MIREAL株式会社の加藤駿介氏が率いるのは、少数精鋭で映像制作を手がけるチームだ。技術やクリエイティブの巧拙以前に、レスポンスの速さやビジネスマナーといった「人と人のやり取り」を徹底することで顧客の信頼を勝ち取ってきた。AIが台頭する時代にあえて「人が生み出す価値」にこだわる加藤氏に、事業の強み、これまでの苦労、そしてこれからの展望を聞いた。
選ばれる理由は「速さ」と「正確性」、そして人としての姿勢
MIREALが競合のなかで選ばれる理由を、加藤氏はまず仕事の基本姿勢に置く。レスポンスは全員が24時間以内に必ず返す。メールもビジネスメールとしてふさわしい書き方を徹底する。こうした当たり前を、社員だけでなく業務委託のメンバーにも日頃からフィードバックしながら共有していく。
「いくら良いプロダクトを売っていても、売っている人がしょうもない人間だと買うお客さんはいません」と加藤氏は言い切る。コミュニケーションが円滑に取れているか、フロントに立つ人間のレベルはどうか――結局のところビジネスは人と人であり、そこにこそ選ばれる理由があるという考えだ。
加藤氏自身も映像制作の現場に長く携わり、他社の映像制作会社で若手人材の育成にコンサルタントとして関わった経験を持つ。自社の提供価値の裏側には、そうした実際の裏付けがある。
一番の苦労は「教育」――お客様の本音を汲み取る力
代表になってから最も苦労したことを問うと、加藤氏は迷わず「人」「教育」の部分を挙げた。ビジネスマナーや顧客への接し方は伝えることができても、それを一人ひとりが自分の仕事に落とし込み、実践できるようになるまでには時間がかかる。
とりわけ難しいのが、お客様が本当に求めているものを汲み取る力だという。「ドリルを買いに来たお客さんが本当に欲しいのは穴である、という有名な話がありますよね」。表面的な要望の奥にある本質を捉える感覚は、言葉で説明しても簡単には身につかない。最初は形にならず、ミスやお詫びが重なり、やきもきしながら向き合ってきた。
いまは同じメンバーと4〜5年ほど、前の会社から引き継いだチームで動いており、その点はほとんど気を配る必要がなくなったという。人を育てることの難しさを正面から引き受けてきた経験が、いまの安定したチームの土台になっている。
「規律は利益の源泉」――理念に貫かれた経営
加藤氏が掲げるスローガンは、「規律は利益の源泉であり、リテラシーは社会機関を支える力」。規律を守ること、そして一人ひとりが備えるリテラシーが、会社の利益の源泉になると同時に、会社としても個人としても社会に貢献していくうえで最大の力になる、という信念だ。
「ちゃんとリテラシーを持って、ちゃんと人の気持ちを考えて」。加藤氏がずっと言い続けてきたこの姿勢は、そのまま社員へと落とし込まれている。人と人の仕事だからこそ、円滑なコミュニケーションと相手への想像力を何より大切にする。その一貫した価値観が、MIREALという組織の芯を通している。
コンパクトな組織で、質を落とさず育てる
MIREALは正規メンバー5人という少数精鋭で運営し、案件ごとに業務委託のクリエイターをアサインする体制をとる。一時期はもう少し人数が多かった時期もあったが、いまはあえてコンパクトに構えている。
「人を一気に増やしすぎると、教育が追いつかなくなって、会社の理念が守れなくなってしまう」。だからこそ、質の高い人材を一人ひとり採用し、じっくり育てていく方針を崩さない。まだ会社としては歩み始めたばかり。事業のスケールに合わせ、来年からは改めて採用を始める考えだ。
一方で、映像制作はSaaSのように案件が常時発生する事業ではなく、単発が軸になりやすい。安定的な収入をどう作るかは大きな課題であり、新しいサービスの開発や、映像制作という看板にとらわれない事業展開を模索している。顧客獲得においても、かつてはテレアポやマッチングサービスを使った新規営業に相応の予算を投じていたが、いまは既存のお客様からの紹介を軸とする形へと切り替えを進めている。
AIの時代にこそ、人が生み出す価値を
今後の展望として、加藤氏は数期先での事業拡大を見据える。まずは足元の期で拡大の足がかりを作り、人員と投資を増やしながら、数年後にはより大きな売上規模を目指す。その体制づくりの鍵になるのが、「人が作る価値」だ。
「クリエイティブは、AIに一番食われやすい業種でもある」と加藤氏は冷静に見る。だからこそ、AIを活用しつつも、人と人のつながりや相手を思いやる姿勢を最も大切にする。何を聞いてもAIに頼り、自分の頭で考えられない――そんな傾向が広がるなかで、温かいコンテンツや日々のコミュニケーションを生み出せることこそがMIREALの強みになると考えている。
これからは、自社一社だけで一つの商品を売るのではなく、信頼できる複数のパートナー企業と組んで大きなプロダクトを作っていきたいという。「いいなと思った方たちと一緒に、大きな事業を作っていきたい」。その言葉には、人とのつながりを起点に事業を広げていこうとする加藤氏の姿勢がにじむ。
読者である経営者へのメッセージとして、加藤氏はこう語る。人と人のビジネスに共感してくれる企業とは、パートナーとしても、あるいは気軽な相談相手としても縁を結べたら嬉しい――と。AIの時代だからこそ、人の価値にこだわり続ける経営者の言葉である。
会社概要
- 会社名:MIREAL株式会社
- 代表者:加藤 駿介
- 事業内容:映像制作
編集後記
技術やトレンドではなく、「レスポンスを24時間以内に返す」「相手の本音を汲み取る」といった人としての基本を徹底的に語る加藤氏の姿が印象的だった。規律とリテラシーを利益と社会貢献の源泉と捉える理念は、AIが人の仕事を代替していく時代において、むしろ逆説的に輝きを増す。人が生み出す価値を信じ、パートナーとともに事業を広げようとするMIREALの歩みに、これからの映像制作のひとつの形が見える。
