大阪の中小企業を、お金の面から支えたい――。藤原公認会計士事務所の所長・藤原祥孝氏は、長年の監査法人勤務で培った専門性を携えて独立し、税務申告から創業融資の支援まで、経営者の「入り口」に寄り添う。本記事では、大企業の監査から中小企業支援へと軸足を移した藤原氏の歩みと、「同じ土俵に立つ」という姿勢に流れる哲学を伺った。
監査法人から、中小企業の現場へ
神戸大学を卒業する前年に公認会計士試験に合格していた藤原氏は、卒業と同時に監査法人へ入所した。以来、シニアパートナーに至るまでキャリアを重ねる。
転機となったのは、独立して個人事務所を開いたことだった。もっとも、その決断の底には以前からの実感があったという。
「外形監査で大企業を相手にするよりは、中堅とか、そういう企業を相手にしている方が、自分としても面白かった」
大阪は中小企業の街だと藤原氏は言う。大それた日本経済ではなく、まずは足元の大阪経済を活性化させたい。そのためには中小企業が元気にならなければならない――。その思いが、独立後の事業の原点となっている。
「お金」に着目し、創業の入り口を支える
中小企業を支援するにあたり、藤原氏が着目したのが「お金」だった。会社にとって大事なのは人と物、そしてお金。人や物には専門性を発揮しにくいが、資金繰りであれば、これまでの経験をそのまま活かせる。
「どんぶり勘定なところが、やっぱり中小企業というのは多い。そこでいろんな支援ができるのかな、と」
とりわけ力を入れているのが創業融資の支援だ。サラリーマンから独立する人の多くは、銀行との付き合いをほとんど経験していない。どこへ行けばいいのか、どんな資料が必要で、どう受け答えすればいいのか――その不安に寄り添うことができる。
公認会計士と税理士の両方を登録している藤原氏は、創業融資から税務申告まで、事業の立ち上がりを一貫して支える。加えて、日々かかってくる相談にも自分のできる範囲で応じ、専門外であれば適切な相手へ橋渡しする。
「解決するかどうかは別として、悩みの打ち明け場所的な立ち位置でやらせてもらおうかな、と思っています」
「同じ土俵に乗る」という流儀
競合との違いを尋ねると、藤原氏は「特別なものはない」と率直だ。金融機関との付き合い方についてアドバイスはできるが、それも他の事務所が手掛けていることだと控えめに語る。
そのうえで、自分らしさとして挙げたのが「話しやすさ」だった。
「上辺だけの話をするというのは、大の苦手なんで。腹割って、ぶっちゃけの話をしようぜ、というスタンスの方が自分にとってはいい」
会計士が偉そうにしていて、こんなことを聞いたら怒られるのではないか――そんな雰囲気は自分にはない、と藤原氏は考えている。この姿勢を象徴するのが、前職時代の忘れられない一言だ。ある会社の社長がミーティング中にふと漏らした。
「あんたと喋ってたら、つい本音で喋ってまうわ」
横にいた常務は嫌な顔をしていたというが、藤原氏にとっては勲章のような言葉だった。相手と同じ土俵に立ち、本音で付き合う。それが自らの目指すところだと語る。
救えなかった経験が教えたこと
苦労を問うと、「ありすぎて、どれにしようか」と笑う。監査法人には自分のクライアントがついているわけではなく、税務の実務も扱わない。独立当初は、どこから手をつければいいのかすら分からないゼロからの出発だった。
そして今も胸に残るのが、あるクライアントの破綻だ。「もう限界です、弁護士のところへ行ってきます」という電話を受け、どうすることもできなかった。
「資金繰りのお手伝いとか偉そうなことを言いながら、足元のクライアントを結局救えなかった。それは自分自身、忸怩たるものがありますね」
この経験から得た気づきは、シンプルだが重い。もう少し会社の中に入り込み、距離を縮めるべきだった――。反省を、次の関わり方へとつなげている。
事業の承継と、これからの挑戦
今後の展望について、藤原氏はまず足元を万全にすること、クライアントを着実に増やすことを挙げる。既存の税理士からの乗り換えは価格競争になりがちで無理に取りに行くのは難しい。だからこそ、既存の顧問がいない創業融資を入り口に、そのまま税務顧問へとつなげていく道を描く。
一方で、自身の年齢を見据えた構想もある。将来的には、気心の知れた税理士や事務所へクライアントごと引き継ぐ形が現実的だろうと考えている。後継者を一から育てるリスクよりも、信頼できる相手に託す方が自分には合っている、という判断だ。
新たな挑戦として関心を寄せるのがM&A支援である。とりわけ買い手側に立って、対象企業の財務内容を調査する仕事だ。
「デューデリそのものは監査法人時代に何度もやってきた。中小企業なら、ポイントだけ押さえればある程度のところは分かるのかな、と思いますね」
会社概要
- 会社名:藤原公認会計士事務所
- 代表者:藤原 祥孝
- 事業内容:公認会計士・税理士業務(税務申告)、創業融資支援、経営相談、M&A(買収時の財務調査)支援 など
編集後記
終始、飾らない言葉で語る藤原氏の姿からは、「同じ土俵に立つ」という信条が確かに伝わってきた。数字を扱う専門家でありながら、その眼差しは常に経営者の本音や不安へと向けられている。相談しやすさこそが最大の強みだと語る藤原氏は、大阪の中小企業にとって、心強い伴走者であり続けるに違いない。
