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払い先を変えるだけ――ビジネスの不均衡を正し続ける、高田代表の経営哲学

ITエンジニア派遣事業を16期にわたって経営した経験を持つ連続起業家、Multiフェイスホールディングス合同会社の高田代表。「難しい話じゃない、払い先を変えるだけ」と涼しい顔で語る同氏が、営業・採用・人材育成という三つのフィールドに次々と仕掛ける新サービスの全容と、経営に通底する”平等”の哲学に迫る。


目次

エンジニア派遣16期――その経験が教えてくれたこと

Multiフェイスホールディングス合同会社が掲げる社名の意味は、そのまま経営戦略を示している。「マルチフェイス=いろんな顔」。業種を絞らず、”こんなのあったらいいな”というサービスを次々と生み出していこう――そんな意志のもと、高田代表は2社目の創業に踏み切った。

前職ではSES(ITエンジニアの派遣)事業を16期にわたって経営。事業売却を経て現会社を立ち上げた。「SESという業態そのものに縛られるより、いろんな人と関わりながらもっと自由に動ける器を作りたかった」という思いが、ホールディングス型のスタートという選択につながった。


本気の営業だけが通る窓口――「ReachUp」の設計思想

現在の主力事業のひとつが、法人向けWebサービス「ReachUp(リーチアップ)」だ。一言で表すと、「本気の営業マンと、本気なら聞きたい決裁者をつなぐプラットフォーム」。その仕組みはシンプルにして独特だ。

営業会社は、決裁者との面談に対して料金を支払う。その金額から手数料20%分が上乗せされた額が営業会社に請求され、差引後の報酬が決裁者に渡る。決裁者側の利用は無料だ。

「決裁者は時間を使っているのに対価がない。これはアンバランスですよね。営業代行に払うお金をそのまま決裁者に払えばいい、という方向性を変えているだけなんです」。

各社のホームページに埋め込むかたちで展開するため、登録されるのは実在する企業の実在する決裁者のみ。なりすましが構造的に生まれにくい点が最大の強みだ。さらに面談後に双方が相互評価(1〜5段階)を行う仕組みも備え、低評価の決裁者は次の営業マンが事前に回避できる。現在の導入社数は約100社。

もうひとつの機能として、ReachUpをホームページに設置することで、通常のお問い合わせ窓口と営業窓口を物理的に分離できる。「うちですらインフォに大量の営業メールが来る。お客様の連絡が埋もれてしまうのは本当に困る、という声は多い」。煩雑な営業DM対策としても導入が進んでいる。


面接するだけで報酬が出る求人サイト――「Voyager Carrier」

2026年7月にリリース予定の求人サービス「Voyager Carrier(ボイジャーキャリア)」も、ReachUpと同じ哲学から生まれた。

求職者が面接を受けるだけで最低5,000円からの報酬を受け取れる、という仕組みは、業界でもほぼ前例がないという。「今まで求職者はタダで面接を受けてきた。時間を使っているんだから、対価はあってしかりでしょ」と高田代表。

企業側のコスト構造も合理的だ。月額2万円のサブスクリプションに面接報酬を加えるだけで、採用コストを採用実績に連動させて管理できる。大手求人サイトの固定費型と異なり、採用できた人数で割ったコストが透明化されるのが特徴だ。

「お金目的で面接に来ることで、良い企業との出会いが生まれる。企業側も固定費を払い続けてゼロ採用、という悲劇がなくなる」。採用の場における上下関係についても高田代表は一言。「採用されるまでは、求職者がそんなに下から行かなくていいと思うんですよ」。


人間力を育てる学生団体「シンクルーキャンパス(SynCrewCampus)」

もうひとつ、高田代表が約1年半にわたって運営を続けているのが学生団体「シンクルーキャンパス」だ。運営自体は学生に任せ、学生同士が壁打ちを繰り返しながら成長する場を設けている。

「AIが進む時代に、学力以外の要素として人間力が必要になる。学力は学校に任せて、人間力の育成団体が今後必要になるだろうと思った」。東大や慶應などの名門大学が学力を担うように、人間力育成の専門的な場を作ることが目的だ。事業収益とは異なる動機で運営しているが、「私の老後のためにもなると思っています(笑)」と高田代表は笑う。


「自由」を軸にした組織のかたち

現在の従業員数は約15名。組織運営で高田代表が何より大切にするのは「自由」だ。「縛られたくないから、縛りたくない」という言葉がその本質を表している。

日報は廃止。全体会議も「来たくないと言ってくる社員がいる」と苦笑いしながら、無理に強制しない。昇給の交渉はウェルカムだが、「なんもしてないから給料を上げてくれ、というのはさすがにお断りします。ただ、理由とロジックがきちんと示せれば前向きに考えます」。

前職ではMAX40名弱の組織を経験した。「頑張りたいやつが手を挙げたら任せればいい、それだけです。ただ手を挙げたがるやつは大体危ない(笑)。やりたいこととできることは違うので」。経験に裏打ちされた、飄々とした人の見方が垣間見える。組織の拡充はサービスの伸びに応じて考えるというスタンスで、「今はまだ種まき段階」と言い切る。


出口はM&A、逆説のビッグデータ戦略

3〜5年先の展望を問うと、答えはシンプルだった。「サービスが受け入れられれば勝手にでかくなる。出口はM&Aです」。各サービスの売却を最初から設計に組み込んでいる。

ReachUpの最終価値はビッグデータだと高田代表は見立てる。「どこの会社のどの決裁者が、今どんな営業を受け付けているか」が蓄積されれば、それは営業データとして唯一無二の資産になる。そのデータを最も欲しがるのは――逆説的にも――営業代行会社だ。

「もともとは営業代行の存在が非効率だと思って始めたサービスなんですが、出口戦略では彼らが太客になるというスキームです(笑)。困りましたよね」。含み笑いで語るその言葉の奥に、ビジネスの構造を読み切ったうえでの余裕が見える。


会社概要

  • 会社名:Multiフェイスホールディングス合同会社
  • 代表者:高田雅将
  • 事業内容:SES(ITエンジニア派遣)/法人向けWebサービス「ReachUp」/求人サービス「Voyager Carrier」/学生団体「シンクルーキャンパス」運営
  • 従業員数:約15名

編集後記

「難しい話じゃない、払い先を変えるだけ」。高田代表の言葉は終始、静かで合理的だった。営業・採用・求職活動——いずれの現場でも中間業者が利益を得すぎていると見抜き、本来対価を受け取るべき当事者へ直接価値を届ける仕組みを設計し続ける。苦労を語らず、アンバランスを淡々と正していくその姿勢に、連続起業家として磨かれた経営者の眼を感じた。

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