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「誰でもできる、誰もしないこと」を武器に──兵法とAIで経営者を育てる愛甲照仁

株式会社Coolonの代表・愛甲照仁は、高校時代に最初の会社を立ち上げて以来、いくつもの事業を興しては売却してきた連続起業家だ。数千年を生き延びてきた兵法を「変わらないOS」と捉え、そこに最先端のAIを掛け合わせて経営者や事業責任者を育てる。派手な資本や大きな夢を掲げるのではなく、「誰でもできる、誰もしないこと」に価値を見いだす愛甲の経営観と、その先に描く教育への志を追った。


目次

服飾の世界から、連続起業家へ

愛甲のキャリアは、日本ではなくヨーロッパから始まった。高校卒業後、イタリアの名門服飾専門学校へ進学。卒業後はイタリアで2年、フランスで2年半にわたり、ファッションデザイナーの見習いと戦略人事を並行して担った。その傍らで、職人の工房と一般の依頼者をつなぐプラットフォームサービスを自ら立ち上げ、事業として売却する経験もした。

やがて新型コロナウイルスの流行や、ハイブランドを取り巻く環境の変化が重なり、思うように仕事ができなくなる。「自分のしたい仕事が思うように行えない」と感じた愛甲は、いったん日本へ戻る決断をした。帰国後、複数のスモールビジネスを手がけながら、それらを統合する形で現在のCoolonに至る。

実は起業そのものは、はるか以前から始まっていた。高校生以来、数千万円規模の事業作り、時には売却を繰り返してきた。その原点には、経営者だった親の背中がある。「そういう親の姿を見て、かっこいいなと思っていた」。もう一つの理由を、愛甲は飾らず打ち明ける。「朝起きられないし、会社員は難しいよねと親からも言われていた。自分でやるしかないな、と」。

兵法という「OS」に、AIという最先端を載せる

Coolonの主軸は、兵法とAIを掛け合わせた経営者・事業責任者の育成だ。愛甲が兵法に着目する理由は明快である。「5000年変わらなかったものは、この先5000年も変わらない可能性が大きい。日進月歩で変化する技術を後追いするのではなく、変わらないOSの上で最先端の技術を使えばいい」。

その1つの例を上げると東洋医学の「未病」の考え方だ。病気ではないが健康でもない状態——それを会社に当てはめる。「陰陽のバランス、つまり内側の活動と外側の活動です」。人事や企画開発といった内向きの力と、広報・営業・資金調達といった外向きの力。どちらかに偏れば、良い商品も売れず、あるいは売った先で悪評に変わってしまう。「そのバランスが崩れている状態です」。

Coolonでは、時間・労力・人員・資金といった要素を約3000項目に分解し、内と外のバランスが保たれているかを一つずつ点検していく。「少なくとも体は健康、成長しなくても潰れはしない、という状態まで持っていく」。その上で、健康な肉体をどう使うか——その頭脳と精神の部分を、兵法の知見をもとに経営層へ伝えていく。愛甲が力を注ぐのは、あくまで人の成長と事業責任者の育成だ。

競合のいない領域を、紹介で広げる

Coolonが選ばれる理由を、愛甲は自社の立ち位置に見る。「兵法とAIが専門なので、業種にとらわれず幅広く対応できる」。加えて、支援対象を意図的に絞り込んでいる。自己資金で堅実に事業を営むスモールビジネス——経験と資金力を持つ大手が手を出しにくい規模帯こそが、Coolonの主戦場だ。「ちょうどそこが空白になっている。だから競合がいない」。

顧客獲得の中心は紹介である。もともと不動産やハイブランドの世界で培った人脈から、経営者のリードが自然と集まる。そこで実績を出し、信頼が次の紹介を生む。「今四半期の新規依頼の7割超が紹介」だという。支援先が成長し、新会社や新規事業を立ち上げる際に再び声がかかる——そうした好循環も回り始めている。

