株式会社I.T.E.M.companyは、企業の人事担当として学校を訪問し、企業と学校のつながりを一からつくる「学校訪問代行」を主力に据える採用支援会社だ。代表の梅村康平氏は、リクルート系企業での営業経験を経て独立。全国のフリーランスと組み、北海道から沖縄までをカバーする独自の体制を築いてきた。レッドオーシャンと化した採用市場で、なぜ同社は選ばれ続けるのか。その経営哲学と、社名に込めた「出会いを大切にする」という思いに迫る。
リクルートでの修行、そして独立へ
梅村氏のキャリアは、名古屋の大学を卒業後、リクルートグループの採用媒体を扱う会社に新卒で入社したところから始まる。タウンワークやリクナビNEXTといった紙・ネット両方の媒体を営業・販売し、入社から半年ほどでチームリーダーに就任した。
その後、会社の統合再編に伴い、リクルートが弱かった静岡エリアの立て直し要員として名古屋から沼津へ異動。プレイングマネージャーとして現場に立ち続けた。
転機は2009年、リーマンショックだった。人員削減が避けられない状況のなか、梅村氏は独立を決断する。もともと入社時から「30歳で辞めて独立したい」と公言していた梅村氏にとって、29歳でのこのタイミングは決して悪くなかった。
「もともとリクルートに入る段階で、30歳で辞めますということは言っていた。修行として頑張れと言われて入社していたので」
失敗を経て、たどり着いた採用支援
独立直後、梅村氏は取引先だった静岡の事業者から誘われ、生クリームの販売事業に手を出す。しかし採用畑一筋だった梅村氏にとって畑違いの物販は厳しく、毎月赤字が続き、一年も経たずに撤退した。
「愚かにも二つ返事でやりますと言ってしまった。それが第一の失敗でした」
そこから、本来の強みである採用の領域へ立ち返る。フリーランスの採用支援者として活動を再開し、案件が増えるにつれて2013年に法人化。増える依頼に応えるための自然な流れだった。
「会社設立のときに、特に強い思いはなかった。案件が増えてきて、迷惑をかけるわけにいかないので法人化した。ただ、そこからいろんなご相談をいただくなかで、気持ちは当然増えてきました」
誰もやりたがらない「学校訪問代行」という強み
同社の主力は採用支援、なかでも力を入れているのが「学校訪問代行」だ。大学・短大・専門学校・高校のすべてを対象に、顧客企業の人事担当という立場で学校を訪問し、企業と学校のつながりを構築。そこから学生・生徒の紹介につなげていく。
この事業の強みは、二つある。一つは、そもそも「学校訪問は代行してもらえる」という発想を多くの企業が持っていないこと。もう一つは、10年以上にわたって全国で学校訪問を積み重ねてきた圧倒的な実績だ。
ただし梅村氏は、この領域が決して「おいしい畑」ではないことも率直に語る。学校訪問は成果が出るまでに半年から一年を要し、スピード感を求められる採用市場では敬遠されがちだ。加えて、全国に散らばる訪問担当者を管理する難しさもある。
「適当な人間を当てがった瞬間に、会社の信用もなくなる。人の選定とマネジメントが本当に大変なんです。だからこそ、誰も入ってこない領域でもあるんですよね」
効果がすぐには出ないアナログな世界。だからこそ競合が少なく、同社の10年以上の蓄積が確かな参入障壁となっている。
社名「ITEM」に込めた、出会いへの思い
同社の価値観は、社名の由来に凝縮されている。当初「一期一会」という社名を検討していた梅村氏は、これを英語化した「I Treasure Every Meeting(すべての出会いを大切にする)」の頭文字から「ITEM」という名を導き出した。
「お客様との出会いもそうだし、僕らのご支援を通じて応募してくれた人、採用された人、入社した人の出会いも大事にしたい。目の前にいる人たちを幸せにする。それが僕のやりたいことです」
この哲学は、組織運営にも貫かれている。梅村氏が掲げるのは「フリーランスファースト」。現場を担うフリーランスや社員が働きやすい環境を整えることが、結果として顧客の課題解決につながると考えている。人事という職種で独立する不安を知るからこそ、「いつでも案件がある状態にしてあげたい」と、フリーランスの生活を支えることにも心を配る。
当事者意識を持てる人と働きたい
採用支援は、顧客企業の内部深くに入り込む仕事だ。だからこそ梅村氏が一緒に働く仲間に求めるのは、「当事者意識」に尽きる。
「外部の人間だからこそ、お客様の従業員なんだという気持ちを持って動いてほしい。自分が採用支援に入ることで会社の業績が上がっていく、それを嬉しいと思ってくれる人と一緒にやりたいですね」
外部の立場でありながら、他人事にしない。その姿勢こそが、同社の信用を支えている。
3年後、10億へ
今後の展望として、梅村氏はフリーランス層のさらなる拡充を最重要課題に挙げる。案件が急増するなか、質の高い人材をいかに継続的に確保するかが問われている。当事者意識を持てる人材を見極めながら、ネットワークを厚くしていく考えだ。
数値目標としては、3年後に売上10億円を掲げる。さらに、食品などの商品モニター事業という新たな柱の立ち上げも進行中だ。
採用市場が「レッドオーシャンどころか灼熱のマーケット」と化すなか、学校訪問という独自の切り口と、出会いを大切にする哲学を武器に、同社は着実に歩みを進めている。とりわけ高校生採用の支援には自信を見せる。目の前の一つひとつの出会いを丁寧に紡ぐその姿勢が、これからの成長を支えていくはずだ。
会社概要
- 会社名:株式会社I.T.E.M.company
- 代表者:梅村康平
- 事業内容:採用支援(学校訪問代行を中心とした企業の採用支援)
- 創業:2013年(法人化)
編集後記
畑違いの物販での失敗、パートナーの独立による売上減、営業代行への多額の投資が実らなかった日々。梅村氏の歩みは決して平坦ではなかった。それでも「目の前の人を幸せにしたい」という一点を軸に、誰もやりたがらない領域で10年以上を積み重ねてきた。当事者意識という言葉に宿る誠実さが、灼熱の採用市場で同社が選ばれ続ける理由なのだと感じた。
