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言葉とAIで、世界の課題に挑む――スピードを止めない経営者の実像

株式会社ObotAIは、多言語のAIチャットボットやAIエージェントを軸に、言葉の壁を越えるサービスを展開する会社だ。代表の北見好拡氏は、海外リゾート開発で約30年を過ごしたのち、AIと言語を掛け合わせた事業で独立という異色の経歴を持つ。直感を信じて素早く動き、数々の失敗も糧にしてきた経営者に、その歩みと哲学を聞いた。

目次

海外リゾートからAIへ――30年越しの原点

北見氏は東京・中野区の出身。大学卒業後にサラリーマンを3年経験したのち、サイパンへ赴任し、リゾート開発の一環としてホテルやゴルフ場の経営に携わった。グアムでゴルフ場を買収するなど、約30年にわたり海外でホテル関連事業に打ち込んできた。

転機となったのは2016年のM&A。ちょうどAIや人工知能が注目され始めた時期だった。実は北見氏、大学時代からプログラミングが好きで、当時はポケットコンピュータにBASICで簡単なプログラムを組むことに熱中していたという。

「以前からSaaSというビジネスをやってみたいと思っていました。ちょうど言葉の意味を理解するチャットボットの言語エンジンが出始めた頃で。ホテルをやっている時、人の課題、言葉の課題をずっと感じていたので、思い切ってこの会社を立ち上げようと」

海外の現場では、スタッフの労働ビザが下りないといった課題にも直面していた。「それならAIにやらせればいい」――そんな衝動的な思いが、起業のきっかけになった。構想は2017年、会社の設立は2019年である。

コロナ禍で見つけた活路

創業当初は、インバウンド需要を見据えた多言語チャットボットを主力に、ホテルや外国人観光客を迎える施設へ営業をかけていた。しかしコロナ禍が直撃し、クライアントは一気に消えてしまう。

そこで北見氏が動く。感染症の情報が錯綜し、多くの自治体に問い合わせが殺到していると知り、6言語対応の多言語チャットボットを無料で提供した。

「使ってくださいと差し出したのがきっかけで、半年ほどしたら予算化されて。急に自治体さんに使ってもらえるようになりました」

結果として、今では顧客の約半分を自治体が占める。「全く戦略性も何もない、ただの実体験からです」と北見氏は笑う。やろうと思ったら一気にやり切る――そのスピードが、逆境を機会に変えた。

数々の失敗と、受託開発という土台

順風満帆に見える歩みだが、本人は「順調には伸びていない」と率直だ。多言語チャットボット以外にも様々なサービスを出し、業界特化やVR事業など、幾度もピボットを繰り返しては失敗してきた。

「先取りでやった分、後発の方がコストパフォーマンスが良かった、ということもたくさんあります」

その一方で、キャッシュを支えてきたのが受託開発だ。出版会社や広告代理店、省庁がらみの補助金事業など、幅広い依頼を受ける。AIを組み込んだ開発が多く、自社の知見にも還元される。VCからの調達や借り入れに頼らずやってこられたのも、この土台があるからこそだ。

強みは技術スタックにある。「AIの組み込みと、Pythonを軸にした開発。この技術で開発できる会社はあまりないと思います」

多様な人が働く組織――外国人と主婦の力

従業員は約20名。多言語とAIを掛け合わせたサービスを提供する会社らしく、意図的に外国人を採用しており、その割合は半数にのぼる。サイパン時代のスタッフも今なお在籍し、翻訳やネイティブチェックを担う。

もう一つの特徴が、主婦の積極採用だ。ほぼリモートワークで、子どもの送り迎えがある主婦を、10時から15時のパートタイムで迎え入れている。

「主婦の方は働きたい意欲がものすごく強い。言葉は悪いですが、根性があるというか。子育てで苦労されている分、ちょっとやそっとでへこたれない。責任感もあると、直感的に感じています」

顧客と向き合う姿勢の根底には、ホテルで培ったホスピタリティがある。「顧客の意図をきちっと読み取り、満足いくサービスを提供する。利益を追求するあまり顧客本位でなくなったサービスは、続かないと思うんです」。理不尽な要求には流されないが、世の中の道徳観に照らして判断する――そのフラットさが一貫している。

AIとともに描く、これからの姿

北見氏は2023年からいち早くAIの実務活用を進めてきた。エンジニアだけでなくマーケティングスタッフも含め、全員がAIを使いこなす。新規顧客の獲得も、SEOを意識したオウンドメディアからの流入がほとんどだという。

「これから力を入れたいのは、オウンドメディアやAIを使った動画作成、Webページです。自分たちが集客に苦労した分、デジタルでの集客ソリューション、AIエージェントに注力していきたい」

その先の展望について、北見氏は自らの引退やM&Aも率直に見据える。「自分が客観的に見て、会社にとってマイナスにしかならないようなら、さっさと引退します」。年齢とともに頑固さが出ることも自覚しつつ、若い世代と対話し、最先端を追い続ける今は「まだやっていける」と語る。保守的にならない姿勢こそ、この経営者の若さの秘訣なのだろう。

求める人材と、連携したいパートナー

現在、同社が展開するAIエージェント「ObotCRAFT」は、多言語でSEOに強いコンテンツを生み出すサービスだ。北見氏はこれをさらに伸ばしたいと考えている。

「デジタルで集客したいクライアントを多く持つ方――Web制作会社さんなどと連携できたら、とてもありがたいです」

採用については、営業人材を求めている。「今は私が一人で営業をやっているので。ITのコンサル営業で波長が合う方がいたら、ぜひ。私の代わりになってくれるような人がいるといいですね」

編集後記

30年の海外経験、プログラミングへの少年時代からの愛着、そしてコロナ禍での機転。北見氏の歩みは、計画性よりも直感と行動力に貫かれている。「失敗も多い」と繰り返しながら、その一つひとつを冷静に振り返る姿には、飾らない誠実さがあった。引退までも客観的に語れる潔さと、最先端を追い続ける好奇心。この二つが同居するところに、言葉とAIで世界に挑み続ける経営者の芯を見た気がした。

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