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「苦しくない検査」を、下町の人の身近に

東京下町おなか内視鏡クリニック 葛飾金町院の院長・三井智広氏は、胃カメラ・大腸カメラを専門とする内視鏡医だ。がん専門の医療機関で数多くの検査・治療に携わった経験をもとに、「苦しくない、質の高い内視鏡」を地域の人々の身近な場所で提供したいと開業に踏み切った。下町に生まれ育った医師が語る、医療を志した意外な経緯と、これからの展望を聞いた。

目次

高校三年からの、遅めのスタート

三井氏は葛飾区・江戸川区・足立区といった東京の下町で生まれ育った。公立学校に通い、地元で過ごした少年時代。両親が薬剤師だったこともあり、医療系は身近な選択肢としてあったという。

とはいえ、幼い頃から医師を志していたわけではない。高校では野球に打ち込み、進路を本格的に考え始めたのは高校三年生になってからだった。

「将来どうするのってなって、ちょっと医学部目指してみますみたいなことを言ったら、大反対されて」。三井氏の出身校からは、それまで医学部に進んだ人が一人もいなかった。周囲からは無理だと言われながらも、まずは一年、腰を据えて勉強してみることになった。

浪人時代に通った予備校での出会いが、三井氏を大きく変えた。

「一緒に浪人した人たちが、とても人間的にいい人たちで。こんな人たちがいっぱい世の中にはいるんだなと思って」。熱心に教えてくれた講師たちのもとで、学力だけでなく人間的にも成長できたと振り返る。その一年を経て、医師になる以外の道は考えられなくなっていた。

がんセンターで見た「もっと早ければ」

三井氏の専門は、胃カメラや大腸カメラで病気を見つけ、治療すること。がん専門の医療機関で研鑽を積み、質の高い検査・治療の技術を身につけてきた。

しかし、専門機関には「敷居の高さ」がつきまとう。多くの患者は病気が見つかってから、紹介を受けて初めて訪れる。そうした人たちと接するなかで、三井氏は繰り返し同じ言葉を耳にしてきた。

「必ず『もっと早く受けておけば』とか、『こんなに苦しくない検査なら、もっと早くできたのに』っていうのを、たくさん耳にするんですよね」

内視鏡は「痛そう」「苦しい」というイメージから、受診のハードルが高い検査でもある。だが、適切な技術で丁寧に行えば、苦しくなく、見逃しも少なく実施できる——。そう考える三井氏は、質の高い検査を患者のより近くで提供することで、病気を早く見つけ、早く治療につなげたいと開業を決意した。

苦しくない、質の高い内視鏡を

同院がメインに掲げるのは、「苦しくない、質の高い胃カメラ・大腸カメラ」だ。

胃カメラと大腸カメラには、直接見て、その場でポリープなどを取れるという大きな利点がある。「がんになる前に取ってあげれば、がんになることはない」。検査と予防を同時に行える点に、三井氏は内視鏡の価値を見出している。

一方で、辛さというデメリットがハードルになってきた。だからこそ、そのデメリットを取り除いたうえで検査を広めることに力を注ぐ。

「ここだと苦しくなくできるって聞いたから来ました、という人がたくさんいらっしゃる」。不安を抱えて訪れる患者に安心して検査を受けてもらい、もし病気があれば早期に見つける。その積み重ねが、地域の人々の健康を支えていく。

経営者として、スタッフとともに

数多くの検査をこなしてきた三井氏にとって、開業後の一番の課題は、検査そのものよりも「経営者」としての役割だった。

「今まで自分のやる検査だけやっておけばよかったけど、そうじゃなくて。採用する側として、スタッフとも接しなくちゃいけない」。人と向き合うことの難しさを実感しながらも、「うちのスタッフはみんな本当にいい人たちばかりで、だいぶ助けられている」と語る表情には、確かな信頼がにじむ。

同院では、院長が細かく指示を出すのではなく、「苦しくない質の高い検査を安心して提供する」という理念に沿って、スタッフ自身が考え、より良い方法を選択していくスタイルをとる。検査件数が増えるにつれて運用も変えていく必要があるため、自主的に改善を考えられる人が欠かせない。

一緒に働きたい人物像を尋ねると、答えはシンプルだった。「向上心があって、笑顔が素敵な人ですね」

下町から、内視鏡の常識を変える

中長期の目標について、三井氏は「街を制覇する」という言葉を掲げる。ただし、その実現には理念に賛同する医師の存在が不可欠であり、拡大を急げば質が落ちてしまう。「質を担保しながら、焦らず広げられたら広げる」という姿勢を崩さない。

都心には質の高いクリニックが集まる一方、下町では検査への関心がまだ高くないと三井氏は見る。だからこそ、地元である下町にこそ、苦しくない質の高い内視鏡を届けたいという思いは変わらない。

内視鏡はまだ十分に普及していない、というのが三井氏の実感だ。「苦しくないんだよ、ということと、予防して取ってあげられるんだよ、というのを、もっともっと広められるといいなと」。将来的には各エリアに拠点となる内視鏡クリニックが根づく時代が来ると見据え、そのなかで一人でも苦しまない患者が増えることを願っている。

最後に、経営者の読者に向けてメッセージを求めると、三井氏はこう語った。検査を受けたことのない従業員がいれば、ぜひ胃カメラ・大腸カメラを勧めてほしい——。特に40歳を超えて受ける便潜血検査で陽性が出た場合、放置せず必ず検査を受けてほしいと呼びかける。現状では3〜4割の人が陽性を放置しているというデータもあり、そのままがんに至ってしまうケースがあるからだ。

「一度、胃カメラ・大腸カメラを受けてください」。その一言に、地域の健康を守りたいという医師の思いが込められている。

会社概要

  • 会社名:東京下町おなか内視鏡クリニック 葛飾金町院
  • 代表者:三井智広
  • 事業内容:内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)を中心とした診療
  • 所在地:東京都葛飾区金町

編集後記

医師を志したのは高校三年生から、という三井氏の歩みは、決して典型的なエリート像ではない。だからこそ「もっと早く受けておけば」という患者の後悔に真摯に向き合い、検査のハードルそのものを下げようとする姿勢に説得力がある。技術者から経営者へと役割を広げながら、スタッフとの関係に誠実に向き合う人柄も印象的だった。下町から内視鏡医療の常識を変えようとするその挑戦を、これからも見守りたい。

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