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出会った人を家族のように——沖縄から世界へ、美容で人生を豊かにする

沖縄でエステサロンを4店舗展開し、飲食事業やサロン向けのBtoB事業も手がける株式会社ASファクトリー。代表取締役社長の識名由美氏は、2008年に1号店を立ち上げてから18年、独立当初の苦境を越えて事業を育て上げてきた。「美容を通して人生に笑顔と感動を」を掲げ、お客様一人ひとりの人生に寄り添う識名氏の歩みと、沖縄から世界を見据えるビジョンを聞いた。

目次

結婚・出産を経て、美容の道へ

識名氏のキャリアは、まっすぐな一本道ではなかった。高校卒業後は美容師を志して専門学校へ進む予定だったが、結婚と出産が先になり、進路は一度大きく変わる。

転機となったのは、子どもを産んだ後に通ったエステの学校だった。1年ほど学んで就職し、そこから現場で経験を積み重ねていく。あるサロンでは立ち上げから深く関わり、実務の一部始終を身につけた。

「エステティックという美容には、ずっと強い興味がありました」と識名氏は振り返る。長く現場に立つうちに、勤め先の方針の枠に収まらない、自分自身が本当にお客様にして差し上げたい美容の形が、次第にはっきりと輪郭を持ちはじめていた。

「石の上にも三年」を地で行った独立

2008年7月、識名氏は自身のサロンをオープンする。しかし、いざ独立してみると現実は厳しかった。前職では売上にも大きく貢献し、多くの顧客がついていた。それでも、名の知られていない新しいサロンに、お客様はすぐには来てくれない。

「本当に3年ほど苦しみました」。生活もままならず、子どもたちを抱えながらの日々。苦しくなると思考も止まり、良い発想が浮かばなくなる。それでも識名氏は、経営者向けのセミナーに足を運び、本を読み、できることをすべてやり切った。「何のためにこのサロンを立ち上げたのか。もう一度原点に立ち返って、これでダメなら諦めるというくらいの覚悟で、休みもなく取り組みました」。

やがて紹介のお客様が少しずつ増えはじめ、流れが変わっていく。まさに「石の上にも三年」。その3年を越えたところから、スタッフを安定して雇用できる状態へと歩みを進めていった。

「あなたの海」をつくる空間、アクアリウムセラピー

ASファクトリーのサロンには、開業当初から各店舗に大型の水槽が設置されている。サロン名に込めた思いは、「YOU=あなた」「海=あなたの世界観をつくる空間」。

その背景には、識名氏の沖縄への思いがある。「地元の方でも、シュノーケリングやダイビングをしない人は多く、沖縄の海の中の素晴らしさを意外と知らないんです」。だからこそ、まず地元の人にこそ沖縄の海の魅力を感じてほしい——そんな願いから水槽を取り入れた。

さらにそこには、美容の効果を高める狙いも重なる。水槽を数分眺めることで深いリラックス状態が生まれ、自律神経が整うことでエステの相乗効果が引き出されるという。「ただ綺麗になるだけの追求ではなく、ここに来たら本当にリセットして帰れる。そんな空間をつくりたかった」。ストレス社会のなかで、結果を出すのは当たり前としたうえで、その先の心身の整えまでを見据えている。

主な客層は30代から60代。地元のヘビーユーザーが多く、家族ぐるみで通う人も少なくない。同業のエステティシャン自身が一人の顧客として訪れることも多いという。

育て、送り出す——「応援者」であるという覚悟

18年を振り返って、識名氏が最も苦しんだのは、育てたスタッフが独立していくことだった。ASファクトリーには独立願望を持つ人材が多く集まり、これまでに卒業して独立した人は十数名にのぼる。

店長やマネージャーまで育ったと思った矢先に独立していく。その繰り返しに、「何のためにサロンをやっているのか」と歯がゆさを感じた時期もあった。しかし識名氏は、自らも独立した身であることを思い返す。「夢を持って追いかけるのは、すごいこと。だから私は、応援者としての立場でいなければいけない」。

苦境を越えられた背景には、多くの人との縁があったと識名氏は語る。「決して自分一人の力ではありません。一生懸命やっていれば、人は手を貸してくださる。本当に人徳だと思っています」。その恩を次へ返す思いが、独立を目指す人を支えるBtoB事業へとつながっていった。

コロナ禍もまた、大きな試練だった。それでも乗り越えられたのは、新規客だけを追わず、地元客を8割とする顧客基盤を大切にしてきたからだ。休業を余儀なくされた期間はスタッフ教育を徹底し、外出しづらいお客様にはホームケア商品でフォロー。広告宣伝に頼らず、支持してくれる顧客との関係で事業を保った。「地元のお客様に支えられたことへの、感謝しかありません」。

大切にしているのは、お客様目線

識名氏がスタッフに繰り返し伝えているのは、「自分がお客様だったときの目線で接客をしなさい」という言葉だ。

サロンに長くいると、その空間が当たり前になっていく。しかしお客様は、高い対価を払って足を運んでくれている。「この金額でも安いと思える——そう感じてもらえる接客と技術を身につけなさい、と伝えています」。価値を決めるのはお客様であるという原点を、決して手放さない。

その根底にあるのは、「美容を通して人生に笑顔と感動を」というテーマだ。「エステは単に綺麗になるところではありません。私たちと関わったことで、その人の人生を変えていけるくらいの存在になりましょう」。このビジョンをスタッフ一人ひとりに落とし込むことを、識名氏は何より大切にしている。

沖縄から世界へ、そしてフランチャイズという次の形

今後、識名氏が描くのはフランチャイズ展開だ。独立を願うスタッフに直営店を譲り、経営の知識も伝えながら店舗を任せていく。「ただし、基盤がしっかりしていないと難しい。人を育て、経営のこともきちんと教えたうえで任せていきたい」。見本を示す場として、直営店を残すことも視野に入れる。

同時に、これまでのキャリアを生かしたBtoB事業——サロンへのフォローやコンサルティング、スクール事業にも力を注ぐ。「皆さんの夢を叶えてあげられる存在になりたい」。

視線は世界にも向いている。海外で日本のエステティシャンを代表して審査員を務めるなかで、識名氏は日本のおもてなしの素晴らしさを実感してきた。「沖縄から世界へ。美容を通して、一人でも多くの人の人生を豊かにしたい」。沖縄の人ならではの温かさ、出会った人をみな家族のように迎える心の豊かさを、全国へ、そして世界へ届けていく。

編集後記

苦境を「人徳」と「縁」で越えてきた、と語る識名氏の言葉には、自らが独立で味わった痛みを知るからこその温度があった。育てた人材を送り出す寂しさを「応援者でいなければ」と引き受け、ライバルを同士へと変える組織づくりに奔走してきた姿は、美容という枠を越えて、人が人を支える営みそのものを体現している。沖縄の海のように、訪れる人を静かに包み込む——そんなサロンの原点を、確かに感じる取材だった。

会社概要

  • 会社名:株式会社ASファクトリー
  • 代表者:識名 由美
  • 事業内容:エステサロンの運営(4店舗)、飲食店の運営、サロン向けBtoB事業(商品卸し・技術指導・セミナー・スクール・コンサルティング)
  • 創業:2008年7月
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