マッチリング合同会社の代表・林一輝は、北海道出身の起業家だ。フィリピン留学で目にした子どもたちの活気と、帰国後に感じた日本の少子化の深刻さ。その落差が、「恋愛を増やすことが少子化対策の一歩になる」という信念を育てた。マッチングアプリのコンサルティングから結婚相談所との全国フランチャイズ展開まで、「出会いのインフラ」を全国34拠点に広げる林の挑戦を追った。
小学生の頃から、縁をつなぐ役割だった
林一輝が恋活・婚活の仕事に就きたいと思い始めたのは、子どものころにさかのぼる。「小学生の頃から男女の恋愛相談に乗ることが多かった」と語る林は、友人たちの互いへの思いを取り持つキューピット役を自然と担ってきた。「目の前の人がすごく喜んで幸せになっていく姿を間近で見られる仕事って素敵だな」——その原体験が、後の起業の根幹となった。
もうひとつの契機は、フィリピンへの語学留学だ。当時平均年齢が24歳というフィリピンでは、街中に子どもがあふれ、活気に満ちていた。帰国後に感じた日本との落差は大きかった。「日本はもう少子高齢化で本当に子供が少ない。深刻な問題になっている」。その危機感が、「何か自分でやるなら社会貢献に、特に日本の少子化を解決するような仕事をしよう」という志に結びついた。結婚の前段階にある恋愛をサポートする会社を作ろう——そう決意した。
飲料メーカーの営業から独立、試行錯誤の末の起業
北海道・札幌の専門学校で会計などを学んだ林は、語学留学を経て卒業後、東京の飲料メーカー・伊藤園に就職した。「大きいお茶をひたすら売ってた」と振り返る3年間の営業経験が、その後の事業展開の土台となった。
会社員を続けながらイベント事業を個人で開業したが、コロナ禍が直撃した。「売り上げが0円の日が続くこともあった」。貯金を取り崩しながら生活を維持したその経験から、計画性の重要さを身をもって学んだ。「ちゃんと計画性は持たないとなと、そこから学んだ」。試行錯誤の末、もともとやりたかった恋活・婚活の分野にシフトチェンジし、2022年10月、マッチリング合同会社を設立した。
マッチングアプリの「9割は写真」──実体験から生まれたノウハウ
マッチリングの主力サービスは、マッチングアプリを活用した出会いのサポートだ。写真撮影、プロフィール作成、メッセージ術のコンサルティング、5種類のオンライン講座など、利用者がつまずきやすいポイントをピンポイントで解決する体制を整えている。
「マッチングアプリで出る悩みって大抵皆さん一緒。マッチしない、メッセージのやり取りが続かない、デートまで行かない」。林はこれらの課題を、自身の10年以上にわたるマッチングアプリの実践から体系化してきた。「どこかのサイトから引っ張ってきたのではなく、自分の実体験をもとに形態化している」。特に「マッチングアプリは写真が9割」と断言する林は、魅力的に見える写真の撮り方から、デートにつながりやすいメッセージの流れまでを一貫して指導している。その実体験に根ざしたノウハウが、成果の早さという差別化につながっている。
全国34拠点のフランチャイズ──結婚相談所と組む出会いのエコシステム
事業のもうひとつの柱がフランチャイズモデルだ。「MAS」の名称で展開するこの仕組みでは、マッチリングを本部として、現在全国34のオーナーが北海道から岡山まで加盟している。加盟者の多くは結婚相談所の運営者で、その専門性を活かしながらマッチングアプリという入口のサービスも提供できる体制を整えている。
「結婚したいからといきなり結婚相談所に行かない。大体皆さんマッチングアプリを使う」。林の着眼点は、マッチングアプリ利用者が結婚相談所へと自然につながる仕組みを作ることにある。「マッチングアプリでサポートして関係値を築いて、タイミングを見て結婚相談所に繋げる」。取りこぼしの防止と潜在顧客の再誘導がフランチャイズの強みで、結婚相談所にとっても新たな集客経路になる。
組織運営においては、オーナーの声を丁寧に拾うことを心がけている。「フランチャイズオーナーがこうしてもらえたら嬉しいという声を、事業の発展につながるならなるべく早いスピード感で導入していく」。この双方向の関係が、全国ネットワークの結束力を高めている。
「MAS」を出会いの代名詞へ──メディアとツール開発で次の一手
3〜5年後に向けて、林が描くのはブランド「MAS」の社会的浸透だ。「カフェで隣の女性グループが、恋愛困ってるんだけど何使えばいいかな、とりあえずMASみたいな世界線まで持っていきたい」。
そのためにメディアの強化を急ぐ。YouTubeでの情報発信に加え、マッチングアプリや出会いに関するメディアサイトも制作中だ。また、以前のイベント事業から引き継いだコミュニティには現在1,500名ほどが登録しており、新たな展開の場としても活用していく。さらに、イベント集客の紹介者管理を一元化するシステムツールの販売も準備が整い、近く提供を開始する予定だ。「恋活・婚活に関わりたい、幸せになる人を一人でも増やしたいという方がいたら、まずご相談いただけたら」と林は語る。
会社概要
- 会社名:マッチリング合同会社
- 代表者:林一輝
- 事業内容:恋活・婚活総合サポート(マッチングアプリコンサルティング・写真撮影・オンライン講座・フランチャイズ事業「MAS」運営)
- 設立:2022年10月
編集後記
小学生のころからキューピット役を担い、留学先で少子化への危機感を抱いた林一輝は、その二つの原体験を起業という形で結びつけた。コロナ禍の苦境を経て辿り着いた現在地から、出会いの文化そのものを変えようとするスケールの大きな志が印象に残った。「目の前の人が幸せになる姿を見られる仕事」という純粋な喜びが、全国34拠点という実績の背後にある。
