MENU

好きなことを、リスクを取らず楽しみ抜く——七つの事業を口コミで束ねる経営者の流儀

十七歳で個人事業を始め、二十歳で師匠と出会い、いまでは七つの事業を手がける。株式会社Ambitious Divaの代表取締役・前田健人氏は、ジュエリーや香水の販売からパフォーマー派遣、経営・営業コンサルティングまでを、そのほとんどを口コミと紹介で回している。本記事では、拡大よりも「人の育成」と「楽しさ」を軸に据える前田氏の経営観と、独自のビジネスモデルの背景に迫る。

目次

十七歳からの起業と、二人の恩人

前田氏がビジネスの世界に足を踏み入れたのは、高校二年生、十七歳のときだった。個人事業主として飛び込み営業から始め、会社を経営していた父親のもとで営業スキルを磨いた。

転機は二十歳のころ。「その人のおかげで、いろいろ事業を増やさせてもらった」と語る師匠との出会いが、いまの姿につながっている。師匠との縁を起点に、前田氏は事業を七つにまで広げていった。

もう一人、経営を支える存在がいる。前田氏が二十歳のときに出会った、自らの会社を売却した経験を持つ人物だ。現在はナンバー2として、法務や書面まわりを担う。「父と師匠、そしてうちのナンバー2。この三人のおかげ」と、前田氏は自身を形づくった人々への感謝を口にする。

七つの事業を、口コミで束ねる

前田氏が手がける事業は多岐にわたる。ジュエリー販売、香水販売、パフォーマーの派遣、PRメディアの運営、そして結婚相談所のオーナー業。さらに前田氏自身が前面に立つのが、経営コンサルティングと営業コンサルティングだ。

経営コンサルは、これから独立・起業を目指す人に向けたサポート。営業コンサルは、集客に悩む営業パーソンを対象とする。「売上ベースでは経営コンサルが一番。ただ、自分が実際に動いているのは営業コンサルが中心」。営業パーソンは二百六十名、法人の経営コンサルは三十四社を見ている。顧客は保険、不動産、SES、美容、自動車、飲食と、業種を問わず広がる。

新規のリードは、そのほとんどが紹介から生まれる。一日あたり十件から十五件。うち七件ほどはコンサル生からの紹介だという。「この営業マンの話を聞いてあげてほしい」——そうしたつながりが、次の縁を連れてくる。

「消費税分だけ」で始めるコンサル

競合がひしめく領域で、前田氏はどこに強みを見出しているのか。挙げたのは二つ、「ティーアップ」と「価格」だ。

一つは紹介の質。「七つの会社を経営している社長がお世話になっている方です、という形で紹介できる」。単なる口利きではなく、実績のある経営者からの推薦として届けられることが、信頼の担保になる。

もう一つが、独自の料金体系だ。オーナー業を主たる収益源とすることで、コンサル費用を大きく抑えられる。「うちは全額を先にいただかず、消費税分の入金でコンサルをスタートする」。前例をあまり聞かないというこの仕組みが、参入の敷居を下げている。

友を手放した先に見た、経営者の孤独

苦労を尋ねると、前田氏はビジネスそのものよりも、人間関係の話を選んだ。「十七歳からビジネスを始めたので、成人式にも行っていないし、同窓会もこの間初めて行った。友達は本当に失ったなと」。

かつて、師匠から友人関係を断つよう告げられたことがあった。「将来を取るか、どちらを取るか、ということ」。結果的には正しい選択だったと振り返るが、その渦中は「結構きつかった」と言う。それでも、いまなお続く古い友人が数人いる。「三人ぐらい。でも、それで十分」と前田氏は静かに語った。

リスクを取らず、直感とダブルチェックで見極める

数々の事業を並行させながら、大きな失敗をほとんど経験していないという前田氏。その判断軸は明快だ。「美味しすぎる話には乗らない。必ず裏があると思うので」。そして、デメリットまできちんと伝えてくれる相手を信用する。

意思決定は二段構えだ。まず直感型の前田氏が「大丈夫か」を見極め、次に法務や書面に強いナンバー2がチェックを入れる。このダブルチェックを通過して初めて、出資などの検討に入る。

組織を大きく広げる構想は、いまのところ持たない。「基本的にはリスクを取っていない。リスクを取らず、うまくやっていければ」。事業拡大そのものより、堅実に回し続けることに価値を置く姿勢がにじむ。

一方で、自らの存在が生む属人性は課題として自覚している。「前田さんの紹介だから、という力が良くも悪くも働く。完全に手が離れたとき、そこが売上に影響してくる」。自分に代わってティーアップを担える優秀な人材の不在を、経営者共通の悩みとして受け止めている。

稼ぐより、育てる。そして楽しむ

三年後、五年後をどう描くか。その問いに、前田氏の答えは意外なほど淡々としていた。「稼ぎたい、会社を大きくしたい、という気持ちが正直あまりない」。いま事業を続けている理由は、人の育成がしたいから。オーナー業でも、仲間たちに売上を競わせながら「楽しくやっていければいい」と考えている。

かつては師匠から、もっと規模を追うよう発破をかけられた時期もあった。だが三年ほど前から、稼ぐことへの欲が薄れていったという。一年前におそるおそる相談すると、返ってきたのは叱責ではなかった。「そういう時期もあるよ。また戻れば、そのときで」。

これから挑戦したいことを尋ねると、前田氏は好きなものの話を始めた。「資産価値の上がるものが好き。ジュエリーもそうですが、ブランド系はこれからも続けていきたい」。数字の拡大ではなく、好きなものと人との関わりのなかに、この経営者の未来図はある。

会社概要

  • 会社名:株式会社Ambitious Diva
  • 代表者:代表取締役 前田 健人
  • 事業内容:ジュエリー・香水販売、パフォーマー派遣、PRメディア運営、結婚相談所オーナー業、経営コンサルティング、営業コンサルティング
  • 創業:2020年
株式会社Ambitious Diva 代表 前田 健人

編集後記

七つの事業を束ねながら、前田氏の言葉に力みはない。リスクを避け、直感とダブルチェックで堅実に舵を取り、稼ぐことより人を育てる喜びを語る。十七歳から走り続け、友を手放す痛みも味わった経営者が、いま「楽しさ」を軸に据えている姿は印象的だった。拡大一辺倒ではない経営の在り方を、静かに示してくれる取材だった。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次