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取材を、人間の最後の砦に——AI時代の編集プロダクションを設計する26歳社長

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リード文

アルファブルーム株式会社は、生成AIを前提に編集プロダクションの仕組みそのものを組み直すことに挑む会社だ。代表取締役の平木昌宏氏は、ライター・脚本家・メディア編集長というキャリアを経て2024年に創業。「AIに奪われる仕事」と「人間にしか残らない価値」の境界線を見極め、取材という一次情報の現場に軸足を置く。本記事では、その独自の経営哲学と、年2倍で成長を続ける組織の設計思想に迫る。

AIへの恐怖から生まれた創業の決断

平木氏のキャリアは早い。高校卒業後の18歳から、ライターと中国輸入物販の二本柱で個人事業を始めた。コロナ禍で物販の物資が届かなくなったことを機にライター一本へと絞り、大手メディアでの実績を積み重ねていく。

その後、人気YouTubeチャンネルに脚本家として参画し、立ち上げ初期から登録者数を大きく伸ばすグロースに携わった。さらに暗号資産取引所を運営する企業のメディアにインターンとして加わり、翌年には編集長を任される。

転機となったのは、生成AIの登場だった。「まだ精度の低かった頃のチャットGPTを見て、これに仕事を奪われるんじゃないかという恐怖がすごかった」と平木氏は振り返る。だが同時に、進化の速度から「この流れは不可逆だ」と直感する。既にある情報をきれいにまとめる作業はAIの方が得意になる——そう見切った上で、では人間にしか残らない価値は何かを問い直した。その答えが「取材」だった。

「丁寧な取材で感動を信頼に変える」

アルファブルームがホームページの冒頭に掲げる企業理念は、「丁寧な取材で感動を信頼に変える」。この言葉には、平木氏の事業観が凝縮されている。

「取材とは、まだ世に出ていない情報を引き出す力だと定義しています」と平木氏は語る。AIは既に発信された情報を調理することには長けているが、まだ誰も語っていない一次情報を人から引き出すことはできない。引き出す人によって語られる内容が変わる——その現場にこそ人間の価値がある、という確信だ。

「感動を信頼に変える」という後半にも二つの意味を込める。まず、心を動かす良いコンテンツがあってこそ情報に価値が生まれる。そして、その感動を繰り返し届けることで、取材先にも掲載メディアにも信頼が積み上がっていく。丁寧な取材を起点に感動と信頼を重ねる循環こそ、同社の根幹にある。

人間は取材へ、AIには効率化を——非エンジニアが組む自動化

アルファブルームの特徴は、人間とAIの役割分担を徹底している点にある。人と人との繋がりが生む取材には人間が全力を注ぎ、それ以外の制作工程はAIに任せて効率化する。

象徴的なのが、ニュースの一次情報を自動で検知する社内システムだ。かつて人間が一つずつ検索して探していた情報を、リアルタイムで捕捉できるようにした。さらに同社は、「何が面白いか」という業界ごとの暗黙知に踏み込む。会議やチャットのやりとりを分析し、AIと対話しながら人の感性を言語化していく。これによりAIがネタを検知しやすくなるという。

驚くべきは、これらの仕組みを社内のメンバーだけで構築している点だ。メンバーは出版・制作・広告・PRといったキャリアの持ち主で、エンジニアは一人もいない。「非エンジニアでも実装できるようになった。まさにその時代の変化を体現しています」と平木氏は言う。

年2倍成長を、10名から5名へ——効率化が示す組織の形

創業からの成長は数字にも表れている。案件数・売上は創業期から3〜4倍に拡大し、毎年およそ2倍のペースで伸び続けている。一方で、当初10名ほどだったチームは現在5名で回す体制へと変わった。

「AIの進化に加えて、AI時代に最適化された編集プロダクションの形を作れたからこそ効率化できた」と平木氏は分析する。今の5名という規模は、本来の案件数から見ればむしろ少ないほどだという。人間が価値を発揮できる取材に集中できている状態を保ちながら、組織は少しずつ増やしていく考えだ。

市場には二種類の制作会社しかない、と平木氏は見る。長年培った品質で高単価・高品質を提供する老舗と、AIで効率化しただけの粗い記事を出す会社だ。同社が目指すのは、その中間ではない。人間がやるべき取材はしっかり行い、効率化できる工程は徹底的に効率化する。だから老舗並みの品質を保ちつつ、相場より低い単価を実現できるという自負がある。

一次情報のデータベースが拓く、5年後・10年後

平木氏は3年ではなく5年・10年の射程で未来を描く。当面の5年は、記事制作業界の効率化余地を突きながら年2倍成長を継続する方針だ。従来の常識を壊し、新しい時代にフィットした制作のあり方を貫く。

すでに存在感を示す領域として、金融・暗号資産・フィンテックといったテクノロジー分野と、ソフトウェアとの融合が進む自動車分野を挙げる。さらに、どの業界を追っても行き着くという半導体、そしてAIへも注力を強める考えだ。専門領域を一つずつ増やし、常に業界の最先端を追える体制を築いていく。

その先に見据えるのは、蓄積された一次情報のデータベースを起点とした事業展開だ。「専門領域が10、20と増えれば、この分野とあの分野を組み合わせれば新しい価値が生まれる、という知見も溜まってくる」。発信するだけでなくアドバイスもできる会社へ——単なる制作会社ではなく、最先端の一次情報を追う会社を目指す。参入に時間を要する保守的な業界については、買収という選択肢も将来的にはあり得るという。

編集後記

「AIに仕事を奪われる」という誰もが抱く不安を、平木氏は正面から引き受け、人間にしか残らない価値の輪郭を描き切ってみせた。取材=まだ世に出ていない情報を引き出す力、という定義には、書き手として現場に立ち続けてきた人ならではの手触りがある。組織の成長スピードを事業の成長スピードに追いつかせる——その一点に課題を見据える姿勢に、時代の変化を恐れず乗りこなそうとする経営者の芯を感じた取材だった。

会社概要

  • 会社名:アルファブルーム株式会社
  • 代表者:代表取締役 平木 昌宏
  • 事業内容:AIを活用した編集プロダクション(取材・記事制作、一次情報の検知・分析)
  • 創業:2024年
  • 従業員数:5名(正社員3名、業務委託2名)
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