問税理士と前月の結果を共有し、次の一手を練る。コンサルタントは置かず、経営の舵取りは自らの経験と幅広いネットワークから得るヒントで切り拓いてきた。数多く舞い込む営業の誘いも、頭から断らず一度は受け止め、そのうえで取捨選択する。「全部門前払いすると、宝のような誘いを逃すこともあるから」。

そんな村田氏がこだわり続けるのが、報告・連絡・相談——「報・連・相」の徹底だ。予約が入ればお礼のメールを返し、業者様からの連絡にも必ず応じる。相手の期待を超えるための、地道で確かな習慣である。

その視線は次代へも向かう。長期の目標は、店を構えるビルのローンを完済すること。その先には、自らは取締役会長へ、そして娘を取締役社長へと引き継ぐ構想を描く。「親子経営は一般社員のようにはいかない。そこをうまくくぐり抜けて、立派な社長になるように」。数字とともに、後継の姿を見据えている。中期的には、従業員の労働時間を世間並みに整える働き方の改善と、利益率の一層の安定を掲げる。

物差しは「地球サイズ」

地域への貢献を問われた村田氏の答えは、意表を突くものだった。京都に根ざしながらも、その物差しは京都にとどまらない。「今や地球感覚。世界中の人々に、こんなレストランがあったのか、こんなもてなしができる日本人がいたのかと思ってもらいたい」。

一つの街の名店にとどまるのではなく、地球規模のホスピタリティと料理を探求し続ける。京・寿司 おおきにの暖簾の向こうには、世界へと開かれた一人の店主の眼差しがある。

会社概要

  • 会社名:株式会社ムラタエンタープライズ
  • 代表者:村田 勉
  • 事業内容:寿司レストラン「京・寿司 おおきに」の経営
  • 創業:2000年
  • 所在地:京都市
株式会社ムラタエンタープライズ 代表 村田 勉

編集後記

「変なおっさんやなと思ってるでしょう」と笑う村田氏だが、その言葉の端々には、飲食に人生を賭してきた者だけが持つ確かな哲学が宿っていた。国籍も地域も問わず、目の前の一人を全力でもてなす。その徹底が海外の常連客を生み、Google上の高い評価となって返ってくる。派手なPRではなく、料理ともてなしそのもので語り継がれることを追う——その姿勢は、飲食という仕事の原点を静かに照らしていた。

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