株式会社DOU・土屋真人氏は、運動指導者や施術者に向けたスクール・講習会を主宰する。掲げるのは、氏が30年以上の研究と実践から作り上げた独自ノウハウ「動きケア」。運動を「動き」として掘り下げ、痛みや不調の改善につなげるその視点は、一般的な運動指導とは一線を画す。一人で歩んできた経営者が語る、メソッド開発の背景と、これからの構想を聞いた。
現場から生まれた「動きケア」というアプローチ
株式会社DOUが手がけるのは、運動の指導者や施術者に向けたスクール・講習会の開講と運営だ。その中核にあるのが、独自ノウハウ「動きケア」である。
「通常、運動というと体を鍛えるものと捉えられがちですが、それを『動き』として掘り下げると、動きを改善することで痛みや不調を和らげられる。筋トレをしなくても楽々動けるようになる、そういう側面があるんです」と土屋氏は語る。一般にはあまり知られていない、この動きの捉え方と調整の仕方こそがオリジナリティだと氏は言う。
「動きケア」は一朝一夕にできたものではない。安全で効果の上がる施術・整体・運動指導をテーマに、30年以上をかけて研究し、実践し、検証を重ねて作り上げてきたメソッドだ。
「解剖学を、現場で使える知識に」——一冊の本が生まれた理由
土屋氏には著書もある。トレーナー養成に携わった経験が、その執筆の原点になった。
大学でトレーナーを目指す学生たちに教えるなかで、氏はあることに気づく。人の体を扱う以上、体の作りや仕組みを学ぶ解剖学は必須科目だ。ところが多くの学生は、それを「難しい漢字を覚える勉強」だと捉え、途中で嫌になってしまう。
「運動も施術や整体と同じで、人の体を良くも悪くもできる。ある意味で医療の一種という側面もあります。だからこそ、解剖学の知識をこう捉えれば現場で即使える、痛みの改善につながる、という形で伝えたかったんです」。現場で試行錯誤しながら磨いた「学び方」を一冊にまとめたのが、その著書だった。
反響は学生にとどまらなかった。国家資格を持たない施術者や指導者の世界では、体の仕組みを体系的に学ぶ機会が少ない。「もう一度、現場で使える形で解剖を学び直したい」という声に応え、シリーズは幅広く受け入れられていった。
一人で歩むということ、自分と向き合うということ
会社とはいえ、実態は一人で切り盛りする経営だ。土屋氏は、その難しさを率直に語る。
「計画を立ててこう進めた、という感じではないんです。その時々で目先のことに対応しながら、気がついたらここまで来た、という実感ですね」。一人でやっていて一番大変なのは、考え方や思い込みが固まり、臨機応変に対応できなくなること。成果が上がらなければ、その責任はすべて自分にのしかかる。
「何が大変だったというより、常に自分との戦いなのかもしれません。自分を肯定できればいいけれど、否定するモードに入ると、より苦しさを感じる」。非常勤のスタッフや商工会議所の経営相談、時にはAIも活用して意見を集める。それでも「最終的に決めるのは自分」だと氏は言い切る。
その判断の拠り所となっているのが「三方よし」だ。「自分にとってもプラス、お客さんにとってもプラス、そして世の中全体にとってもプラスになるか。それが一つの判断基準になっているかもしれません」。
「本物のつながり」で受け継いでいく
今後の課題として土屋氏が挙げるのは、ビジネス面の強化と、メソッドの承継だ。
「体のことや運動指導のノウハウはプロだと思っていますが、ビジネスに関しては本当に素人。そこはこれから勉強を重ねていきたい」。すでに氏に代わって講習会やスクールを担う人材は育っているが、「動きケア」を自らのビジネスの中心に据える人はまだ多くない。
氏が思い描くのは、フランチャイズのような「縛り」ではない広げ方だ。「あくまでご本人の意向を優先して、その方のプラスになるなら役立ってください、という形で展開したい。ビジネス的には甘いと言われるかもしれませんが、本物のつながりで広げていきたいんです」。人を育て、伝えていくことの難しさと向き合いながら、どう受け継いでいくか。それが今後のテーマだと語る。
AIを活用し、次の形を築く3〜5年
中期的な展望として、土屋氏はまず情報発信の刷新を挙げる。
数ヶ月前から始めたSNSでの発信により、ホームページのアクセス数は順調に伸びてきた。その次の一手として、近くホームページのリニューアルを予定している。さらに並行して進めるのがAIの活用だ。
「AIを活用して、より多くの方に知っていただきたい。この1年以内に、今までにない新しい形を構築できればと考えています」。そこで手応えを見ながら、確立した仕組みを別のサービスの発信にも応用していきたい——氏はその展開を、自身でも楽しみにしている様子だった。
会社概要
- 会社名:株式会社DOU
- 代表者:土屋 真人
- 事業内容:運動指導者・施術者向けのスクール、講習会の開講・運営(独自メソッド「動きケア」)
編集後記
30年以上をかけて一つのメソッドを磨き上げ、なお「ビジネスは素人」と謙虚に学び続ける姿勢が印象的だった。一人で歩む道は、成果も苦しさもすべて自分に返ってくる。それでも「三方よし」を軸に、本物のつながりで技術を受け継ごうとする土屋氏の言葉には、静かな芯の強さがあった。動きを通じて人の体を変えるその仕事は、これからより多くの指導者へと広がっていくだろう。
