震災の停電から生まれた一つの問い──「非常時に電源を確保する術はないのか」。その答えを追い続けてきたのが、住宅用太陽光の販売施工を手がけるSUNSエナジー株式会社の代表・北川忠志氏だ。営業一筋で培った現場感覚を土台に、いまは太陽光を業界の外へと広げる挑戦に踏み出している。本記事では、創業の原点から、Panasonicからの「信頼力」、そして「義務化」に頼らない普及への哲学までを聞いた。
震災の停電が原点
北川氏が太陽光の世界に足を踏み入れたのは2011年。東日本大震災が起きた年だった。
「停電している地域が多数ある中で、非常用電源の確保がなかなかできない。何かできることはないか、というのがきっかけでした」
以来、営業として太陽光と向き合い続けた。7〜8年弱にわたって現場でお客様と対話を重ね、製品の価値を一軒一軒に届けてきた経験が、のちの起業の礎となる。
2020年4月、北川氏はSUNSエナジー株式会社を設立。住宅用の太陽光、蓄電池、オール電化、エクステリアなどの販売・施工を担う会社として、独立の道を歩み始めた。
数千社ある販売会社から選ばれたPanasonicからの「信頼力」
関東エリアには太陽光の販売会社が数千社あるといわれる。その中でSUNSエナジーが際立つのは、パナソニックの公式ホームページに掲載される企業のひとつだという点だ。
「掲載されているのは18社のみ。そこが他社との差別化になっています」
強みは販売力だけではない。太陽光は30年以上にわたって使い続ける製品だからこそ、設置後のアフターと保証が問われる。同社は太陽光そのものはもちろん、住宅にもしっかりと保険をかけたうえで、長期のアフターフォローに責任を持つ。
本社を構える千葉では、千葉県・千葉市の登録事業者としての信頼も、お客様が安心して同社を選ぶ理由になっている。今年度からは自社ブランドを活用した代理店展開もスタートさせた。
知名度ゼロからの船出
設立当初を振り返り、北川氏は率直に語る。
「設立したばかりで知名度もなければ、会社を紹介するホームページもない。そんな中で太陽光を提案していくのが、一番大変でした」
創業のタイミングは、折しも新型コロナの緊急事態宣言と重なった。個別訪問が世間的に難しくなった時期だ。それでも北川氏は動じなかった。
「出てくる人は出てきますし、話を聞いてくれる方は聞いてくれた。どういう状況であれ、必要としているお客様を探していくというところは変わりません」
大げさに構えるのではなく、目の前のお客様と向き合い続ける。その姿勢が、知名度のない船出を前へと進めた。
太陽光を「業界の外」へ
いま北川氏が見据えるのは、太陽光を太陽光業界の外へと広げることだ。東京都をはじめ各地で太陽光の義務化が進むなか、普及の担い手を販売店・施工店だけに限る必要はないと考える。
「太陽光をもっと普及させるには、様々な業種・職種が協力して件数を増やしていかなければいけない。知らないものは難しく感じてしまうので、そのハードルを下げたい」
そこで同社が担うのが、多業種へのコンサルティングだ。販売のノウハウや太陽光の基礎知識を提供し、異業種の企業が太陽光を扱えるように支援する。不動産仲介やリフォームなど、住宅と接点を持つ業種との相性は特に良い。
「いろんな業種・職種の方とアライアンスを組んで、シナジーを生んでいく。そこを強化していきたい」
営業人材の採用は業界共通の永続的な課題だと認めつつ、北川氏の視線は自社の拡大を超えて、業界全体の裾野を広げる方向へと向いている。
「義務」ではなく「納得」で
北川氏が経営で大切にするのは、地球温暖化への対応とサステナブルな取り組みを続けていくという理念だ。ただし、そのアプローチには一貫した信念がある。
「義務化だから設置する、ではなくて、お客様が本当にいいものだと思って設置できるように。分かりやすい説明やメリットをしっかり訴求していきたい」
強制ではなく納得。お客様が価値を理解して選べば、設置は必然的に増えていく──そう考える北川氏は、自社を「仲介的な役割」と位置づける。CO2削減や地球温暖化の抑止に、着実に努めていく構えだ。
販売店の枠を超えて
3〜5年の展望を尋ねると、北川氏は数字よりも活動の広がりに重きを置いた。
「持ち家の戸建てにサービスを提供している企業に、我々の商材を追加で扱ってもらえるように。一社でも多く、太陽光のことを知ってもらう活動を広げたい」
代理店として名乗りを上げる企業の多くは、もともと太陽光と無縁だった事業者だ。北川氏は、そうした企業が利益・売上を伸ばせるよう後押しする。自治体や国が用意する補助金・助成金も活用しながら、「我々だけでなく、各企業がプラスに動くようにお力添えしたい」と語る。
その先に見据えるのは、自社の姿そのものの変化だ。
「太陽光業界以外の企業が参入しやすい環境を作っていく。その上で、弊社が販売店ではなくB to B向けのコンサルの会社になるのかもしれない。目的のためなら、販売店・施工店である必要はないと考えています」
普及という目的のためなら、自らの業態すら柔軟に変えていく。北川氏の視線は、常に太陽光の未来そのものに注がれている。
会社概要
- 会社名:SUNSエナジー株式会社
- 代表者:北川忠志
- 事業内容:住宅用太陽光・蓄電池・オール電化・エクステリア等の販売・施工、および多業種向けの太陽光販売支援
- 創業:2020年4月
- 所在地:千葉県
- 従業員数:約50名

編集後記
震災の停電を原点に、北川氏が一貫して問い続けてきたのは「どうすれば太陽光が本当に社会へ根づくか」だった。義務化に頼らず、お客様の納得と異業種との協働で普及を図るその姿勢は、一企業の成長戦略を超えた社会的な意義を帯びている。販売店という枠にとらわれず、目的のために業態すら変えることを厭わない柔軟さに、この経営者の本気を見た。