組織づくりも、この信頼の連鎖の上にある。社員の多くはリファラル採用で、かつて愛甲が支援した相手が独立後に集まってきたケースも少なくない。また、Coolonが運営する大学生向けのビジネススクールから、将来の起業を志す学生が業務委託として数年間の修行に加わる流れもある。

お金ではなく、「稼ぐ仕組み」を考える人

経営で大切にする考え方を尋ねると、愛甲はホームページに掲げるスローガンを口にした。「誰でもできる、誰もしないことをする」。高度な技術も莫大な予算もなくとも、価値に気づいて汗をかくことを厭わなければ実現できるビジネスがある。それを見つけ、育てることに生きがいを感じているという。

その姿勢は財務にも表れる。Coolonの自己資本比率は100%で、外部からの資金調達は一切しない。「株主から『成功確率の低いことはするな』と言われれば、夢を追うお客さんを応援する自由度がなくなる」。だからこそ、他で断られた挑戦者の最後の拠り所でありたいと考える。

創業初期の苦労も、この価値観と地続きだ。「僕には料理もプログラミングもできるスキルがない。頭と口だけで生きてきた」。アイデアは尽きないのに、実績のない若者に人はついてこない。「歯車を回し始める最初の労力がすごかった」と、ゼロからイチを生む時期の苦しさを振り返る。

そして愛甲は、自らをこう分析する。「お金自体には興味がないワーカホリックなんです。でも、お金を稼ぐ仕組みを考えるのがすごく好き」。25歳の頃、その好きなことの使い道が腑に落ちた。「やりたいけれどできない人を、できるけれど興味がない人が、安価に最初の一歩を応援すれば、世界は少し良くなる」。

稼ぐ力を、次の世代へ

3〜5年の展望として、愛甲が見据えるのは売上の拡大よりも事業の「進化」だ。その先にあるのが教育現場である。Coolonは学習塾を別事業として運営し、大学の学生ベンチャー支援や講師の役割も担っている。

問題意識は、支援の現場から生まれた。AIの活用が進み、外国人材との競争も広がるなかで、「どうやっても就職先がない」若者が現れてしまう。「普通の塾なら卒業させて終わり。でもうちはそうではありたい」。愛甲自身、今も週に一度は現場に立つ。「面倒を見たいという思いがある」。大金でなくとも、年間500万〜1000万円を自分の力で稼げるようになってほしい——その支援を、行政や教育系のNPOと連携しながら現場で広げていく取り組みを昨年から始めた。「これをもっと広げていきたい」と語る。

一方で、今の会社を手放すつもりはない。「Coolonは自分のライフワークであり、半ば趣味のようなもの」。売却は考えていないという。その代わり、売却を前提とした事業は別に用意している。1年刻みで売り時を迎えられるよう、14の国で14の事業を進めているというから、その事業観のスケールは尋常ではない。

会社概要

  • 会社名:株式会社Coolon
  • 代表者:愛甲照仁
  • 事業内容:兵法とAIを活用した経営者・事業責任者の育成、幹部研修。遊休不動産の収益化事業・経営コンサルティング(学習塾・学生ベンチャー支援などの教育事業を含む)
  • 設立:2019年12月
  • 従業員数:11名
  • 売上規模:非公表

編集後記

「お金には興味がないけれど、お金を稼ぐ仕組みを考えるのが好き」——愛甲照仁の言葉は、一見矛盾しながら不思議と一本の芯が通っている。兵法という数千年の知恵をOSと捉え、その上に最新のAIを載せる発想も、変化の速い時代だからこそ「変わらないもの」に立ち返る逆説だ。取材の終盤、愛甲は人生を川面に浮かぶ葉っぱにたとえた。互いに一辺しか見えないまま比べ合うが、長い川を下るうちに違う辺が巡ってくる——だから比較に囚われず進めばいい、と。稼ぐ力を次の世代へ手渡そうとするその視線は、静かに遠くを見ていた。

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