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FAXの注文を、事務員が1件ずつ手で打ち直す——木材建材の受発注に「最後の一手間」を残したまま、入力だけを消す

株式会社アクトブレイクは、木材・建材の卸売業者向けに受発注業務の効率化を手がける会社だ。FAXや電話で届いた注文を、事務員が1件ずつ手で打ち直す——この作業を消すことに、代表の細田寛人氏は取り組んでいる。数十社の卸売業者に直接ヒアリングを重ねて業務フローを把握し、金融機関のシステム設計で培った品質基準を持ち込む。ただし、人間の確認だけは省かない。AIで便利になった時代だからこそ「最後の一手間」を大切にする、その経営哲学を聞いた。

目次

15年の会社員経験から、独立へ

細田氏のキャリアは一貫してIT業界にある。大学卒業後、15年間を会社員として過ごし、業務の整理・設計からシステムの導入・リリースまでを担ってきた。その後フリーランスを経て法人化し、株式会社アクトブレイクは現在3期目を迎える。

独立の背景には、業界構造への問題意識がある。細田氏がキャリアをスタートさせた大手SIerは、建築業界でいえばゼネコンにあたる立場だ。そこから一次、二次、三次と下請けが連なり、最末端の技術者に仕事が流れていく。

「フリーランス時代に、その末端の立場を経験しました。中間の会社が手数料だけ抜いて、責任は下に押し付けられる。あの構造の逆をやろうと決めたんです」

自分の裁量で、最後まで自分が責任を持つ。それが会社を立ち上げた理由だった。

手書きのFAXが、いまも現役の業界

現在の主力事業は、木材・建材の卸売業者に特化した受発注業務の効率化だ。

この業界では、注文がいまも手書きのFAXで届く。事務員がそれを目で読み、販売管理システムに品番・数量・納期を1件ずつ手で入力する。1件あたり10分近くかかることも珍しくない。

「注文が多い日は、入力だけで午前中が終わってしまう。それが何十年も当たり前として続いています」

細田氏が手がけるのは、この入力作業をAIに任せる仕組みだ。FAXは紙ではなくPDFで受け、AIが品番・数量・納期を読み取って下書きを作る。事務員の仕事は「入力」から「確認」に変わる。1件10分かかっていた作業が、1分程度に短縮された例もある。

自社パッケージを売るのではなく、まず顧客の業務をヒアリングして課題を特定し、既存製品の導入と一部のオーダーメイド開発を組み合わせる。「ツールありきではなく、業務の棚卸しから入る」のが細田氏のやり方だ。

値踏みされた悔しさから、一業態への集中が始まった

この業界に関心を持ったきっかけは、住まいの近くで始まった大規模な建て替え・解体工事だった。調べてみると、アナログな事務作業が大量に残り、効率化の余地が最も大きい領域だとわかった。

そして、腹が決まった出来事がある。

まだ自分で電話をかけて営業していた頃、ある木材卸の社長とつながった。返ってきた言葉はこうだった。

「実績を積んでちゃんとできたら、仲間が集まったらまた提案してきてよ」

ニーズはある。しかし値踏みされている。

「まずは一業態、木材・建材で実績を作ってやろうと決めました」

以来、対象を広げずに実績を積み重ねている。将来的には他業界への展開も構想にあるが、いまは立ち上げのフェーズと割り切り、この一点に集中する姿勢を貫く。

顧客は東京近郊よりも、地方に本社を置く企業が多い。役員に高齢の方が多く、初回はオンライン商談から入ることが多いという。工事現場、施工会社、木材建材の卸売業者は、地元のネットワークで強く結びついている。その輪にどう入っていくか——細田氏はいま、その一点に営業のエネルギーを注いでいる。

