大阪・豊中出身の大迫代表は、リクルートグループ系制作会社でディレクターとしてキャリアを積み、コロナ禍を機に独立。約4〜5年のフリーランス期間を経て株式会社Cropを設立した。「撮影して終わり」ではなく企画段階から入り込み、映像・デザイン・Web・SNSまでを一貫して支援する。同社が掲げるのは「企業のワクワク感を取り戻す」こと——代表就任後の苦労、業界への問題意識、東京進出を視野に入れた次の戦略を聞いた。
リクルートからフリーランス、そして法人化へ
大迫代表は大阪・豊中出身。大学時代からカメラに親しみ、卒業後はリクルートグループの制作関連会社「メディアハウス」に新卒入社した。「タウンワーク」「SUUMO」などリクルート媒体の制作業務でディレクター職を担い、プロジェクトの進行管理、クリエイターのアサイン、成果物の品質管理まで幅広く経験した。
3年が経ったころ、「カメラをもっと本格的に仕事にしたい」という気持ちが膨らんだ。折しもコロナ禍の初波で会社が自主退社希望者を募るタイミングが重なり、退職を決断。フリーランスのカメラマンとして約4〜5年活動した。
撮影案件をこなす中で、自然とディレクターとして企画段階から入る機会も増えていった。「もっと本格的にやっていこう」という思いと、AIの台頭によってクリエイティブ単価が下がる時代を見据えた危機感が重なり、2025年10月に株式会社Cropを設立した。
「撮影するだけ」から「課題を解決する」へ
設立当初は「写真を撮る」だけだった解決手段が、今では企画ディレクション・映像・デザイン・Web・SNS運用まで広がった。大迫代表自身のディレクター経験と、長年かけて築いたクリエイターの横のネットワークが、この展開を可能にしている。
顧客層はB2Bが中心だ。イベント撮影の定期案件、広告系制作会社・デザイン会社からの外注発注、そしてアパレルや飲食店など中小企業との直取引が主な柱となっている。直取引では集客課題を抱えるオーナーからの相談が多く、SNS活用の提案まで一気通貫で担うケースもある。
競合との差別化ポイントとして大迫代表は2点を挙げる。「職人系で上がってきた制作会社にはできない、企画・ディレクション込みの仕事ができること」、そして「カメラマン時代から積み上げた業界横断のパートナー網があること」だ。「案件によって対応できる幅が全然違う。そこはかなり強いポイントだと自覚しています」。
「カメラマン」のイメージを超えていく苦労
法人化後、最も苦労してきたのが「一カメラマン」というイメージを払拭することだったと大迫代表は語る。
「お客さんからは、撮ってくれないんですかって、どうしてもなってしまう」。撮影という仕事は現場で対面することが前提だけに、俗人性が強く出やすい。「僕じゃなくてもちゃんと撮れるんです。僕が間に入るから撮れるんですよ、という信頼に持っていくのが本当に大変でした」。
これはプレイヤーからマネジメント・ディレクションへの役割転換の難しさそのものだ。現在も「完全にできているわけじゃない」と謙虚に認めつつ、「何かを始めるときに相談する相手として名前が上がるようになってきた」と手応えを感じている。
競合は仲間——感謝を伝え続ける組織づくり
組織づくりで大切にしていることを問うと、大迫代表は業界全体を俯瞰する視点を語った。
「もう一個レイヤーを上げてみた時に、競合だけど業界を盛り上げる仲間として捉えられる」。その気づきを得てからは、同業者にも手を取り合う姿勢でコミュニケーションを取り続けてきた。「大阪というマーケットを盛り上げる上では、お客さんの課題を解決してその企業が売り上げを伸ばせれば、最終的には誰にもチャンスがあると思うので」。
また、外注パートナーへの感謝を「日々、本人に直接伝えるようにしている」と言う。広いネットワークは、そうした丁寧なコミュニケーションの積み重ねによって育まれてきた。
東京進出、自社プロダクト——次の5年へ
今後の展望について、大迫代表はいくつかの具体的な方向性を持っている。
足元の課題として真っ先に挙げるのが「直取引の拡大」と「サブスク的収入の確立」だ。クリエイティブ業界は単発案件が基本で、収益が安定しにくい。「ウェブやSNS運用のサブスクモデルをいかに増やすかは、会社として追求しないといけないところ」と言い切る。
中期的には大阪の業務を任せられる人材を育て、自身は東京での事業展開を目指す。「大阪のマーケットをある程度自分で大きくした上で任せて、自分は東京でもお仕事を取っていける体制にしたい」。
さらに将来的には自社プロダクトや自社店舗(飲食なども含む)を持つことを模索しているという。「人を集められる力をしっかり展開した上で、もう一軸別の事業にチャレンジしたい」。AIによる単価低下リスクを先読みした、受注依存からの脱却戦略でもある。
会社概要
- 会社名:株式会社Crop
- 代表者:大迫葵
- 事業内容:写真・映像撮影、企画ディレクション、デザイン、Webサイト制作、SNS運用支援
- 設立:2025年10月
- 所在地:大阪
- 主要取引先層:イベント主催者、広告・制作会社、アパレル・飲食店など中小企業
編集後記
大迫代表の言葉で最も印象に残ったのは、「競合も業界を盛り上げる仲間」という視点だ。短期的な受注競争ではなく、大阪という市場全体を育てる発想は、設立間もない会社の代表とは思えない広がりがある。「企業のワクワク感を取り戻す」というビジョンは、量産的な制作現場への違和感から独立を決めた自身の経歴と地続きだ。感謝を伝え続け、信頼を積み上げながら事業を育てる姿勢に、誠実な経営者像を見た。
