株式会社Think Upは、補助金・助成金の申請サポートを軸に、中小企業の「お金回り」を全般的に支える会社だ。代表の高嶋克成氏は、レクサスの営業、外資系生命保険の外交員という異色の経歴を経て独立。着手金なしの完全成功報酬、そして採択後の「つなぎ融資」という独自サービスで、他社にはない手厚さを実現している。広告費をかけずに全国へ広がる紹介の輪と、その先に描く成長戦略を聞いた。
トヨタ、生命保険を経て独立へ
高嶋氏のキャリアは、地元・愛知県名古屋から始まる。地元の大学を卒業後、トヨタのディーラーに就職し、新卒から25歳までレクサスの営業を担当した。
その後、外資系生命保険会社であるジブラルタ生命からスカウトを受けて転職。7年余りにわたり、生命保険の募集人として実績を重ねた。
独立にあたっては、まず別のパートナーと共同で会社を立ち上げた。事業内容は現在とほぼ同じ形態だったという。そこからさらに、自身が代表を務める株式会社Think Upを設立したのが2年前。保険を出発点に、徐々に事業領域を広げてきた歩みがある。
「気づいたら」主力になった補助金・助成金サポート
現在、Think Upの売上のおよそ8割5分を占めるのが、補助金・助成金の申請サポート事業だ。顧客はほぼ法人か個人事業主で、建築・建設・不動産、飲食といった業種が比較的多い。
この分野を主力に据えたのは、狙ってのことではなかった。
「最初は保険上がりですので、徐々に事業領域を広げていったという経緯なんですけど、たまたま補助金・助成金の案件の引き合いを多くいただけるようになって、気づいたら売上の大半がそこになっていた、という流れです」
意図せずして主力事業となった背景には、確かな実力への評価がある。
三つの強み──守備範囲・完全成功報酬・採択率
高嶋氏は自社の強みを具体的に語る。
第一に、対応できる補助金・助成金の守備範囲の広さだ。補助金・助成金には、国の全国版から各都道府県・市町村ごとのマニアックなものまで膨大な種類がある。Think Upはそのすべてに対応できる体制を整えており、「基本的に対応できないものはない」という。ここまで幅広く対応できる業者は多くない。
第二に、着手金なしの完全成功報酬型であること。着手金を求める同業者が多いなか、Think Upは顧客にとって「ノーリスク」で安心できる料金体系を貫いている。
第三に、採択率の高さだ。同社は年間で700〜800社ほどの申請サポートを手がけており、昨年もっとも多く対応したIT導入補助金では、1年間で412社をサポート。その採択率は98%を超えた。全国平均が54〜55%とされるなか、際立って高い水準だ。予算枠が縮小する制度終盤に、条件面は問題なくとも予算の都合で弾かれるケースがわずかにあるものの、圧倒的な実績を残している。
「つなぎ融資」という独自サービス
もう一つ、Think Upを際立たせるのが独自の資金支援だ。補助金・助成金を使いたくても使えない企業には共通の壁がある。多くの制度は、まず顧客がまとまった資金を先払い・先出しし、後から一部が国から戻ってくる仕組みのため、先出しができないと制度そのものが使えないのだ。
そこでThink Upは、採択後の案件に対して自社からのブリッジ、いわゆるつなぎ融資という形で一時的に資金を援助し、補助金が入金されたら返済してもらうサービスを提供している。
「そこまでやっている補助金業者は、そうそういないかなと。非常に喜んでいただいている部分です」
採択後に限って行うため取りこぼしのリスクも小さく、ある程度の内部留保があってこそ成り立つこのサービスが、確かな差別化になっている。
判断の軸は「本当にお客様のためになるか」
広告費は1円もかけていない。それでも案件が絶えないのは、元々の顧客がそのサービスに満足し、自ら代理店となって周囲の企業を紹介してくれる好循環が生まれているからだ。直接の知り合いからの案件は全体の4〜5%ほどで、大半が紹介から広がっていく。
その関係性を支えるのが、高嶋氏の判断軸だ。明確なルールとして定めているわけではないが、常に「それが本当にお客様のためになるかどうか」を考えている。
「お客様の要望にいろいろ答えすぎると、逆にお客様のためにならないことも結構あるんです。そこは厳しく対峙しなくてはいけないこともあります」
顧客と業者という関係ではなく、対等なパートナーとしてウィンウィンを目指す。しっかり関係を築ければ「次もお願いね」と必ず言われ、さらに紹介が生まれる。その積み重ねが、今のThink Upをつくってきた。
一方で、事業を重ねるなかでの学びもある。取引先の資金繰り悪化による未払いを経験し、「いいよいいよと安請け合いするのではなく、もう少しちゃんと精査しなければ」と肝に銘じるようになった。
属人化からの脱却という最大の課題
順調に見える事業にも、明確な課題がある。属人化だ。
顧客との初回面談やヒアリング、交通整理といった中核の業務を、現在は高嶋氏がほぼ一人で担っている。業務委託のスタッフは事務方が中心で、もし高嶋氏が病気や事故で離脱すれば、しばらく業務が止まりかねない。初回面談が立て込めば、次の空き日程が1ヶ月から1ヶ月半先になり、顧客を待たせてしまうこともあるという。
「知識やナレッジが高嶋の頭に入ってしまっていて、それをまだ下まで落とせていない。ここが一番の課題です」
そこで今、求めているのがナンバー2、ナンバー3となる幹部候補の人材だ。求める人物像は明確で、顧客と対人で向き合うコミュニケーション能力とプレゼン能力を備えていること。業界未経験でも構わないが、素直であること、約束をきちんと守れることを重視する。
「営業力やコミュニケーション能力を一から教えるのは大変で、先天的な部分もある。そこは最低限あればと思っています」
5年後、年商50億へ
高嶋氏が描く中期のビジョンは、5年後に年商50億円。現在の12億円あまりから大きく飛躍する目標だ。
その鍵も、やはり組織づくりにある。今は高嶋氏一人のマンパワーで動いているが、日々稼働する幹部候補クラスを数名、それ以外の営業や事務方も含めて20名ほどの体制が作れれば、50億は十分に射程に入ると見る。ここ1、2年で採用と育成を進め、組織と人の能力を固めていく考えだ。
「高嶋への属人化からの脱却。それが一番の課題なので、この1年でしっかりやっていきたい」
困った時に、真っ先に
Think Upの経営理念は、「お客様(企業)の可能性を最大化して、ありがとうを作る会社になる」こと。そして掲げるビジョンは、「困った時に真っ先に頼られる会社」だ。
「補助金・助成金だけでなく、お金回り全般、さらにそれ以外のことも含めて、経営者の方が困った時に『高嶋さんに、Think Upに相談しよう』と真っ先に思い出してもらえる。そんな会社になりたいんです」
編集後記
狙って主力にしたわけではない、と補助金事業を振り返る高嶋氏の言葉には、目の前の顧客に誠実に向き合い続けた結果としての実績への自負がにじむ。着手金なしの成功報酬も、採択後のつなぎ融資も、すべては「本当に顧客のためになるか」という一点から発想されている。だからこそ広告に頼らず、満足した顧客自身が紹介の担い手となる。属人化という最大の課題に正面から向き合い、自らのナレッジを組織へ落とし込もうとする姿勢に、次の成長の確かな萌芽を感じた取材だった。
