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「いい旅だった」と思える人生へ——検見崎兼治が訪問看護に込める哲学

訪問看護ステーション「ニコニコ」と有料老人ホーム「ニコニコ」を運営する株式会社イーグル。代表の検見崎兼治氏は、自ら現場を立ち上げたプレイヤーから経営者へと立場を移すなかで、「経営者としてやるべきこと」を手探りで見つけてきた。掲げる理念は「いい旅だったと思えるすべての人生」。人生を一つの旅と捉え、関わる人すべてが最後に「いい旅だった」と思える——その想いを、フィロソフィーとして会社に根づかせようとしている。学び直しと情報発信を通じて視界を広げ続ける経営者の、これまでとこれからを聞いた。

目次

プレイヤーから経営者へ——「やるべきこと」を探した日々

「代表になって、何をしていいか分からなかった。それが一番苦労したところです」。検見崎氏はそう振り返る。もともとは自ら事業を立ち上げたプレイヤーで、営業から実務、請求まですべてを一人でこなしてきた。訪問看護の部署を管理者に任せ、自身は現場の訪問にも出なくなると、今度は経営者として何をすべきかが見えなくなった。

「自分の生産性を上げているという実感が持てない。やるべきことが何なのか、はっきり見つけられなかった時期が本当にしんどかった」。立ち上げこそ自分で行ったものの、経理は父親が見てくれていた部分もあり、長く「部署の売上を担う管理者」という立場で走ってきた。税金や社会保険の仕組みといった、それまで意識してこなかった領域を、一つずつ学び直すところから経営者としての歩みが始まった。

学び直しと発信が開いた、新しい景色

転機になったのは、外に出て学ぶことだった。ある税理士のセミナーに一年間通い、今も継続して足を運んでいる。「経営者としていろんな刺激をもらいますし、やることもいろいろ出てきました」。その延長線上で、今年は書籍の出版も決まった。

苦手意識のあった情報発信にも踏み出した。「インスタグラムは大嫌いだったんです」と笑うが、会社として、そして自分自身としても始めてみると、「思ったほど嫌いじゃなかった。反応してもらえると、やっぱり嬉しい」。かつては自分の行動を公開することに強い抵抗があったというが、いまは発信そのものを前向きに楽しんでいる。経営者の会で「見てるよ」と声をかけられることもあり、発信は人とのつながりを保つ縁にもなっている。

「いい旅だったと思える人生を」——ニコニコフィロソフィー

検見崎氏が最も大切にしているのが、「いい旅だったと思えるすべての人生」という理念だ。「人生そのものを旅と捉えています。海外旅行から近場の温泉まで、旅にはいろいろある。同じように人生にもいろいろあるけれど、結局は本人が『いい旅だったな』と思えるかどうか」。

その背景には、看護・介護の現場で数多くの最期に立ち会ってきた経験がある。「悔いはない、と家族に見守られながら旅立てる。そういう最期を『いい』と思える人でありたい。うちのスタッフも、会社が関わった人も、みんなが最後に『いい旅だった』と思えるように」。

理念を支えるのが、物事の捉え方への視点だ。「事実は事実としてありますが、それを解釈するのは自分たち。雨が降っている事実は変えられないけれど、それを嫌だと思うか、ゆっくりしようと思うかは自分次第です」。ただし、単なる楽観主義とは一線を引く。「何でもポジティブに、ではなく、物事の中に意味を見つけましょう、ということ」。相手の立場を考え、物の見方を磨く——その姿勢を言語化したのが「ニコニコフィロソフィー」である。

幹部とともに育てる企業文化

フィロソフィーは、まず幹部から浸透させている。検見崎氏を含めた5名の幹部が、日々その考え方を鍛え合う。ユニークなのが、その一項目にある「褒める」習慣だ。「毎日、順番に一人ずつ褒めるんです。今日は代表を褒める、明日は部長を褒める、と。一周したらまた次の項目へ。褒めるところを探さないといけないから、みんな必死ですよ」と笑う。

会社としては、訪問看護ステーションと有料老人ホームを軸に、グループとして福祉用具やケアプランの機能も持つ。パートを含めた従業員は数十名規模。「いまは私が幹部に浸透させている段階。ここからさらに、幹部がパートのメンバーにまで広げていく。そこを目指しています」。理念を一部の言葉で終わらせず、組織の隅々まで根づかせることに、検見崎氏は腰を据えて取り組んでいる。

これからの展望——「いい循環」を生み出す

今後については、有料老人ホームの運営をどう広げていくかを見据えつつ、検見崎氏自身の新しい挑戦にも意欲を見せる。「書籍を出したり、コーチングのような分野にも挑戦していきたい。自分の認知を高めて、なんとか会社に還元できないかと考えています」。

その背景には、介護・医療領域ならではの構造的な難しさがある。「診療報酬は、経験一年目のスタッフでもベテランでも同じ。単価を自分で決められないので、経年で給与や生産性を上げていくのが簡単ではないんです」。だからこそ、自身が会社から報酬を取りすぎず、外の活動で会社を後押しすることで、「従業員にもっと給料を出せるようにしたい。そういういい循環を、どうにかして生み出していきたい」と語る。

長期の目標として、幹部それぞれの処遇を引き上げることを一つの目安に据える。「数字で公言はしていませんが、幹部が納得できる収入に届くこと。そして、うちの考え方に共感してくれる人が自然と集まる会社になること」。フィロソフィーに根ざした発信を続け、その認知が広がっていくことを、検見崎氏は静かに願っている。

どんな人と働き、社長たちに何を届けたいか

求める人物像を尋ねると、答えは明快だった。「フィロソフィーに共感してくれる人。そして、価値観すらも変化させていける人ですね」。たとえば「性格だから」と変化を拒む人ではなく、「悪い習慣だ」と捉え直して変えていける人——「成長したいと思える人と働きたい」。

情報発信の成果も出始めている。「インスタを始めて七ヶ月。今日、初めてホームページに応募の問い合わせが来たんです」。看護師三年目で訪問看護に関心を持つ人からの一通。地道な発信が、確かな一歩につながり始めている。

同じ経営者である読者へは、こんなメッセージを寄せる。「介護のことで——ケアプランから福祉用具、訪問看護まで——分からないことがある社長さん。あるいは、二代目で何をしていいか分からない社長さん。相談してもらえれば、いくらでもお話しします」。かつて自分が立ち止まった場所で、誰かが同じように迷わずに済むように。検見崎氏の視線は、いつも人の「歩き方」に向けられている。

会社概要

  • 会社名:株式会社イーグル
  • 代表者:検見崎 兼治
  • 事業内容:訪問看護ステーション「ニコニコ」の運営、有料老人ホーム「ニコニコ」の運営(グループとして福祉用具貸与・ケアプランセンターの機能を含む)
株式会社イーグル/訪問看護ステーションニコニコ・有料老人ホームニコニコ 代表 検見崎 兼治

編集後記

「経営者として何をすべきか分からなかった」と率直に語る姿が、かえって強く印象に残った。プレイヤーとして走り抜けた人が、立場の変化に戸惑い、学び直し、発信という苦手にまで踏み込んでいく。その一つひとつが、「いい旅だったと思える人生を」という理念と地続きだと感じる。事実は変えられなくても、捉え方は変えられる——数多くの最期に立ち会ってきた人の言葉だからこそ、その重みは静かに深い。介護の現場から、人生の締めくくり方そのものに向き合う経営がここにある。

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