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個人の人生ありきで、企業は伸びる——教育への問いから拓いた研修三十年

株式会社アイ・クリエイティブは、法人向けの企業研修を主軸に、テストセンター運営なども手がける教育研修会社だ。代表取締役の鈴木勝博氏は、三菱電機、Z会を経て独立し、「日本の教育はこれでいいのか」という問いを出発点に事業を築いてきた。粗利を二倍にする研修、そしていま力を注ぐ「プレフィジカルAI研修」。その根底にあるのは、「組織より個人の人生を」という一貫した信念である。本記事では、山あり谷ありの三十年と、これからの日本の働き方に向けた鈴木氏の哲学に迫る。

目次

教育への疑問から、研修の道へ

鈴木氏のキャリアは、三菱電機でのコンピューターOS開発から始まる。五年を過ごしたのち、「教育がやりたかった」という思いからZ会へ転職。成績管理システムの構築から新規事業の立案・設計までを担い、七年ほど在籍した。

独立の原点には、学生時代から抱き続けた教育への強い疑問があった。マネジメント、計画、簿記会計——企業で生きていくために不可欠な実践的スキルを学ぶ機会が、日本の教育にはほとんど用意されていない。

「ほとんどの社員の方々が、マネジメントや計画を学ぶ機会がないまま仕事をしている。日本企業の生産性が著しく低いのは、教育に大きな原因があると、ずっと思っていました」

その問題意識が、教育研修会社の創業へとつながった。

パソコンスクールから、不登校の学校まで

創業当初の事業は、パソコンスクールだった。顧客と出会うための「オープンドア」として位置づけた事業で、一時は生徒数二千人規模、フランチャイズは三十校近くにまで広がった。しかしフランチャイザーとしての調整に追われ、次の展開が進まぬまま、創業五年ほどで倒産の危機にも直面する。

その渦中で、鈴木氏はもう一つの学校を立ち上げている。発達障害のある子どもたちに向けた高等学校「アビニオンスクール」だ。当時、発達障害はまだ社会の関心も薄く、いじめに遭う子や一人で悩む母親が少なくなかった。

「難しいかどうかより、目の前で困っている人がいたんだから、もう作るしかないよな、と。おこがましいけれど、我々がやるしかないだろうと思って作った学校です」

事業計画書もつくらずに走り出したその学校は、開設から十数年は赤字が続いた。それでも母親たちの期待に応えたいという思いで運営を続け、二十五年にわたって経営。三年ほど前にバイアウトを果たしている。

粗利二倍を約束する、企業研修

アビニオンスクールでの取り組みが縁となり、厚生労働省から声がかかったのが企業研修事業の始まりだった。ジョブカード普及の協力から入り、人材開発支援助成金を活用した研修へと発展。以来二十年、支援した企業は延べ千六百社にのぼる。

研修の特徴は、その長さと成果へのこだわりにある。半年から一年におよぶ長期研修を通じて、顧客企業の粗利を必ず二倍以上に引き上げる。

「二倍以上にできなかったら、研修費用を全額お返しします、と言っています。こんな研修会社はあまりないと思いますよ」

助成金を活用できる点も企業にとって大きな動機になるが、鈴木氏はそこに軸足を置かない。「助成金はある意味、付録みたいなもの。研修サービス自体がいいものでなければだめだ、というのが二十年変わらないポイントです」。その姿勢ゆえに満足度は高く、二十年来の顧客や紹介による新規も多い。ウェブマーケティングに頼らずとも事業が回ってきたのは、商品そのものへの自信の裏返しでもある。

「プレフィジカルAI研修」で、変革の橋渡しを

いま鈴木氏が最も注力するのが、「フィジカルAI」への対応だ。生成AIやAIエージェントの活用にとどまらず、AIが実社会・実業務に組み込まれていく段階を見据える。

しかし、多くの企業はその前段階にすら立てていないと鈴木氏は指摘する。業務の標準化をはじめ、政府が「AIレディ」と呼ぶ状態を整えなければ、フィジカルAIは機能しない。

そこで同社が掲げるのが「プレフィジカルAI研修」だ。製造業、建設業、物流、医療・介護、小売・EC、金融——六つの業種に着目し、企業をAIレディの状態へと導く。多彩な専門講師陣を擁するからこそ提供できる領域だという。

研修はオンラインで完結する。鈴木氏は、むしろオンラインのほうが成果は高いと言い切る。「我々は成果主義で、必ずアウトプットを重視します。研修が終わる頃にはマニュアルからドキュメンテーションまで整備され、それが全部、企業の資産として残っていくんです」

組織より、個人の人生を

取材の終盤、話題は日本の働き方そのものへと及んだ。鈴木氏は、日本企業の研修への投資がアメリカの二十分の一にとどまる現状を憂う。業務が忙しければ研修は後回し——その発想自体がおかしい、と。

「欧米の優れた企業では、業務と研修はほぼ一体です。研修をやらなければ生産性は高まらない。だから業務の中に研修が組み込まれている。それが普通なんです」

その根底にあるのは、「個人ありき」という価値観だ。組織を優先するあまり個人の人生が二の次になる——鈴木氏はそこに、日本社会の根深い問題を見る。

「人材は、個人があっての組織です。個人の人生の価値観をきちんと育てられる組織であってほしい。それが結局、生産性を上げるんです」

そして、成長に欠かせないものとしてPDCAの徹底を説きながらも、その手前にある「ワクワク感」を強調する。「PDCAは管理だけやっていても回らない。面白い、これをやろうという感覚があってこそ回るんです。大谷選手やイチロー選手にルーティンが根づいているのも、その奥にワクワク感があるからでしょう」

株式会社アイ・クリエイティブ 代表 鈴木勝博

編集後記

三菱電機、Z会、そして三十年の独立——鈴木氏の歩みは、決して平坦ではなかった。倒産の危機、十数年続いた赤字、それでも「目の前で困っている人がいるなら作るしかない」と学校を立ち上げる。その原動力を貫くのは、制度や管理ではなく一人ひとりの人生に向けられたまなざしだ。「顧客が儲かっていることが一番の財産」と語る姿には、教育という仕事への静かな確信がにじむ。人手不足が深刻化する時代に、企業と個人の双方を成長へと橋渡ししようとするその挑戦は、これからの日本にとって示唆に富む。

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