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中小企業の「格差」を埋める伴走者――大企業のIT知見を、地域の隣へ

金融系のITエンジニアとして証券会社・銀行で長年キャリアを積んだ相澤隆志氏。子会社役員時代に目の当たりにした、大企業と中小企業の「デジタル格差」への問題意識から、合同会社ティープラスワンを立ち上げた。静岡県東部を拠点に、ITに不慣れな小さな会社へ寄り添う伴走型の支援とは。その原点と、これからの構想を聞いた。

目次

金融ITの最前線から、中小企業支援へ

相澤氏のキャリアは、新卒で入った証券会社から始まる。ITエンジニアとして採用され、金融系のシステムに長く携わってきた。

「証券会社の本部にあるリスク管理部門へ異動になり、そこではリスクの定量分析のような仕事も担当しました。ITの知識を駆使しながら分析を進めていく、そんな日々でしたね」

その後、事情があって銀行へ転職。ここでも金融系ITエンジニアとして経験を重ねた。定年退職を前にした最後の8年間は子会社へ出向し、役員として過ごすことになる。会社のDX支援から、経営、採用まで、一通りの業務を経験した時期だった。

この出向時代に、相澤氏は自らの進む道を決定づける光景と出会う。銀行の取引先である中小企業のデジタル化支援に関わるなかで、大企業とのあまりに大きな格差を痛感したのだ。

「格差を埋めたい」という起業の原点

「大企業ではさまざまなシステム化を経験してきましたが、中小企業さんの現場を見ると、そのギャップがあまりにも大きい。これはまずいんじゃないか、と」

その思いが、起業へと相澤氏を突き動かした。ITに遅れている中小企業の底上げを手伝いたい――3年前、ティープラスワンはそんな志のもとに生まれた。

支援の対象は、中小企業、そして時には個人事業主。本当に小さな会社に寄り添うことを軸に据えている。

「いろんなツールをとにかく導入したものの、事業主さんがついてこられていない、というケースも多いんです。そういったところを整理しながら、社長さんご自身にも使い方を教える。こう入れた方が使いやすいですよ、と一緒に考えていく支援をしています」

自身の経験だけでは、中小企業への支援をどう進めるべきか分からない部分もあった。そこで相澤氏はDX学校沼津校でノウハウを学び、自らの知識と掛け合わせて現場に臨んでいる。

大手が手を出さない領域で、住み分けと協業を

拠点は静岡県東部。沼津市や三島市とその周辺を中心に、時には浜松の顧客も支援する。この地域で相澤氏が向き合うのは、同業他社があまり手を出さない層だ。

「本当に小さい会社さんや、ITが進んでいない会社さんを主にお相手にしています。この属性は、同業でもあまり手を出していないところが多いんです」

複合機を入れている会社などは、大手メーカー系列の関係会社がツールを導入しているケースも多い。だが本質的なところまでは進んでいない――そんな現場が少なくないという。相澤氏は大手とは競合せず、同じ中小規模の同業とは住み分けや協業でうまく連携していく姿勢をとる。まだ手つかずの領域が広がる、いわばブルーオーシャンだ。

支援のかたちも、やりきって終わりではない。

「ある程度やって完了するケースもありますが、その後も伴走支援という形で、さらに改善していきましょうと続けているケースもあります。そうやって顧客価値を高めて、売上につなげていきたいですね」

「実績がない」という壁を越えて

代表就任後、相澤氏が最初にぶつかったのは信頼の壁だった。

会社員時代の経験を語っても、「その後の実績はないでしょう」と言われてしまう。起業直後の営業では、顧客に認めてもらうまでのハードルが非常に高かった。

「だんだんと実績を積み重ねていって、最近はそういうことを言われなくなりました。でも最初のスタート段階は、本当に苦労しましたね」

多くの起業家が通る道を、相澤氏もまた一歩ずつ乗り越えてきた。

営業の入り口は、地域に根ざした活動が支えている。商工会議所主催のセミナーを開き、開放誌にチラシを載せてもらう。そこで集まった相談を、専門家派遣を通じて課題解決へとつなげていく。また法人会にも所属しており、「ITの会社をやっている人」として知られていることから、困りごとの相談が舞い込むこともある。

変わらぬ思いと、これからの構想

創業時から、相澤氏の根っこにある思いは変わらない。大企業と中小企業の格差を、少しでも埋めたい――その一点だ。

「今はAI活用というところで、遅れている会社さんはまだまだ遅れています。そういったところに、AIの良さを知ってもらって、自分の業務に活かしてもらえるようご支援していきたい。そこは今も昔も変わらないところです」

今後は、事業の拡大も視野に入れる。教育や業務委託、良い人材との出会いがあれば採用も考えながら、組織を少しずつ大きくしていきたいという。

さらにもう一つ、温めている構想がある。M&Aだ。

「ITを使いこなせていないけれど、もしITを使えばもっと伸びるだろうな、という会社と出会えたら。そういった業種にも携わってみたいんです」

探すのはあくまで静岡近辺。自分の目の届く範囲にこだわるのには理由がある。

「遠くの会社を買収して、うまくいかなかった人たちが身近にいたので。やっぱり足を運んで、目に見えるところでやりたいんです」

近年増えているGoogleワークスペースの導入・活用支援なども強みに、相澤氏は地域の企業と手を取り合う道を描く。

「Googleワークスペースの導入支援をやったことがない同業の方や、いろんな会社さんと協業できると思います。地域の中小企業をもっと元気にしたい――そこに共感してくださる方がいれば、一緒にやっていきたいですね」

そしてこの記事を目にする求職者へも、相澤氏は同じ言葉を向ける。

「デジタルやITを通して地域を元気にしたい。そんな同じ思いを持ってくださる方がいたら、ぜひ一度ご連絡いただければと思います」

会社概要

  • 会社名:合同会社ティープラスワン
  • 代表者:代表 相澤 隆志
  • 事業内容:中小企業・個人事業主向けのIT/DX導入支援、活用支援、伴走支援
  • 創業:2023年
  • 主な活動エリア:静岡県東部(沼津市・三島市周辺ほか)
  • 従業員数:1名

編集後記

金融ITの最前線を歩んだ相澤氏が選んだのは、華やかな舞台ではなく、地域の小さな会社の隣に立つ道だった。大企業と中小企業の格差を自らの目で見たからこそ生まれた「埋めたい」という思いには、静かな熱がこもる。足の届く範囲にこだわり、伴走を貫く姿勢は、デジタル化の恩恵を地域の隅々へ届ける確かな一歩だと感じた。

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