リード文
マナコンサルティング合同会社の代表社員・髙橋翔平氏は、金融業界の投資畑を長く歩んだ異色の経歴を持つ財務コンサルタントだ。回収の難しい債権を活かした独自の財務スキームを武器に、中小企業の経営に寄り添う。「経営者の想いを数字に乗せる」——その一言に込めた哲学と、これからつくりたい市場について聞いた。
金融の投資畑を歩んできた経歴
髙橋氏のキャリアは、一般的な銀行員のそれとは大きく異なる。窓口業務や融資といった仕事ではなく、当初から投資部門に身を置いてきた。
「銀行の業務、お金を貸すとか窓口業務というのは、実際やったことがないんです。当初からその投資部門の業務に携わっていました。ジャンルでいくと、投資ファンドに新卒から就職しているような感じなんですよ」
その後は保険業界も経験し、個人事業主としての独立を経て現在に至る。数字とロジックを徹底的に叩き込まれた環境で培った土台が、今の事業の核を支えている。
法人化の契機と、独自の財務スキーム
個人事業主として活動を始めた当初、髙橋氏は今とは異なる事業を手がけていた。法人化はいずれ必要だと漠然と考えていたが、決め手となったのは取引先からの一言だった。
「個人事業主だと、ちょっと取引しにくいよね、というところがあったのが、一番の法人化の契機でした」
現在のマナコンサルティング合同会社は、財務・経営コンサルティングを軸としながら、独自のサービスを提供する。回収の難しい売掛金や貸付金——いわゆる不良債権を活用した法人税の圧縮スキームだ。これに付随して、債権管理体制の構築や、新規取引先開拓に向けたバックオフィス整備も手がける。顧客はB2Bがほとんどを占める。
強みは、その専門性の希少さにある。
「不良債権の買取事業ができる競合が、弊社が認識している限り関西圏にはいない。関東・首都圏も2社しかない。そこは一番の強みに挙げられます」
苦労が教えてくれた「言語化」の大切さ
順調に見える事業にも、苦労はある。髙橋氏が挙げたのは、資金繰りと、自らの言語化能力だった。
「今年の3月に、ちょっと大きめの未入金があって。資金的な部分で一番大きな苦労でした。あとは創業当初から、コンサル会社なので他社との差別化の難しさ、自分自身の言語化能力の低さは、常々痛感させられています」
この課題に、髙橋氏はAIを積極的に取り入れることで向き合っている。社内のエージェント化を進めながら、自社事業の棚卸しに時間をかけてきた。
「その中で、自分のやってきた経歴や強みの部分で、『あ、ここって他社と差別化できるよね』というのを、明確に言語化できるようになってきたと感じています」
客観性と、数字に乗せる感情
経営で大切にしている考え方を問うと、髙橋氏はまず「客観性」を挙げた。
「客観的に判断するところが一番です。僕自身がずっと金融業界に携わってきた人間なので、数字ベースで喋る部分が第一。そして、お客様になっていただいた後は、数字にどうやって感情を乗っけるか。それが2番目に大事にしていることです」
数字を扱うプロでありながら、その先にある経営者の想いを見つめる。この姿勢が、髙橋氏のコンサルティングの根幹をなしている。
組織のかたちと、これから描く市場
人材については、当初は採用を検討していたものの、AIの活用を本格化させてから考え方が変わったという。
「社内で抱えるというよりは、業務委託もしくはパートナーシップでやっていく方がいいかなと感じています」
自身が「バリバリの昭和の育てられ方」をしてきたと語る髙橋氏は、ロジックで徹底的に詰められる環境で鍛えられてきた。だからこそ、自分らしく働けるかたちを模索している。
今後、力を入れていきたいのは不良債権の買取事業、そして未上場株式のセカンダリーマーケットの創出だ。
「どういうふうにやったら作れるかな、とエネルギーを燃やし続けられる場所なんです。そこに関して、明確に数値目標を設定していければと考えています」
会社概要
- 会社名:マナコンサルティング合同会社
- 代表者:髙橋 翔平(代表社員)
- 事業内容:財務・経営コンサルティング/不良債権を活用した財務スキームの提供、債権管理体制の構築、バックオフィス整備
編集後記
投資ファンドで数字とロジックに向き合い続けてきた髙橋氏。その語り口は終始冷静でありながら、「数字に感情を乗せる」という言葉には、経営者に寄り添う温かさがにじんでいた。回収困難な債権に新たな価値を見出し、まだ誰も整えていない市場をつくろうとする——その挑戦は、中小企業経営に静かな選択肢を増やしていくはずだ。数字の奥にある想いを翻訳する編集者のような存在として、髙橋氏の今後に注目したい。
