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こっそり稼ぐ、それでいい——相場3分の1の価格で個人事業主の財務を支える池田純の流儀

兵庫県出身の池田純氏は、トヨタグループでの調達業務、プルデンシャル生命での保険営業、服のECショップ運営、セコム向け人材紹介、節税コンサルティングと幾度も事業を転換しながら、現在は株式会社エクセターで個人事業主向けの記帳代行・確定申告サービスを年間49,800円から提供する。今年の確定申告実績は2,000件、継続率99%。派手さより実利、目立つよりこっそり積み上げる——その一貫した経営哲学が、静かで強い事業基盤を生んでいる。


目次

トヨタ、保険、服屋、ドライバー紹介——転換を繰り返してたどり着いた場所

池田純氏のキャリアは、一本道からは程遠い。兵庫県出身の池田氏は大学卒業後、愛知県のトヨタグループ部品メーカーの調達部に就職した。しかし数年で退職し、プルデンシャル生命保険に移る。「24歳から28歳まで、3年ちょっと保険の営業をしていました」。

完全歩合制の世界で稼ぎ方を学ぶうち、「どうせ歩合で生きていくなら社長になってしまっていいんじゃないか」という考えが芽生えた。保険という商材にこだわる理由もない。「好きなことで生きていきたい」と個人事業主として服のECショップとの仕事を始めたが、コロナ禍で中国からの輸入が困難になり撤退を余儀なくされた。

「何か違うことをしないとあかんな、2B(法人向け)の方がいいかな」という判断から人材紹介業へ転換。現金輸送ドライバーをセコムへ紹介し続けるうちに専属に近い形が固まり、「もはやセコム専属人材紹介みたいな感じでやっています」と池田氏は言う。


相場の3分の1——「印鑑を押すだけでいくら」をぶっ壊す

現在の主力事業は個人事業主向けの記帳代行・確定申告サービスだ。年間49,800円という価格は業界相場の3分の1程度。その背景には技術的な合理性と、業界への率直な問題意識がある。

「AIとスキャニングのシステム開発で記帳代行の人件費を削減できています」と池田氏は説明する。そして、「印鑑を押すだけでいくらとか、そういうのをぶっ壊したいという気持ちもある。安い値段でパイを多くとっていこうというところです」と語る。

主要顧客は飲食店、美容師、一人親方の個人事業主で、集客の9割はSNS(スレッズ)経由だ。問い合わせからDMでヒアリングし、提携税理士へつなぐ流れが確立されている。今年は2,000人分の確定申告を担当し、継続率は99%。「嘘なく記帳代行も全てやれるということで喜んでいただけている」と池田氏は言う。

年商1億円規模の個人事業主でも年24万円程度で対応できるため、「うちのせいで法人化をやめる人も出ている」というエピソードも語られた。通常、法人化後の顧問料は年100万円規模になることもあり、「それなら法人化しなくていいのでは」と判断する顧客が一定数いるという。


「100が急に0になる」——波乱続きの経営で学んだこと

事業の道は平坦ではなかった。人材紹介時代は「今月売れたけど来月どうしよう」という不安定な売上変動に悩まされた。並行して手がけた個人事業主向けの節税サービスは3年間継続したが、2026年3月、国から突然その手法を規制する通達が届いた。「徐々に低迷するのではなく、100がいきなり0にされた」。

「起業してからずっと、売上が予測できないのが一番の苦労だったと思います」と池田氏は振り返る。だからこそ今のストック型モデルに価値を感じている。「積み上げ型になってきているので」という言葉に、安定を手にした実感がにじむ。

「どちらかというと、嫌なことから逃げるためにいろいろ転換してきたのかもしれない」と自己分析も率直だ。美化せず、自分の行動の動機を冷静に見る目が、判断の速さにつながっているようだった。


大きくしない、目立たない——「ぼちぼちでんな」の経営哲学

現在の体制は従業員1名(人材紹介部門担当)、その他は業務委託中心だ。「昔は大きくしたいと思ったが、システマチックに稼ぐのが好きだったと気づいた」と池田氏は言う。ミッション・バリューも「あまりない」と自ら認める。

「業務委託で自分についてくる人だけでいい」というのが基本的なスタンスだが、「自分の分身のような営業力のある人がもう一人欲しい」という気持ちもある。求める人物像を聞くと、「素直で、自分がいないときでもちゃんとやってくれる人。お客様への貢献がそのまま自分の豊かさにつながるというマインドがぶれない人がいい」と語った。「たくさん稼いだからどうやという、横柄になるような人は嫌です」とも。

地域や業界での立ち位置についても正直だ。「目立ちたくない。こっそり実は稼いでいますくらいで生きていけたらいい」「いらない交流会にも呼ばれず、隠居しているくらいでいい」。「ぼちぼちでんな」という関西弁が、自然に口をついて出た。


5年後は「融資を引いて、ドーンとやりたい」

2026年7月からは法人向けに帳簿サポートのシステムを立ち上げ、新たな顧客層への展開を始める予定だ。

より長いスパンでは、「5年後には融資を引いて、今まできなかった大きいのをドーンとやりたい」という構想を持つ。何の事業をするかは「まだ決まっていない」と言いながらも、積み上げてきたキャッシュフローと実績を武器に、いつか大きな勝負に出る日を静かに描いている。

趣味のキャンプを楽しみながら、スローライフと事業の充実を両立させる。それが今の池田純氏の描く理想だ。


会社概要

  • 会社名: 株式会社エクセター
  • 代表者: 池田純
  • 事業内容: 個人事業主向け記帳代行・確定申告サービス、財務コンサルティング、人材紹介(セコム向け現金輸送ドライバー)、法人向け経理サポート(2026年7月開始予定)
  • 確定申告実績: 年間2,000件(2026年)
  • 継続率: 99%

編集後記

「ぼちぼちでんな」という言葉が取材を通じてずっと頭に残った。派手なビジョンや大層なミッションを掲げるわけではなく、ただ顧客の財務を誠実に安価に支え、静かに積み上げていく。その地に足のついたスタイルが、継続率99%という数字の裏にある信頼の正体なのだと思う。目立たない経営者が、業界の慣習を一番静かに、一番確実に変えているのかもしれない。

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