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労働力ではなく、一人のキャリアとして——特定技能の”裏方”に徹する経営者の信念

特定技能制度による外国人材の受け入れが広がるなか、その現場を営業面から支えるのがTradee株式会社だ。代表取締役の佐藤世浩氏は、登録支援機関やミャンマー現地での日本語学校の運営など、この分野を現地・国内の両面から歩んできた人物である。営業代行・営業支援という”裏方”に軸足を置きながら、その視線の先には「外国人材を労働力ではなく一人のキャリアとして受け入れる日本」という明確な理想がある。事業の勝ち筋と社会的な意義、その両輪を語ってもらった。

目次

営業の最前線から、特定技能の世界へ

佐藤氏のキャリアは、新卒で入社した検査機器メーカーの営業から始まった。1,000人規模の営業組織のなかで、入社1年目にしてトップの成績を収める。その後、税務コンサルティングの会社へ移ると、社長直轄の特別部隊として1年目で管理職に就き、新卒・中途を率いる40人規模の部署を立ち上げた。自らも社長賞を獲得し、部下からもMVPを輩出したという。

「サラリーマンで稼げるアッパーがどのくらいか、よく分かった」。そう語る佐藤氏は独立を志すが、いきなり自分のお金で事業を興すのではなく、まず新規事業を次々と立ち上げる会社へ営業マネージャーとして参画する道を選ぶ。そこで一つの事業を軌道に乗せ、もう一つは子会社化してCOOを務めた。この時期に立ち上げた特定技能領域のマッチングプラットフォームが、現在の事業へとつながる原点になった。

さらに自己資本で登録支援機関を設立し、ミャンマーの日本語学校の運営にも携わる。月に一度は現地へ足を運び、その学校は送り出し人数で国内有数の規模に育った。国内では制度が始まった当初から支援の実務を重ね、海外では人材が育つ現場を肌で知る——この両面の経験が、いまの事業の根幹であり最大の強みだと佐藤氏は言い切る。

競合なきニッチ市場で、増え続ける案件を捌く

Tradeeが手がけるのは、特定技能という在留資格に特化した外国人材の営業支援・営業代行だ。登録支援機関などのクライアントに代わって、受け入れ先の開拓や商談を担う。

特筆すべきは、その集客に広告費を1円もかけていない点である。「特定技能 営業代行」で検索すれば上位に表示され、そこからリードが絶えず入ってくる。「正直、競合は不在だと思っている」と佐藤氏。制度が煩雑で、分野・エリア・国籍・紹介料の組み合わせによって売上の作り方が大きく変わるこの領域では、単にアポイントを取るだけの営業代行では通用しない。実務を知り尽くした佐藤氏だからこそ、入り口の段階からクライアントの動線そのものを設計できる。

契約に縛りは設けず、1カ月ごとの更新という良心的な形をとる。それでも「事業を始めてから今日まで、ほとんどのお客様が継続している」。案件は増える一方で、足りなければ人を入れて捌く。その繰り返しだ。市場全体でも新規参入企業が毎月数百社単位で増えているといい、追い風は当面続くと見る。

受け入れ元の国のトレンドも移り変わる。数年前に爆発的だったミャンマーは政情の影響で新規入国が難しくなり、代わって伸びているのがインドネシアだ。ネパールやスリランカも増え始める一方、かつて多かった中国・ベトナムは目減りしている。こうした変化の機微を読みながら、佐藤氏は市場の最前線に立ち続けている。

「一つ尖った人」を活かす組織づくり

現在、業務委託を含めた組織は80名ほど。その中心はインサイドセールス、いわゆるテレアポの部隊だ。案件が絶えないため、採用は止めることなく続けている。

採用基準について佐藤氏は「常識があること以外、特にない」と語る。むしろ大切にしているのは配置だ。「五角形がまんべんなく大きい人より、一つ尖っている人のほうが絶対にいい」。人材業界の出身者にはそのフレームワークを活かしてもらい、特定分野の経験者にはその解像度の高さを存分に発揮してもらう。個々の強みを見極め、適材適所に置くことを何より意識している。

属人性という、最大の課題

好調に見える事業にも、佐藤氏が明確に挙げる課題が一つある。事業が自分ありきで回っているという、属人性の問題だ。

特定技能について語らせれば右に出る者はいないと自負し、登録支援機関から講演を依頼されることもある。制度への深い理解に加え、「勝ち切るための営業」に特化してきた人間だからこそ、クライアントは増え続け、納品にクレームも出ない。だが、その質を支えているのは佐藤氏自身がフロントに立ち、メンバーの教育もフィードバックも商談も一手に担っているという事実でもある。

「本当は手離れしたくて、ずっと教育をしていこうとしている。でも、そこが一番のネック」。かつて事業の譲渡を検討したこともあったが、「佐藤さんがいなければ回らない」と評価され、長期のロックアップを前提とされたという。だからこそ、右腕となる人材の育成が急務だと佐藤氏は考えている。

「選ばれる国」であるために——裏方が描く未来

3〜5年の展望を尋ねると、佐藤氏は「熱い話をしてもいいですか」と前置きして語り始めた。事業の勝ち筋は後付けの理由に過ぎず、その根底にはもっと明確な思いがあるという。

登録支援機関を営んでいた頃、佐藤氏は数百人規模の外国人材の支援に携わった。ミャンマーの学校で出会ったのは、母語ではない日本語を必死に学び、技能試験に合格して日本へ渡る切符を待つ、優秀で意欲的な若者たちだった。その姿を知るほどに、受け入れる日本側の体制への問題意識が募っていったという。

特定技能の受け入れ枠は今後さらに拡大し、国は数十万人規模への増加を掲げている。しかし円安が進むなか、「わざわざ日本で働く価値」をどう示せるかが問われている。佐藤氏が理想とするのは、外国人材を単なる労働力としてではなく、一人のキャリアとして受け入れる社会だ。

その象徴として挙げたのが、茨城県のある介護施設での実例である。支援したミャンマー出身の男性は、入職から半年弱で主任に昇格し、管理者会議にも参加。夏祭りではミャンマー料理を振る舞い、利用者やその家族との交流を生んだ。やがて介護福祉士の資格を取得し、いまも同じ施設で働き続けているという。「これはめちゃくちゃいい例だと思う」。本人の能力と適性をフラットに評価し、その文化的背景まで活かす——そんな受け入れ先が増えれば、日本は再び「選ばれる国」になれる。

佐藤氏が見据えるのは、外国人材が資格を重ね、家族とともに日本で長くキャリアを築いていける未来だ。伸び悩む登録支援機関を支え、現地で日本行きを待つ若者たちの裾野を広げる。いまは裏方に徹する事業体だが、その役割を通じて社会が円滑に回るようになれば——「やってきた意味があると思える」。静かな語り口の奥に、この分野を現地から歩んできた者だけが持つ確かな信念がにじんでいた。

会社概要

  • 会社名:Tradee株式会社
  • 代表者:佐藤世浩
  • 事業内容:特定技能に特化した外国人材の営業支援・営業代行
  • 従業員数:約80名(業務委託を含む)
Tradee株式会社 代表 佐藤世浩

編集後記

制度の煩雑さや市場の追い風といった「勝ち筋」を淡々と語る一方で、外国人材一人ひとりのキャリアに話が及ぶと、佐藤氏の言葉は明らかに熱を帯びた。現地で学ぶ若者の姿と、日本で活躍する彼らの未来。その両方を実際に見てきた人物だからこそ描ける理想がある。営業の最前線に立ちながら、その先にある社会の姿を見据える——裏方に徹するという選択の重みを、取材を通じて強く感じた。

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