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勝てる場所で戦う——関わる人すべてに「メリットのある着地」を

北海道に生まれ、鹿児島の大学へ。卒業後は東京の不動産会社で営業職に就き、その後、人事労務の道へと進んだ近川大和氏。社会保険労務士事務所アサガオの代表社員として独立し、今年で3年目を迎える。「若くて、喋れる。勝てる業界に行けば勝てる」——そう見定めて飛び込んだ社労士業界で、紹介を軸に着実に顧客を広げてきた。本記事では、あえて希少性の高い場所を選んだ経営判断と、関わる人すべての利益から逆算する仕事観を伺った。

目次

端から端へ、そして人事労務の世界へ

北海道出身の近川氏が進学先に選んだのは鹿児島の大学だった。「端から端まで行ったので、次は真ん中かな」と、卒業後は東京の不動産会社に営業職として新卒入社する。

転機は入社2年目の途中。営業から人事部へ異動し、労務担当として配属された。まったくの畑違いだったが、近川氏の性格が方向を決める。「何かやるなら一番になりたい。人事労務の一番上の、一番難しい資格が社労士だった」。在籍中に社労士試験に合格し、その後、社労士事務所へと移った。

事務所を選んだ理由は、実務を学ぶためだけではなかった。「社労士業界がどうやって新規の顧客を獲得しているのかを見たかった」。30人強を抱える比較的大きな事務所で近川氏が目にしたのは、顧客獲得のおよそ9割が紹介によるものだという現実だった。この学びが、後の独立戦略の核になる。

「勝てる業界」という戦略

独立の背景には、業界そのものへの冷静な分析がある。人口減少と少子高齢化が進むなか、社労士業界もまた高齢化が著しい。「20代で社労士を持っている人も、独立する人も、3年目になりますがまだ一人も見たことがない」と近川氏は語る。

もともと営業職として鍛えられた近川氏にとって、若く、話せることは明確な武器だった。「勝てる業界に行けば勝てるんじゃないか、というのが率直な答えです」。希少性の高い場所を選ぶ——それが独立の出発点だった。

紹介で回る、独立の設計図

新規顧客の入り口は、ほぼ紹介である。ドアノック営業という選択肢もあるなか、近川氏が最初に動いたのは、税理士や他の社労士といった士業への営業だった。「独立したので仲良くしましょう、と同業の先生方にアプローチをかけた」。それがはまり、今では同業の社労士からの紹介が多くを占める。

ここでも業界の高齢化が追い風になる。ベテランの社労士は人脈が厚い一方、人手不足や年齢を理由に「新しい仕事を受けたくても受けられない」ケースが少なくない。「だったら回します、という流れになる」。引き継ぎのような形で仕事が巡ってくる構造を、近川氏は戦略として組み立てた。

責任を引き受けるということ

「幸い、大きな苦労はなくトントン拍子で来られた」と振り返る近川氏だが、経営者になって初めて直面したものがある。責任の所在だ。

「サラリーマンの頃は、自分に責任が降りかからないよう立ち回ってきた」と率直に語る。しかし代表となればそうはいかない。従業員がミスをすれば、最終的にその後始末をするのは自分である。「『すみません』と頭を下げに行く。それが今まで経験してこなかったことなので、大変でした」。責任を引き受ける立場への切り替えこそ、独立後の一番の学びだった。

ゴールから逆算し、みんなが得をする着地へ

経営で大切にしているのは、関わる人すべてにメリットのある着地を選ぶことだ。「自分も、一緒に手を取っている人も、顧問先の企業も、良いメリットのある着地になれば、アプローチの方法はどうでもいい」。

判断に迷ったときは、ゴールから逆算して考える。「ゴール設定をぶらさないこと、そこから逆算すること。経営も日々の業務も、全部それです」。

組織づくりでは、フルリモートという環境ならではの学びもある。「言いづらいことも、言わないでいると良くない結果を見たことがある。言わなければいけないことは言う」。そして、いったん任せたなら信じて任せきる。「自分でやった方が早いと思ってしまうタイプ。でもそれだと一人で捌ける量に限界がある。振ったなら最後まで信じて振り切ることが大事だと、最近ようやく思えるようになりました」。

作る側に回る——士業とテクノロジーの交差点

近川氏が代表を務めるアサガオは本人を含めて4人。加えて別の株式会社にも関わり、そこでは開発を進めている。狙いは、社労士業務の作業をテクノロジーで置き換えることだ。「作業はいずれAIに取られるのが目に見えている。だったら使う側ではなく、作る側にならないと勝ち目がない」。自社内で使えるものをまず形にし、ゆくゆくは商品化して販売していく構想を描く。

一緒に働きたい人物像は明快だ。「自分で考えられる人。そして人当たりのいい人」。知識は教えれば身につくが、人柄を後から他人が変えるのは難しい——だからこそ人柄を重視する。「知識がなくてもいい。人柄がいい人と働きたい」。

会社概要

  • 会社名:社会保険労務士事務所アサガオ
  • 代表者:代表社員 近川 大和
  • 事業内容:給与計算、社会保険・労働保険の手続き、労務相談を中心に、人事評価制度の設計やコンサルティング領域へも展開

編集後記

業界の高齢化という逆風を、あえて「勝てる場所」と読み替えて飛び込んだ判断力に、営業出身者らしい嗅覚を感じた。責任を引き受ける難しさを率直に語りながらも、関わる人すべての利益から逆算するという軸は一貫している。作業を担うのではなく作る側に回るという発想も含め、士業の次の世代を体現する経営者だと感じた取材だった。

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