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「田舎の子でも、こんなすごい子たちがいる」——地域と歩むダンススタジオの流儀

長野県・飯田を拠点に、保育園児から社会人までが通うダンススタジオ「STEEZ Music Studio」。代表の久保田愛さんは、赤字だったスタジオを事業ごと引き継ぎ、一人ひとりへの丁寧なフォローで黒字へと立て直してきた。地域のイベントに欠かせない存在となった今も、その視線は「田舎の子どもたちをメジャーシーンへ」という夢に向かう。お金では測れない価値を大切にする、その経営哲学を聞いた。

目次

20年、ダンスとともに

久保田さんのキャリアは、ダンスとともに歩んできた20年に集約される。ダンスインストラクターとして長く現場に立ち、音楽健康指導士、レクリエーション専門員としての活動も続けてきた。

「ダンスのインストラクターを20年。経営者になってからは7年です」

指導者として積み重ねた経験が、やがて一つのスタジオを背負う覚悟へとつながっていく。

赤字スタジオを引き継いで

STEEZ Music Studioは、前のオーナーから事業ごと買い取る形で久保田さんの手に渡った。当時は赤字。場所だけでなく事業のすべてを引き受けての再出発だった。

「とにかく赤字だったので、売上がほぼほぼなくて。私の給料が3年ほど出ていませんでした」

苦しい時期を支えたのは、派手な施策ではなく地道な積み重ねだった。生徒一人ひとりへのフォローアップを徹底し、体験に来てくれた人を絶対に取りこぼさない。その一方で、スタジオの価値観に合わない生徒には、あえて距離を置いてもらう選択もした。

「お金ではない価値」を分かち合える人と

久保田さんがスタジオづくりで大切にしているのは、単なる技術指導ではなく、通う人との価値観の一致だ。

「田舎のスタジオなので、人情というものがまだ残っているんです。お金ではない価値をちゃんと分かってくださる方が合うスタジオで。『お金を払っているからいいじゃん』という自分本位な方は、向いていないんです」

その姿勢が信頼を生み、生徒との長い関係を育んできた。現在の会員は約160人、業務委託先を含めれば200人ほど。そのうち半数以上が10年以上通い続けているという。月謝制で運営し、料金は通う回数に応じて変わる仕組みだ。運営は久保田さんと業務委託のメンバー7名が担っている。

地域密着ナンバーワン、その先のメジャーシーンへ

「地域密着型スタジオ」を掲げるSTEEZ Music Studioは、地元・飯田でのイベント出演率が随一だ。「地域のイベントといえばスティーズだよね」——そう言われる存在であり続けたいと久保田さんは語る。

同時に、その先にある夢も明確だ。

「田舎のスタジオですけど、子どもたちのレベルはすごく高いんです。メジャーシーンに出ていける子って、コンテストで勝った子や有名スタジオの子が主だと思うんですけど、『田舎の子でもこんなすごい子たちがいるんだぞ』という意味を込めて、メジャーシーンに出ていきたい」

子どもたち、そしてスタジオ全体がインフルエンサーとして発信していくこと。メディアからの出演依頼が増えていくこと。今年度からはコンサルティングを導入し、Instagramを軸にした発信や企業とのマッチングにも取り組み始め、少しずつ反響が生まれている。

広げるより、手放していく

事業を拡大し、法人化して規模を追う——そうした道を、久保田さんはあえて選ばない。

「このままいくと合同会社や株式会社にしなければいけない金額に当たってくるんですけど、そもそもそこまで私は望んでいなくて。もうちょっと私の方から手放していけるものが増えるといいなと思っています」

売上の一部を業務委託のメンバーに委ねていく。規模の拡大ではなく、自分が抱え込むものを減らしながら、周囲に役割を分けていく。自身の経営者としての成長を課題に挙げつつ、久保田さんは等身大のスタジオ経営を見据えている。

会社概要

  • 会社名:STEEZ Music Studio
  • 代表者:久保田愛
  • 事業内容:ダンススタジオの運営(地域密着型/保育園児〜社会人向けダンス指導)
  • 創業:2019年(前オーナーより事業を譲受)

編集後記

赤字のスタジオを引き受け、給料の出ない3年を越えて黒字へ導いた久保田さん。その原動力は成長欲でも規模拡大でもなく、「お金では測れない価値」を共有できる人と歩みたいという素朴な願いだった。田舎の子どもたちの可能性を信じ、メジャーシーンを見据えながらも、自分の手からものを手放していくという静かな決意。拡大一辺倒ではない経営の形が、地域に根を張るスタジオの強さそのものに見えた。

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