株式会社FinMark Edgeは、代表・檜山ゆりか氏がひとりで率いる経営コンサルティングの会社だ。日立製作所、ウォルト・ディズニー・カンパニーで培ったマーケティングと営業の力を土台に、デジタルマーケティングの「下流」から経営戦略の「上流」までを一気通貫で支援する。大企業のコンサルティングと遜色ない品質を、中小企業が導入できるコストで届ける——その二層の戦い方と、独立からの歩みを聞いた。
日立、ディズニー、そして独立へ
檜山氏のキャリアは日立製作所に始まる。日立アメリカへ駐在したのち帰国し、ウォルト・ディズニー・カンパニーへ転職。ここでマーケティングや営業に長く携わった。在籍期間はおよそ20年近くに及ぶ。
独立への思いは、その日々のなかで静かに育っていった。
「ディズニーにいながらも、独立してやっているデザイナーさんや、さまざまな独立された会社さんとのつながりが多かったんです。その方たちに影響されて、自分もいずれは、とずっと思っていました」
もっとも、生産設備や大きな資本があるわけではない。ならば自分にできるのはコンサルティングだろう——そう見定めたうえで、ディズニーの仕事からそのまま独立へ結びつけるのは難しいとも考えた。そこで踏んだのが、中小企業診断士の資格取得というステップだった。中小企業の社長への向き合い方を学び、ディズニーで磨いたマーケティングと営業の強みを掛け合わせる。その算段のもと、コンサルティング会社を経て独立に至った。前職からの顧客も付いてきてくれたことで、立ち上げは順調に進んだという。
上流と下流、二層で挑む
FinMark Edgeの事業は、デジタルマーケティングという「下流」と、戦略マーケティングや経営戦略という「上流」の二層で構成される。
Google広告の運用やLINE公式アカウントの設計といった戦術的な仕事は、ニーズが多い一方で単価が下がり続け、競争も激しい。そこで檜山氏が価値の中心に据えるのが、その上にある経営戦略の領域だ。
「デジタルマーケティングだけを見ているわけではなくて、その上流のマーケティング戦略や経営戦略まで入っていくんです。ただ、そこは効果が見えにくく、コンテンツとして売りにくい。だからこそ、一番苦労しているところでもあります」
集客の柱は、公的機関と紹介だ。国の機関や商工会議所など公的機関を経由して仕事が生まれ、研修講師の依頼も舞い込む。中小企業診断士という資格が、この公的機関への「パス」として効いている。とはいえ、その扉は簡単には開かなかった。登録したのは独立に先立つ時期のこと。最初の数年はほとんど仕事がなく、それでも「こういうことをやっています」と発信し続けた末に、今の状態にたどり着いた。
「リアクションが全然ないんですけど、言い続けるんです。ある種の辛抱強さが必要なところですね」
自らデジタルマーケティングを生業としながらも、檜山氏はホームページやSNSで顧客を広く集めるスタイルは採らない。事業の深部まで入り込む仕事の性質上、頼れるのは紹介だという。それでもブログは書き続けている。最新のビジネス情報を発信し、たとえば「フラクショナルCMO(必要なときだけ経営に加わる外部のマーケティング責任者)」といったニッチな概念を綴る。紹介を受けて社長のもとを訪ねる前、相手はたいていホームページを見る。そのとき記事に触れ、親和性を感じてもらう——そんな間接的な入り口として機能している。
主力の重心は、いま静かに移りつつある。
「LINE公式アカウントの設計のような細かい仕事はニーズが多いのですが、生成AIで調べれば誰でもできるようになっていく。情報の非対称性がなくなっていくので、経営戦略や戦略マーケティングという上流にちゃんと入っていかないと、と考えています。今はその途上ですね」
大企業と同じ品質を、圧倒的なコストで
同業他社との違いを、檜山氏は明快に語る。多くの事業者が「上流」に入り込めない、という点だ。
広告を一つ回すこと自体はどこでもできる。しかし、その事業に本当に広告が必要なのか。依頼された施策は、その会社の事業ポートフォリオ全体のなかで、伸ばすべき領域なのか。競合が強すぎはしないか——そこまで踏み込むのが檜山氏の流儀だ。