数十社への直接ヒアリングと、金融機関品質

アクトブレイクの強みは、大きく2つある。

ひとつは、業界への理解の深さだ。細田氏はこれまで数十社の木材・建材の卸売業者に直接連絡を取り、現場の業務フローを聞き続けてきた。工事現場からどのような形で注文が飛んでくるのか、どの工程で時間が溶けているのか、誰が何に困っているのか。この一次情報が、提案の土台になっている。

「ツールを売る人ではなく、業務を知っている人でありたい。実際に何十社も話を聞いているから、業務の流れを分かった上で設計できます」

もうひとつは、システム設計の品質だ。細田氏はかつて大手SIerで、銀行・証券・カード・保険といった金融機関のシステムを手がけてきた。セキュリティやガバナンスの要求が極めて厳しい環境で培った設計・導入の水準を、中小企業の現場にそのまま持ち込む。

現場から集めた一次情報と、金融機関水準の設計品質。この2つが、アクトブレイクの提案を支えている。

AI時代だからこそ、人間の「最後の一手間」を

経営で細田氏が最も大切にしているのは、「最後の一手間を惜しまない」ことだ。

生成AIが急速に広がり、記録の構造化や要約はAIの方がはるかに速い時代になった。だからこそ、細田氏は人間の確認を省かない。

受発注の自動化においても、FAXやメールで届いた注文を単純に別システムへ流し込むことはしない。必ず事務員が最終確認するフローを設計する。

「誤発注で、長年お付き合いのある得意先に迷惑がかかることだけは絶対に避けたい。だから最後は必ず人の目を通します」

全自動を売りにする方が、見た目には派手だ。それでも細田氏が確認工程を残すのは、卸売業にとって取引先との信頼が事業そのものだと知っているからだ。

この姿勢は、今後一緒に働きたい人物像にも重なる。AIに丸投げせず、その結果をきちんとレビューし、AIを使いこなせる人と仕事をしたいと細田氏は語る。

3〜5年後に目指す組織

中長期の構想について、細田氏は「まだ解像度は低い」と前置きしたうえで語る。

IT人材の仕事は、単純な作業領域から順にAIに置き換わりつつある。だからこそ、これから必要なのは「人と話し、悩みを引き出せる人材」だという。

「システムを作れる人より、お客様の困りごとを聞き出せる人がこれから貴重になる。そういう人材を社内で育てていきたい」

事業規模を引き上げ、組織の基盤を整えて、細田氏自身が営業の最前線から離れられる構造をつくること。それが3〜5年の目標だ。

その視線の先には、業界構造への問題意識がある。多重下請けの中で「手数料だけ抜かれて責任は押し付けられる」構造を、細田氏は自ら経験してきた。AIやテクノロジーの進歩、法整備によって、そうした構造が改善されていくことに期待を寄せる。

まだ業界に影響を与える規模ではない、と細田氏は謙虚に語る。それでも実績を積み上げ、少しでもその変化に寄与できる存在になることを目指している。

会社概要

  • 会社名:株式会社アクトブレイク
  • 代表者:代表取締役 細田 寛人
  • 所在地:東京都中央区京橋3丁目9-10-1301
  • 設立:2024年1月
  • 事業内容:木材・建材の卸売業者向け受発注業務の効率化(FAX・電話受注のAI自動化、業務設計、システム導入・オーダーメイド開発)
  • Webサイト:https://actbreak.co.jp/
  • お問い合わせ:hiroto.hosoda@actbreak.co.jp

編集後記

多重下請けの最末端で「手数料だけ抜かれて責任は押し付けられる」立場を経験したことが、細田氏の出発点にある。中間に逃げず、自分で最後まで見る——その決意が、いまの事業の形になっている。

AIが何でも高速に片づける時代に、あえて「人間の最後の一手間」を経営の芯に据える。それは効率を捨てているのではなく、卸売業にとって最も大切な取引先との信頼を守るための設計だ。

数十社の現場に自ら足を運び、話を聞き続けてきた蓄積と、金融機関水準の設計品質。その両方を携えて業界に向き合う細田氏の歩みを、これからも見守りたい。

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