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「楽しそう」を羅針盤に、食体験で世界とつながる

The Infinity株式会社の代表・福田竜也氏が手がけるのは、ただ料理を出す店ではない。客のほぼ100%がインバウンド、スタッフの半数以上が16カ国から集まる外国人という多国籍の現場で、宗教や食習慣の違いを越えて「誰もが安心して食べられる空間」をつくる。0→1の創造を原動力に、ビーガン食を軸とした食体験を国内外へ広げる福田氏に、その哲学と挑戦を聞いた。

目次

クリエイティブこそが原点

福田氏の出発点は、料理そのものというより「クリエイティブすること」への強い情熱にある。現在は現場を離れ経営に軸足を置くが、その姿勢は一貫している。

「0から1を作るのが好きなんです。そこが自分の特化したところかなと思います」

海外での料理経験もその延長線上にあった。カフェ業態の立ち上げをはじめ、名だたる企業の店舗を複数手がけてきた。既にあるものを回すのではなく、まだ世にないものを形にする——その繰り返しが、いまの事業観の土台になっている。

「安心して食べられる」を信念に

The Infinityの理念は「食を通じて世界と繋がる」。その背景には、客層がほぼ100%インバウンドという現実がある。

「その人たちが普通に安心して食事できる空間を作る。それが全てです」

ビーガンをはじめ、多様な食のニーズを持つ人々が国境を越えて訪れる。宗教上・信条上の制約があっても迷わず食事を楽しめること。福田氏にとって、この「安心」は付加価値ではなく事業の根幹そのものだ。店を見つけるのも評価するのも口コミが中心という環境で、その信頼が積み重なっている。

経営判断の軸は「楽しそうかどうか」

数々の判断を迫られる経営において、福田氏の基準は驚くほどシンプルだ。

「楽しそうだったら、それでOK。基本的にそれで選択します」

起業のスタート時にはコロナ禍が直撃し、ゼロ、どん底からの船出となった。それでも福田氏は「失敗したと思ったことはない」と言い切る。世の中全体が止まった局面と、自らの経営判断とを切り分けて捉えているからだ。以降は着実に業績を伸ばし、成長の手応えを積み上げてきた。

資金調達についても発想は堅実だ。「急に何億円入ってきても、受け皿にできるキャパがなければすぐ潰れる。身の丈に見合った投資をしていく」。必要になれば動くが、いまは急がない。等身大の成長を選ぶ姿勢が徹底している。

16カ国のスタッフが働く多国籍の現場

The Infinityの現場は、半数以上を外国人スタッフが占める。応募は外国人特化の求人媒体から、月に数百件規模で集まるという。特徴的なのは、日本語力を求人条件に置かない一方で、英語力を必須としている点だ。

「面接は僕が全部英語でやります。お客さんも外国人、環境も外国人ばかりだから、彼らが自分を活かせる唯一の場所になる」

だからこそスタッフの姿勢は真剣だ。「遅刻なんてありえない。むしろいまの日本の大学生より働くんじゃないかと思うくらいです」。限られた就労機会のなかで得た職場を、彼らは大切にする。福田氏はその真剣さを高く評価している。

現場教育には福田氏自身は踏み込まない。日本人の店長を意思疎通の要として立て、そこから現場へ落とし込む。マニュアルはあえて作り込まず、日々の運用で気づいた良い点を吸い上げてアップデートしていく。トラブルがあれば福田氏が対応する——役割の線引きが明確だ。

「食体験」で世界市場へ

今後の展望として福田氏が見据えるのは、飲食店の枠を超えた展開だ。自社ブランドの食品開発を進め、ビーガン対応のカップ麺やチーズケーキといった商品を国内で流通させるほか、海外輸出も動き始めている。

「うちが現場に行かなくても勝手に動くシステムを作る。ブランディングごと海外に持っていくのがメインテーマです」

特に狙うのは、競合が少ないビーガン市場だ。国内市場だけを見れば限られるが、世界に視野を広げれば桁が変わる。海外は投資家重視で資金が動きやすいこと、そして福田氏自身が英語で直接商談できることが、大きな武器になる。

「会食でも、翻訳を通していたらスムーズにはいかない。人間同士のコミュニケーションこそがビジネスなんです」

目指すのは、単に「食べる」場所ではない。

「食体験ありきの飲食店。ただ食べるだけなら他の選択肢でいい。そうじゃないところの付加価値を提供したい」

一杯に込めた体験価値こそが、The Infinityの目指す立ち位置だ。

会社概要

  • 会社名:The Infinity株式会社
  • 代表者:福田 竜也
  • 事業内容:飲食店の運営(インバウンド・ビーガン対応の食体験型店舗)、自社ブランド食品の開発・販売、海外展開

編集後記

「楽しそうだったらOK」という一見軽やかな言葉の奥に、覚悟と計算の両方が同居していた。コロナ直撃のどん底を「世の中がそうだっただけ」と淡々と語り、身の丈を超えた資金には手を出さない。多国籍の現場を英語一つでまとめ、競合なき市場へブランドごと打って出る——福田氏の食は、国境も言語も軽やかに越えていく。その先にある「安心」と「体験」が、これからどんな世界とつながっていくのか。楽しみでならない。

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