株式会社SPIRITSは、スタートアップから大手ベンチャーまでを対象に、採用支援と営業支援を手がける会社だ。代表取締役の三澤知史氏は、戦略設計から現場での実務実行までをベタ張りで伴走する。IT・人材業界を中心に、知人経由のご相談ベースで支援先を広げてきた同氏が大切にするのは「信用信頼」。本記事では、独立の背景から、組織づくりの現在地、そして貿易と日本の伝統文化を絡めた海外展開の構想までを聞いた。
学生時代からの独立志向と、「いい仲間といい仕事を」
三澤氏のキャリアは、同志社大学卒業後に入社したレバテック株式会社から始まる。大阪支店の立ち上げに携わり、2社目の株式会社揚羽で企画営業を経験したのち、独立した。
もっとも、独立という選択は突然のものではなかった。「もともと大学生の時から独立しようと思っていました」と三澤氏は振り返る。学生時代にはアパレルブランドを自ら立ち上げ、業務委託でセールスの仕事も請けていた。
独立の直接のきっかけは、働く相手への思いだった。「いい仲間といい仕事がしたいと思ったときに、自分自身で、同じ思いを持った人たちと一緒に仕事をしたい」。そうして5年前、三澤氏はSPIRITSを立ち上げた。
採用支援と営業支援——現場で掴む「肌感」が強み
現在の事業の柱は、採用支援と営業支援だ。スタートアップから大手ベンチャーまで幅広く支援し、顧客はIT業界と人材業界が中心を占める。これまで自身が身を置いてきた領域が、そのまま顧客層とも重なっている。
三澤氏が強みとして挙げるのは、専門性と「現場の肌感」だ。 「戦略・戦術の設計といったコンサルティング領域にとどまらず、実際に現場へ入り、実務の遂行まで一貫して支援しています」 長年にわたり現場の第一線に立ち続けてきたからこそ、市場の変化やトレンドを、数字や情報だけでは捉えきれないリアルな空気感とともに把握できるという。 支援スタイルは、クライアントの現場に深く入り込み、密接に伴走するかたちが基本だ。 上場企業の子会社であるスタートアップでは、戦略設計から実務の実行までを支援。人材業界のベンチャーでは、チームを組成し、事業推進に伴走している。 「こうした現場密着型の支援は、今後も事業の軸として続けていきたい」と三澤氏は語る。
順風のなかにある課題は、「自分が現場に出続けること」
代表就任からの歩みについて、三澤氏は「苦しかったことは正直あんまりない。楽しいが先行している」と笑う。ある種、順風満帆にここまで来たという実感がある。
一方で、クライアントワークゆえの課題も明確だ。「自分自身が現場に出ることが多くなってしまっている」。この属人性をどう解くか——組織の仕組み化が、いまの最大のテーマだという。
そのために、三澤氏は採用を強化している。集客はリファラルが基本で、「知り合いの知り合いが一番信用できる」という考えのもと、イベントや食事会を積極的に開き、転職相談を通じて一緒に働きたい人をリクルートしてきた。これまで業務委託中心だった体制から、今期は正社員採用にも踏み出す。狙う職種は法人営業・個人営業・営業事務(バックオフィス)の三つで、就業形態は本人の希望に合わせる方針だ。
判断軸は「3〜5年の時間軸」、大切にするのは信用信頼
経営で大切にしている価値観を問うと、三澤氏は「信用信頼」と即答した。「仕事において信用信頼は、少しでも失うと取り返すのが難しいし、時間がかかるもの」。だからこそ自らそれを大切にし、一緒に働く人にも同じ価値観を求める。
意思決定に迷ったときの判断軸も、この価値観と地続きだ。「短期で見たときの良し悪しではなく、中長期、3年5年という時間軸で、その意思決定が正しいのかを見て決めることが多い」。目先ではなく、時間軸のなかで問う——それが三澤氏の一貫した姿勢だ。
5年後の売上10億円、その先に見据える海外への挑戦
三澤氏が描くロードマップは明快だ。「5年後までには売上10億円くらいは行きたい」。その実現に向けて、人材事業ではセールス部隊を配置して売上を拡大しつつ、もう一つの柱として海外展開を見据える。
海外構想の核にあるのは、貿易と日本の伝統文化だ。「貿易や日本の伝統文化に自分自身のルーツもあり、すごく興味がある」。日本酒や伝統工芸といった「日本のいいもの」を発信し、他国へアプローチできる仕組みをつくりたいという。対象はアジア全般を視野に入れ、個人的な関心の強い中東も含めて模索している段階だ。国によっては販路が見え始めているといい、開拓の余地はまだ大きい。
一方、足元の課題として三澤氏が挙げるのが、人材事業における候補者リードの獲得だ。法人側のリードは一定数が取れている実感がある一方、候補者の流入を増やす仕組み化が追いついていない。「そこは今、やらなければいけないと認識している課題」だと語る。
三澤氏が目指す姿は、支援者としての「想起される存在」だ。「困ったらSPIRITSだよね、と思い浮かべてもらえる存在になりたい」。自社で解決できる課題はもちろん、そうでない場合も、支援先と共につくる経営者コミュニティや自身の人脈を通じて、解決できる会社を紹介できる。「困ったときに弊社を思い浮かべていただけるように」——その一言に、三澤氏の事業観が凝縮されている。
会社概要
- 会社名:株式会社SPIRITS
- 代表者:代表取締役 三澤知史
- 事業内容:採用支援・営業支援(IT・人材業界を中心に、スタートアップから大手ベンチャーまでを伴走支援)
- 設立:2021年5月
編集後記
「苦しかったことはあまりない。楽しさのほうが勝っている」——そう語る三澤氏の言葉からは、学生時代から独立を見据え、信頼できる仲間と仕事を選び取ってきたからこその、自然体の余裕がにじむ。一方で、その根底にあるのは、「信用・信頼」を何よりも重んじる真摯な姿勢だ。自ら現場に立ち続けているからこそ、目の前の課題から逃げることなく、組織の仕組み化や海外展開へと着実に舵を切っている。困ったときに、経営者が真っ先に思い浮かべる存在へ——。三澤氏の挑戦は、これからさらに厚みを増していく。
