Anomaly株式会社は、製造業に特化した業務用Webアプリケーションを開発し、サブスクリプションで提供するスタートアップだ。代表の駒田勇貴氏は、製造業メーカーで15年間営業に携わったのち、AIを最大限に活用する「AIネイティブ」な体制で会社を立ち上げた。開発から営業まですべてを一人で担う異色の経営者に、その哲学と描く未来を聞いた。
15年の製造業営業から、AIネイティブ企業の起業へ
駒田氏のキャリアは、製造業メーカーの営業職として始まった。15年にわたり現場に立ち、最後の3年間は営業部長としてマネジメントを経験する。その3年を区切りに独立を果たした。
「両親や親戚が自分で事業をやっている家系だったので、どこかのタイミングで独立しようというのは決めていました。ただ、会社を運営するにはマネジメントがどうしても必要なので、3年やってから独立しようと」
もう一つの大きな後押しが、AIの進化だった。「2025年ぐらいから、特にシステム開発やコーディングに関してAIの能力が爆発的に上がった。少人数の体制でもシステム開発ができる環境になったことが、大きなきっかけでした」。営業畑を歩み、自身は「マクロを触るぐらい」だったという駒田氏が、自らアプリを開発するに至った背景には、この技術の転換点がある。
製造業に特化した、共存共栄のシステム提供
数ある領域の中で製造業を選んだのは、駒田氏自身が現場で課題を肌で感じていたからだ。「システム開発を幅広くやろうとすると特色がない。もともと製造業にいたので、複雑な業務プロセスや課題感が見えていました」。人手不足、専門性を要する複雑な工程、そして属人化しやすいという構造的な課題。そこに解決策を提案できると考えた。
顧客は中小の製造業を中心に、製造業から仕入れて販売する流通商社が続く。掲げるキーワードは「共存共栄」だ。
「高額なシステムを導入して終わり、ではありません。導入いただいたお客様が使いながら手軽にカスタムでき、より使いやすいものを、なるべく低価格で導入できる。そういう設計に落とし込んでいます」
一人ですべてを担う、立ち上げの苦労
「AIネイティブな会社を作りたかった」と駒田氏は言う。従業員を雇わず、人件費を製品コストに極力乗せない。その理想を貫くために、あえて一人での運営を選んだ。だが、その道は平坦ではなかった。
「一人で全部やるのはやっぱり厳しくて、分からないことだらけでした。社内インフラを整える、ホームページを充実させる——こういったことは、なかなか売上に直結しません。売上が上がらない期間、大丈夫かなという不安はかなりありました」
本格的な営業を始めたのは今年の春から。前職で培ったコネクションを活かしたオフラインのアウトバウンド営業が主軸だ。「ただ、それだけだと人脈のストックが尽きる可能性がある。今はホームページからの流入、インバウンドもうまく取り込めるよう、マーケティングを並行しています」
求める仲間と、これからの体制
現在は一人だが、駒田氏は採用も視野に入れている。営業から開発、契約までをAIの活用で一人でこなせているが、抱えられる顧客数には限りがある。「一人で15社ほどを抱えられる状態と仮定して、月2社ずつ獲得していく。そのペースなら、いずれ次の採用を始めるタイミングが来ます」
求める人物像は明確だ。「製造業の営業経験があって、システムを少しかじっている人。冒険心を持って、立ち上げ期の会社に飛び込んでくれる方」。経験値を重視し、30代以上を念頭に置く。狭き門ではあるが、その分、事業への理解と覚悟を共有できる仲間を求めている。
「Anomaly株式会社だよね」と言われる存在へ
2期目を迎え、駒田氏が改善に取り組むのがシステム導入までのスピードだ。「要件定義からデモ版、トライアルと進むと、リード獲得から契約までがどうしても長くなる。一人で回していると、その分キャッシュフローが厳しくなる。ここを短くしていきたい」
事業の軸は、あくまで製造業一本。流通商社という顧客層を持ちながらも、そこから外れるつもりはない。「軸をずらすとブランディングもぶれてしまう。自分は製造業しか知らないという強みもあるので、ここはぶらさずにやります」
目指すのは、揺るぎないポジションの確立だ。「中小の製造業で業務系のシステムを作るなら『Anomaly株式会社だよね』と言われるぐらいの認知度とブランディングを築いていきたい。それが目標です」
会社概要
- 会社名:Anomaly株式会社
- 代表者:駒田勇貴
- 事業内容:製造業に特化した業務用Webアプリケーションの開発・サブスクリプション提供・運用支援
- 創業:2025年7月
編集後記
営業一筋のキャリアを歩んできた経営者が、AIを手にシステム開発の領域へ踏み出す——駒田氏の起業は、まさに時代の転換点を象徴している。一人という体制を「理想」として選び、その苦労も率直に語る姿からは、身の丈に合った誠実な経営への意志が伝わってきた。「共存共栄」を掲げ、顧客とともに使いやすさを育てていくその姿勢は、人手不足に悩む製造業にとって心強い伴走者となるだろう。