「全体を見渡すところから入っていくと、お客様が最初に依頼されたのとは別の場所に、本来調べるべきニーズが見つかったりする。だから顧問契約も長続きするんです」
全社を俯瞰するこうした仕事は、本来は大手コンサルティングファームの領域であり、依頼すれば相応の費用がかかる。檜山氏はそれに近い水準のサービスを、はるかに低いコストで提供している。大手の事業会社での経験やつながりからその実態を知るからこその自負だ。
「大企業のコンサルティングはチームで大きなパワーをかけますが、中小企業にはそこまでの余裕はない。やっているサービスそのもののレベルは同じだと思っています。コストは、十分の一くらいではないでしょうか」
大企業と同等の中身を、中小企業が手を伸ばせる価格で。そのコスト競争力が、いまのFinMark Edgeの明確な強みになっている。
「巨人の肩に乗る」——判断の軸
経営の岐路で何を拠りどころにするのか。問いに対し、檜山氏の答えは揺るがない。フレームワークだ。
強みと機会を生かす発想、事業ポートフォリオの捉え方、産業内での位置づけを測るファイブフォース分析——経営戦略の手法は、長い年月をかけて学者や実務家が磨き込んできた蓄積がある。
「それに従えば必ず成功する、というものではありません。経営は生き物ですから。ただ、失敗しない確率は上がるんです。大成功する方法はお伝えできなくても、大失敗しない方法はお伝えできます」
その姿勢を、檜山氏は一つの言葉で言い表す。「巨人の肩に乗る」。
「巨人とは、これまで会社を経営してきた方たちや学者が積み上げてきた知識であり、歴史であり、知恵です。そこにうまく乗る。先人たちに学ぶ。その教えそのものが、判断の軸になっています」
ひとりで続けるか、仲間を得るか
いま抱える課題も、これからの展望も、突き詰めれば一点に集約されると檜山氏は言う。人を雇うか、雇わないか、だ。
コンサルティングの実務は、事実上ひとりで担っている。「社員を雇わないの、とよく言われます」。だが人を増やせば、強みであるコスト競争力は次第に保ちにくくなり、単価も上げざるを得ない。成長と価格のあいだで揺れる、明快なジレンマがそこにある。品質を守るため、常時抱える顧客は一定数を超えないようにしている。長く伴走する顧問先に、スポットの依頼が加わる形だ。
生成AIの登場は、この構図に変化をもたらしている。かつて業務委託に任せていたデザインやLINE公式アカウントのリッチメニュー制作も、いまは自分の手ででき、むしろ忙しくなった。一方で、利益率は圧倒的に改善したという。
3〜5年のロードマップも、この分岐の上に描かれる。
プランAは、自分と同水準のサービスを提供できる人材を得て、組織を拡大していく道。プランBは、ひとりのまま顧客数を絞り、少しずつ規模の大きな相手へと移りながら単価を高めていく道だ。
「わらしべ長者のように、規模の大きなところへ変えていく。どちらの道を選ぶにしても、3年後、5年後には利益を今の2〜3倍に伸ばしていきたい。ただ、人を雇うのか一人でやるのかは、まだ決めていません」
最後に、経営者へのメッセージを尋ねた。
「上流から下流まで、経営のお困り事には何でも対応します。まずは下流のデジタルマーケティングでお迷いの会社さんも多いと思うので、コスト競争力のあるサービスを一度お試しいただきたい。私どもはそこだけでなく、必ず経営課題そのものに入り込んでアドバイスしていきます。小さなところからでも、ぜひご相談ください。一緒に成長していけるお付き合いになればと思っています」
会社概要
- 会社名:株式会社FinMark Edge
- 代表者:檜山ゆりか
- 事業内容:デジタルマーケティング支援、戦略マーケティング・経営戦略コンサルティング(フラクショナルCMO)
- 創業:2025年5月
- 対応エリア:全国(現在は製造業の顧客が多い)
編集後記
華やかな経歴を持ちながら、檜山氏の語り口はどこまでも実務的で誠実だった。フレームワークを信じ、「大失敗しない方法」を淡々と手渡す——その姿勢の裏には、大企業のリソースを持たない中小企業にこそ良質な戦略を届けたい、という静かな意志が透けて見える。ひとりで続けるか、仲間を得るか。その問いに悩む姿さえ、自らのコスト競争力と品質への誇りの表れだった。巨人の肩に乗りながら、自分の足で立つ経営者である。
