京都府南部を拠点に、冷蔵・冷凍の食品物流を担う川島運送株式会社。代表の川島寛也氏は、26歳でトラック一台を購入して独立し、いまや役員・幹部を含む組織と約80台の車両を擁するまでに会社を育て上げた。原動力は「とにかく稼ぎたい」という素直な欲と、働く側の気持ちを忘れない視点。そして、失敗を恐れず挑戦し続ける姿勢だ。24時間365日止まらない現場を率いる経営者の、飾らない肉声を届ける。
トラック一台から始まった創業
川島氏のキャリアは建設業から始まった。その後、地元の運送会社に2年間勤め、物流の現場を肌で覚える。そして26歳、トラック一台を購入して独立を果たした。
起業の動機は、いたってシンプルだった。「とにかく稼ぎたかったんです。労働者でいる状況だと、天井がもう決まってしまう。だから自分でやりたいなと」。法人の意味も税務の知識もほとんどないところからのスタートだったと、川島氏は当時を率直に振り返る。
個人事業主として数年を過ごした後に法人化し、現在は8期目。決算を迎えるたびに事業は着実に規模を広げてきた。直近の期の売上はおよそ7億2000万円、経常利益率は7.8%。今期は10億円を目標に掲げ、着地は9億円台を見込む。「特別に仕事の中身を変えたわけではなく、そのまま拡大していった」という言葉に、事業の芯の強さがにじむ。
24時間365日、食の物流を止めない
川島運送が扱うのは、冷蔵・冷凍車にパワーゲートを備えた特殊車両による食品物流だ。大手食品メーカーやコンビニ、スーパーの物流を、24時間365日、止まることなく支えている。「仕事が切れない職種でやり始めて、今に至ります」。
数ある運送会社の中から選ばれる理由を、川島氏は「フットワークの軽さ」と表現する。依頼を受ければすぐに見積もりを出し、「まず1台から行きます」と応える。いきなり複数台を求められる場面もあるが、基本は一台から入り、信用と信頼を積み重ねて台数を増やしていく。この一歩ずつのスタンスが、長く続く関係を生んできた。
得意とするのは、当たり前を徹底し切ることだ。「決まった時間に決まった場所で積んで、決まった時間に決まった場所で下ろす。誤配や間違いをなくす確認の徹底」。他社にとっても当然のことを、入念に、指導と教育で磨き続ける。「1分でも遅刻は遅刻。1分手前で着く方がいいじゃないですか」。時間へのこだわりは、何年経っても揺るがない現場の基礎になっている。
「気」と、働く側に立つ経営
川島氏が理念に掲げるのは、気持ちの「気」だ。「やる気、勝ち気、負けん気、勇気、元気。全部に『気』がつく。気がなかったら、動こうとも考えようともしない」。その言葉通り、話す姿からは周囲を明るくする熱量が伝わってくる。
経営者としての川島氏が大切にするのは、働く側の立場に立つ視点だ。自らもプレイヤーとして現場を動かしてきたからこそ、「社長だから偉そうに、ではなく、働く人の立場に立って、いかに働きやすい環境をつくれるか」を常に考える。福利厚生や社内の風紀づくりも、その延長線上にある。
一方で、組織づくりには正解がないとも語る。自身のビジョンを掲げても、浸透させるには前に立って伝え続けるしかない。「命令ならやれで済むけれど、率先して動くことを身につけてもらう教育をしたい」。24時間365日のシフト制ゆえ全員で集まる機会は難しく、グループごとの懇親の場を重ねながら、思いを届け続けている。
失敗を恐れず挑戦し続ける
「損したらダメ」。川島氏は仕事の信条をこう言い切る。会社も従業員も、働く目的の根っこにはお金がある。だからこそ甘えは受け付けない。同時に、自社にもお客様にも迷惑をかける行動は決して許さない。厳しさと誠実さが同居した哲学だ。
これからともに働く仲間に求めるのは、「やる気・向上心があり、何にでも挑戦する人」。経営を学ぶ中で川島氏が惹かれたのは、シリコンバレーに根づく「失敗を称える」文化だという。「失敗したと報告を受けたら、すごいやんと褒める。次につながるから、切り替えの速さがすごい」。失敗を恐れる空気こそが成長を鈍らせる——その気づきが、採用でも組織づくりでも軸になっている。
採用の手法も大きく変えた。従来のウェブ求人媒体から、この春よりSNS広告へと舵を切り、数か月で複数名の採用につなげている。川島氏自身もメディアへの露出を増やしており、会社と個人の発信がリンクしたときにこそ大きな効果が生まれると見据える。組織が大きくなるほど、管理体制という「中身」を固める重要性も強調する。「トラックも従業員も増やしつつ、肝となる管理の組織強化を並行して進める。そのバランスが一番重要」。
今後は事業計画に基づき、地盤を固めながら着実に拡大していく構えだ。自身が出資するもう一社(資本金2000万円、専務が代表を務める)のビジネスモデルも磨き上げ、認知を広げていく。読者へのメッセージを問うと、川島氏はこう締めくくった。「失敗を恐れずに挑戦し続ける。失敗はつきもの、失敗してもいいと開き直れるくらい、切り替えが大事です」。
会社概要
- 会社名:川島運送株式会社
- 代表者:川島寛也
- 事業内容:一般貨物自動車運送事業(冷蔵・冷凍・パワーゲート付き車両による食品物流)
- 沿革:個人事業主としての創業を経て法人化、現在8期目(決算3月末)
編集後記
「とにかく稼ぎたかった」という素直な言葉から始まった取材は、終わってみれば挑戦と誠実さの物語だった。厳しい表情の奥で、働く人の立場に立ち続ける温度の高さ。失敗を恐れるなと説くその姿は、物流という社会の基盤を支える現場に、確かな推進力を与えている。こちらまで前を向きたくなる、そんな「気」に満ちた経営者だった。
