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販促の最前線で鍛えた技術を、社会の基盤へ ― 利他を貫くメーカーの挑戦

売り場の棚先で商品を宣伝する小型デジタルサイネージ。その開発から製造、設置、保守までをワンストップで担うのが株式会社impact mirAIだ。代表取締役の川村雄二氏は、営業一筋のキャリアを経て同社に飛び込み、販促の現場で磨いた技術を社会インフラの領域へと広げてきた。「世のため人のため」を軸に事業を育ててきた経営者の哲学と、その視線の先にある構想を聞いた。

目次

山とアウトドアから、営業一筋のキャリアへ

東京生まれの川村氏。高校時代は登山部に所属し、大学でもスキーなど山系の活動に打ち込んだ。その延長線上で選んだ最初の職場が、アウトドアブランドの日本・韓国ライセンス販売を手掛けるゴールドウィンだった。

新卒で入社して以来15年間、川村氏が担い続けたのは営業一本。「ブランド力や会社の看板で戦うのではなく、ベンチャーで自分の力を試してみたかった」。そんな思いを抱いて37歳のとき、大企業を離れて現在の会社の前身となる企業へ移った。以来20年あまり、小型デジタルサイネージという領域を歩み続け、2017年に代表取締役へ就任している。

商品の目の前で伝える ― 小型サイネージという主戦場

impact mirAIの主力は、デジタルサイネージのデバイスとソフトの開発・製造だ。作るだけでなく、機器の保管・保守、配信プログラムの制作代行、什器の製作、そして全国への設置・サポートまでをグループのシナジーで一気通貫に提供する。

同社が徹底してこだわるのが「小型」であること。コンビニの天井付近で流れる宣伝は、肝心の商品棚から遠く「どこにあるのか分からない」。川村氏が掲げるのは、あくまで商品の目の前で伝えるというコンセプトだ。

象徴的な事例が、全国約16,000店舗に展開するファミリーマートのオンラインサイネージである。27インチのディスプレイと、それを囲う什器をオリジナルで製作。全国のスタッフが北海道から沖縄まで設置に回り、設置後もサポートデスクを構えて不具合に即応する。「24時間365日動き続けるコンビニで、しかも1万6千台。難易度は非常に高い」。既製品ではなくメーカーとしてカスタマイズできる強みが、こうした大規模案件を支えている。

事業のコアにあるのは販促、すなわちセールスプロモーションの領域だ。設置場所はドラッグストアやスーパー、ホームセンターの売り場。だが実際の商談相手は、そこに商品を並べる消費財メーカーである。「メーカーの営業が全国の売り場に付けて回ることはできない。だから我々が設置に行く」。ここにワンストップの分かりやすい価値がある。

販促で鍛えたQCDを、社会の基盤へ

販促の世界は、品質・コスト・納期のいずれにも極めて厳しい。四半世紀にわたってこの最前線で揉まれてきた川村氏は、そこで培ったノウハウを販促の外へと「染み出させる」戦略を進めてきた。

その広がりは多方面に及ぶ。回転寿司や焼肉店に並ぶ発注端末、人手不足を背景に普及するセルフレジの不正抑止カメラ。さらに近年は「インフラ」と呼ぶ社会基盤の領域へと踏み込む。電車の乗降口上部に設置されるディスプレイ、今年から納入が始まった名古屋市営地下鉄、そしてほぼ独占的に供給する観光バス向けのディスプレイ――。

背景には、国内の重工・重電系メーカーが小ロットの供給から手を引きつつある現実がある。「中国のベンダーには発注したくない。日本の会社で、実績も資金力も信用もあるところを、という需要の受け皿になっている」。人手不足やインフレという時代の追い風も、この戦略を後押ししている。

徹底的に寄り添う ― リピートが生む信頼

デバイスとソフトを扱う以上、不具合やバグとの戦いは避けられない。それでも川村氏が最も嬉しいと語るのは、圧倒的なリピート率だ。「他社は不具合があると引いてしまう。うちはむしろ徹底的に寄り添う。雨降って地固まる、で信頼が続いていく」。

その一例が、レジ前のディスプレイを手掛けるスターバックスだ。会計情報やおすすめのフレーバーを表示するあの画面は、6年前に同社へ切り替わった。「本来はPOSとディスプレイは同じメーカーが供給するもの。それでもディスプレイだけは、と選ばれ続けている」。理由として川村氏が挙げるのは、販促で鍛えたQCD、圧倒的なスピード、そして売った後の寄り添いだ。この三つこそ、同社の根幹をなす。

人間性を第一に ― 求める人材と組織づくり

経営で大切にしているのは理念経営だと川村氏は言う。一体感、スピード、変化対応。そしてその根底に置くのが「世のため人のため」という価値観だ。「言い換えれば利他。ギブ・アンド・ギブ・アンド・ギブで、テイクを一切求めない」。それでも徹底すれば、最終的にテイクは自然とついてくる――そう社員に気づいてほしいと語る。

求める人材像も、この哲学とまっすぐつながっている。能力・情熱・考え方の三要素のうち、最も重視するのは考え方であり人間性だ。「正しい考え方で情熱がある人。分かりやすく言えば、いいやつ。若いうちから利他ができる人は、たいてい苦労を重ねてきた人だ」。

組織づくりの課題として川村氏が挙げるのは、時代の転換への対応だ。30年以上続いたデフレからインフレへとパラダイムが変わり、人材の重要性はかつてなく高まっている。人の流動性が増すなかで、いい仲間がいて、成長を実感でき、それが正当な対価に変わる――そんな組織をどうつくるか。経営企画の責任者とともに、今の時代に合った育成のかたちを模索している。

日本企業として、世界へ

「インフレはまだ始まったばかり。これから何十年と続く入り口にいる」。川村氏が描く数年先の構想は、コアである販促を固めつつ、そこから社会課題の解決へと事業を広げていくことだ。人手不足やエネルギーの問題――電力供給のマネジメントにも同社は関わっている。

その先に見据えるのは、日本企業としての信頼という強みだ。安全保障の重要性が増すなか、海外から日本へ本社やR&Dを移す動きも出てきている。「安心・安全な受け皿としての日本には、ポテンシャルがある。ずっと国内でやってきた我々の価値が、いま改めて見直されている」。まずは国内、そして3〜5年後にはアジアを起点に海外へ。「日本を元気に、世界を元気に」という言葉に、その思いがにじむ。

読者へのメッセージを問うと、川村氏はこう結んだ。「仕事が一番、人を育てる。時には鬼になりながら、熱い思いで会社を一緒に経営していけたらいい」。

会社概要

  • 会社名:株式会社impact mirAI
  • 代表者:川村雄二
  • 事業内容:小型デジタルサイネージ(デバイス・ソフト)の開発・製造、機器の保管・保守、配信代行、什器製作、全国での設置・サポート
  • 主な提供領域:販促(ドラッグストア・スーパー・ホームセンター等の売り場)、発注端末、セルフレジ関連、鉄道・バス等のインフラ向けディスプレイ

編集後記

営業一筋のキャリアで培った「徹底的に寄り添う」姿勢を、そのまま経営の根幹に据える川村氏。販促の最前線で鍛えたQCDを社会の基盤へと広げていく戦略には、時代の変化を冷静に捉える視座と、日本のものづくりへの静かな誇りが同居していた。利他を貫くその姿勢が、リピートという確かな信頼となって事業を支えている。人を育て、日本を元気にする――その言葉に、経営者としての熱量を確かに感じた取材だった。

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